【番外編】第2話 ジェットコースター
ジェットコースター。それは、とどのつまり絶叫マシーンのことである。どんな遊園地に行ったとしても必ず存在し、絶叫系がダメな人間にとっては恐ろしきものでしかない。かくゆう、俺もジェットコースターは苦手よりだ。苦手だからといって乗れないわけではない。乗れるけどジェットコースターにはできるだけ乗りたくねぇな、みたいなポジションである。でもまぁ、この話は、流れから分かる通り流されるがままに俺がジェットコースターに乗る話だ。
◇
「切井くん、ジェットコースター、乗ろうよ!」
珍しく日下部が積極的で俺は少し引いていた。長野に運良く遊園地があり、そこに遊びに来ていた俺たちだが、日下部はなにやら企んでいる様子だった。それは、なにかと俺に突っかかってきて今のように乗り物に強制的に乗せようとしてくることに繋がっている。
日下部が一体、何を企んでいるのか俺はさきほどから気になってしょうがない。俺の弱点でも探りたいのだろうか。探ったところでなにかあるかと言われてもなにもないんだがな。
「り、りずはは遠慮しとこっかな?」
「え?どうして?」
日下部はりずはの言ったことに対して疑問に思ったようだ。遠慮する理由など一つしかないと言うのに。
りずはは、ジェットコースターが苦手だ。ジェットコースターは、年齢制限や身長での制限があり、りずははそれに達するやすぐにジェットコースターに乗った。そして、ジェットコースターの恐ろしさを知った。これは、人が乗る乗り物ではない、と。
それから遊園地に来たとしてもジェットコースターには絶対に乗らず、我が家でもジェットコースターに乗らない、話題にすら出さないという暗黙のルールができた。しかし、日下部はそんなことを知らない。だから、ジェットコースターというワードを軽はずみに口にしてしまった。親父と母さんは日下部のジェットコースターのワードに対して体を震わせていた。親父と母さんもジェットコースターが苦手なのだ。つまり、我が家においてジェットコースターが得意なやつはいないのだ。
そんなことを日下部に俺は簡潔に話した。知っておかなければ取り返しのつかないことが起こりうるからだ。
「そっか············。りずはちゃん、ごめんね?ジェットコースター苦手なの知らなくて······」
「別に大丈夫だよ。気にしないで」
日下部とりずははそう言いあった。
「でも、切井くんは苦手じゃないんだよね?」
「は?」
突然、日下部は俺にそう言ってきた。
「だから、切井くんはジェットコースター乗れるんだよね?」
「乗れるは乗れるが、得意じゃないんだよ。出来る限りは乗りたくない」
「乗れるならいいじゃん!行ってきなよ、お兄ちゃん!」
りずはが急に手のひらを返し、俺の背中を押してきた。ええっ、ちょ!
俺はなすすべなくジェットコースターに乗る羽目になってしまった。
おいおい、どうなってんだよ。
◇ りずは視点
日下部さんがお兄ちゃんをジェットコースターに誘おうとしているのを見て私は瞬時にお兄ちゃんの背中を押した。
「乗れるならいいじゃん!行ってきなよ、お兄ちゃん!」
そう言って。
日下部さんは昨日のお兄ちゃんの告白?を受けてやり返しをしようとしているのだと私は気づいたから。
『く、日下部』
『えっ!ほんとにどうしたの?』
『いやなんでもねぇ。ただ呼んでみただけだ』
呼んでみただけってどこの漫画の主人公だよって話。最近読んでる漫画では鈍感主人公が多すぎる。漫画として読む分にはいいけど現実として目にするのは鬱陶しさを感じる。お兄ちゃんは鈍感主人公の中の最高峰“鈍感クソヤロー”だからもうどうしようもない。
だから、日下部さんのことにも気づかないし、自分の気持ちにも気づいていない。早く付き合えよ!と言いたいけどそれはそれでなんか違う気がするし、余計なお世話な気がする。日下部さんとしては多分、自分で気がついてほしいだろうしね。
はぁ、お兄ちゃんはほんとに世話が焼けるよ。日下部さんもじれったく思ってるんじゃないかな?だから、りずはは二人の背中を押してあげるのです。そうすればお互いに意識しあって付き合いだすんじゃないかな?
とにかく、日下部さん、ファイト!
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