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#8 偽機母神教国グーゾスハイ

「あらあらうふふ、マイカーさんおはよう♡」

「は、はい! おはようございますGEAr(ギーア)様!」


 またも週末明け。

 私は異世界召喚……じゃなくて。


 GEAr(ギーア)様の御許――その綺麗なお顔と周りに歯車が稼働している空間――に、召喚されたわ!


「ネコニックバン国の王と大臣は……この私が罰しましたのでご安心を!」


 私はGEAr(ギーア)様に、そう告げた。


 そう、あれからというもの。


 労働対価自動変換魔械は、ネコニックバン国民が結成した議会の管理下に置かれて。


 それを使って、ちゃんと国民たちには働いた分だけお金が還元される仕組みになった。


 ちなみに、王様と大臣はその形は維持されたものの形だけで。


 自分の身の回りのことだけじゃなく、公共事業まで()()やらされてるらしいわ。


 ――まったく、こんなこともできないんですか!

 ――な……よ、よくもそんな口を! 私は王だぞ!

 ――ええ、王様でしたら……自ら公共事業を行われるのは当然のこと!

 ――ひ、ひいい! 


 ……とまあ、こんな感じにね。

 ああ、グラシャスさん?


 大丈夫、もうあのブラック勇者パーティーは辞めて転職してるから。


 まあ、前よりはマシな所にね。


 ん、あのブラック勇者パーティー?

 さあ、興味ないけど。


 今日も、どこかで日銭を稼いでいるんじゃないの?

 分からないけど。


 さておき。


「さあて……マイカーさん。次は、ここに行って欲しいわ。」

「あ、はい! ……ん、グーゾスハイ国?」


 私がGEAr(ギーア)様から受け取ったのは、次なる任務の地。


 だけど、聞いたことないわね。

 よっぽど辺境の国なのかしら? (我ながら酷い)


「ええ、聞いたことないでしょう? ……でもね。そこでは不届ぎに゛も゛! 機母神から託宣を受けているなどと嘘を吐く巫女を擁する宗教に支配されているそうよ……あ゛あ゛〜! よくもよくも、今すぐにでもgearnt(ギアント)ちゃんたちに他の全人類諸共! 滅ぼさせてやりでえ゛なあああ!」

「ひい!? ぎ、GEAr(ギーア)様!」


 ああ、また始まってしまった……


 空間が一気に暗くなり、な、何か蠢く巨人みたいな者――GEAr(ギーア)様の可愛い(!?)gearntちゃん――たちが!


「お、落ち着いて下さいGEAr(ギーア)様! 私たちがまた、あなた様のお手を煩わせるまでもなく解決します! ですから、どうか!」

「……あらあらうふふ、ごめんなさい私としたことが♡」


 ……はあ、はあ。

 な、何とか止まったわ……


 ◆◇


「おい、だけど。結局また俺ばっかりに頼るんじゃねえだろうな? 言っとくが」


 はいはい相変わらずのハイパーねちっこタイム乙、pyston。


 私は彼を、モフモフのカバンにして持ち歩いていた。


 私はさっきの空間から、直に転送されて。

 もう件の、グーゾスハイ国にいたわ。


「はあ、だけど……ここは()機母神教国ってことよね? こりゃ、GEAr(ギーア)様のお怒りは今まで以上って言うべきかしら……」


 ……はあ、うんきっとそうね。


 だって、これまでにも何かにつけてgearnt(ギアント)ちゃんたち生み出して人類滅亡やろうとして来てたけど。


 ―― ……あ゛あ゛〜! よくもよくも、今すぐにでもgearnt(ギアント)ちゃんたちに他の全人類諸共! 滅ぼさせてやりでえ゛なあああ!


 ……今回の本気度は桁外れ。

 だって、下手すりゃあの場でgearnt(ギアント)ちゃんたち生み出しかねない勢いだったんだもん!


 ああ、恐ろしい……


「……確かにこんな人類、滅びちゃった方がいいだろうけど。少なくとも私は、GEAr(ギーア)様に守っていただけるだろうから。」

「おい、聞いてんのか!? てか、何独り言を」


 はいはい、pyston。

 まあ誰も聞いてない話を延々と続けるあなたも、充分独り言ぶつぶつ野郎になってるわ。


 ……まあ、それはさておき。

 でもサークル仲間のグラシャスさんとかいるし。


 この世界の人たちも、まだ捨てたもんじゃないと思うのよね〜!


 ……後は、癪だけど。

 一応あのブラック勇者パーティーも、別に死んで欲しい訳じゃないのよね。


 まあ、何はともあれ。


「いずれにせよ、一国のバカのせいで全人類連帯責任とかあっていい訳がないわ……ここは、私の力で何とか止めないと!」

「あん? ……そっか、まあ精々やれや。」


 pystonが何か言ってるけど。

 とにかく。


 私はそう、心に誓ったから。


 ◆◇


「失礼、お嬢ちゃん?」

「あ……く、クローム司祭様……」


 私がpyston片手(?)に歩いていると。

 何やら強面の、でも身なり()()は立派な男が幼女に話しかけてた。


 え、何これ誘拐?

 幼女趣味?


「その食材は?」

「あ、はい! お、お母さんが病気で、少しでも何か栄養のあるもの食べさせたくて!」


 いやああ……グスン。


 うんうん、お母さん想いのいい子いい子!


「そうか……ならば。それは我らがGEAr(ギーア)様への捧げ物としなさい!」

「……え?」


 ……はあ゛あ゛!?

 いやあんた、何言ってんのよ!


 えっと、黒だっけ?

 いかにも腹黒そうだから、いいわ腹黒司祭で!


「それをGEAr(ギーア)様に捧げ、ひたすら快気を祈るのだ! そうだ、君のお母さんを救えるのは我らが機母神様に他ならない……」


 こんのお、腹黒司祭!

 こんな小ちゃい娘に、なんてこと言ってんのよ!


「で、でも……お母さん、お腹が空いて死にそうで」

「……何? 私に――いや、GEAr(ギーア)様に逆らうのか? 供物を怠ると神の怒りを買うぞ!」

「い、いやあ!」

「待ってください!」

「……ん?」


 腹黒司祭にあまりにも、私の腹まで黒くなって――いえ、腹が立って。


 私は思わず、腹黒司祭に叫んでいた。


「その娘嫌がってるじゃないですか、離してあげてください!」

「何だ……見ない顔だな。どこかの地方から来たのか?」


 腹黒司祭は私を、検分するように見つめて来る。


「……マイカー・エンデバーと言います。異国から来ました、流しの魔法技師です。」

「魔法技師? ふん、まあいい……邪魔しないでいただけるか? 私は聞き分けのない子供に教えを説いているだけだ!」

「い、いや! は、離して!」


 な!

 言うわねえ、あんた!


 ま……いいわ、なら。


「むう、この娘は!」

「待ってくださいと言っているでしょう! 話は聞かせていただきました……なら、これを代わりに供物としてください!」

「何? ふん、何を……な!?」


 それでも女の子を離そうとしない腹黒司祭に、私は。

 pyston変形のカバンから、大金を取り出した!


「な……?」

「これを供物にしてください、それとも……まだ、何かありますか?」

「……ふん。精々母親から、偉大な我らが機母神様の教えを学び直しておけ!」


 腹黒司祭は、それだけ言うと。

 ぷいっと、行ってしまった。


「あ、ありがとうお姉ちゃん!」

「え!? あ、えへへお姉ちゃんか……」


 女の子は私にしがみつく。

 お姉ちゃん、か……


 そう言えば前世には、妹いたっけ……


 ◆◇


「……さあお母さん、オートミールできたよ!」

「ごほん! ……ええ、ありがとうスマラ。」


 女の子の名前はスマラ・ハシュマラ。

 栗毛っぽい色の、ちょっとボサボサ髪の目がクリッとした娘で……ん〜!


 うん、可愛い!


「……マイカーさん、でしたね? 娘がお世話になりまして。」

「あ! い、いえそんな」


 ……まあ、さておき。


 ここは今までのガーデニンシュイやネコニックバン――まあ表向きは豊かな国――と比べてとても貧しい。


 それはさっきみたいな腹黒司祭の一味――()機母神教が人々から信仰を餌に供物と称して金品巻き上げてるからなんだけどね!


「ゴホッ、ゴホッ!」

「お、お母さん!」

「だ、大丈夫ですか?」


 く、スマラちゃんのお母さんも!

 ろくに食べられず薬も買えなくて、今や餓死寸前なんて!


 もう……つくづく馬鹿よ偽機母神教共は!


「だ、大丈夫で……ゴホッ!」

「……ん!?」


 と、その時。

 私はスマラちゃんのお母さんの身体が、一瞬透けて見えた気がした。


 まさか。


「……魔械カバー、オープン!」

「!? え……お、お母さん!?」


 私が唱えると、やっぱり。

 スマラちゃんのお母さんは固まり、その身体の胸部が捲れて中の歯車機構が覗いた!


 なるほど――


「……スマラちゃん。もしかしたら、お母さんを救えるかもしれない!」

「……え!?」


 私はスマラちゃんに、にっこり笑って見せた。


 ◆◇


「よ、よし! つ、着いたあ!」

「はあ、はあ、長かったわね……」

「だ、だけどブラック。本当に、ここにいんのかあいつ……」


 だけど、その頃。


 まだ私は当時知らなかったけど、何と手漕ぎボートで!


 半ば――というかモロ――密入国して来たのはあのブラック勇者パーティー!


「ああ、ここに来ればきっと奴も来る……何せ機母神教の国だからなあ! マイカー! あの忌々しい、機母神の技師気取りの女はきっと!」


 あらあら、ずいぶんイキってるわね。

 でも……別に気取ってなくて、モノホンだけど?


 ……まあ、さておき。

 また面倒事が、増えそうだわ――

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