第94話 修学旅行7(女サイド)
修学旅行三日目。
私は目が覚めると昨夜のことを思い出した。当麻くんに遂に私の正体がバレて、そして、喧嘩した。その喧嘩は、前のときとは比べるまでもないほどに最悪なものだった。
当麻くんとの揉め事には小田切くんや徳川くん、津田さんに鳥橋さんを巻き込む形となった。私はやはり昔から疫病神なのだろうか。
「うう〜〜〜ッ!·······ってあれ?日下部さん、もう起きてるの?」
津田さんはまだ眠たそうに目を擦っていた。修学旅行は最終日で津田さんもきっと疲れが溜まっているのだろう。
「おはよう、津田さん。早く目が冷めちゃって」
「そうなんだ········その、ね、日下部さん。昨日のこと気になってて眠れてなかったりする?」
昨日のこと。それは、当麻くんと喧嘩をしたことを指しているのだと思う。確かに私はそのことを今も気にしている。けど、もうどうにもならないことだ。人の信用というのは一度のミスで失われることもあるから。
「·······そんなことはないよ。よく眠れたから」
「無理はしないでね。今日は男子たちいないから思う存分、遊べると思うし」
津田さんはそう言って笑みを浮かべた。
その後、簡単に着替えをしていると、
「あっ、おふたりとも起きたのですね。おはようございます」
鳥橋さんが部屋にある風呂場から出てきた。朝風呂でもしていたのだろうか。
「鳥橋さんは相変わらず早起きだね」
「慣れてますから。合宿のとき、徳川くんが朝早くに起きるお手伝いもしていましたし」
「「············」」
鳥橋さんはニコニコと衝撃事実を言ってのけたけど、これ、どう反応すればいいのかな?
そんなことはあったもののそれ以外は特に問題はなく、私達はホテルのロビーまで来れた。私はロビーにつくと周囲を見渡した。
(当麻くんたちはもう出発したのかな?)
私はそう思いながら津田さんと鳥橋さんについていく。
「今日は最終日だし、楽しもう!」
津田さんは私と鳥橋さんにそう言うと前を歩き出した。天気はそれに対照的で曇り空だった。それは、私の今の状況を表しているかのようで私は視線を落とす。
『君も切井のように前に歩めることを僕は願ってる』
小田切くんが私に春休みのとき、言ったことだ。私はそのとき、過去から目を背けるのは止めようと決めた。けど、
(私にはもう、無理だよ··········)
今まで隣で私を陰ながら支えてくれていた彼の存在はもうない。それに彼は私のことを信用してくれてすらいない。その原因は私が作った。
私が勝手に信用されているのだと勘違いして、彼に頼っていたばかりに。
これはすべて今までのツケが返ってきただけだ。
理不尽だと、不条理だと。そう思うことは筋違いだ。私は昔から疫病神なのだ。当麻くんも心の中で私のことを疎ましく思っているはずだ。
(私はやっぱり·············ここにいるべきじゃないんだ)
◇
俺は何度も疑問に思うべきだった。疑問に感じる場面はいくつもあって、そのたんびに俺は熟考するべきだった。それをしなかったが上に俺は気付けること、分かることにも気付けなかった。
選択のとき。俺がなんども考えていたこと。それはもうまもなくのことだった。
美愛さんは俺に告げていた。その選択のときは、いつであるかを。
日下部が抱え込み、苦しんでいた黒い黒い過去。それを聞いて選択をしなければならないのだ、と。
日下部を選ぶか、それとも選ばないか。
選択のときは刻々と近づき、修学旅行のエンドロールはもう流れた。
修学旅行は終わり、栄光についた俺たちは荷物を手に取り、バスから降りた。
俺は日下部が降りてくるのを待っていた。日下部はすぐにバスから降りてきた。日下部だけでなく、鳥橋と津田もいた。
小田切と徳川は俺のことを思ってか、鳥橋と津田を連れて、帰宅していった。
俺は日下部と半日ぶり顔を合わせ、
「木村」
そう話しかけた。それは、最悪の鐘となるか、あるいは――――――――――――。




