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#4 休日の過ごし方、それが問題だ

「ふぁあああ……って!? ひいい、遅刻よ遅刻う!」


 私は、ばっと飛び起きた!

 ま、まずい今何時!?


「も、もうこんな時間! 急がなくちゃ!」


 私はそのまま、身支度もそこそこに。


「!? う、さ、寒いい! い、今って春よね!? い、いいえ待って……そ、そうだわ今は。」


 そう、これは世界の終末――もとい、週末。

 週末はどんな季節でも冬になる、それがこの世界だったわ。


「今は休日……おおお、寒い!」


 あ、いけないいけない!

 私ったら、風邪引いちゃうわ!


 ◆◇


「ふー……わーい! 今日は休日だ休日だあ!」


 ……と、喜んでみたけれど。


「……はあ、身体は元気なのに動かない……」


 ……うん、社畜あるあるね。

 まあ、無趣味だったし。


 私の趣味、といえば……


「魔械いじり、かしらね……」


 結局、仕事でやってること=趣味かもね。

 これも、社畜あるある……いや、そうでもないか。


 まあ、それはさておき。


「……よし、いっちょやっちゃお!」


 私は、飛び起きる。

 そうよ、せっかくホワイト企業に転生もとい転職したんだから! 


 ここはワークライフバランスを取ることを図るため、プライベートも充実させねば!


 ◆◇


「さあさあいらっしゃいいらっしゃい! ……ハーックション! 異世械技師の少女マイカーによる、魔械いじりサークルを立ち上げます! 興味がある人は、是非加入を……ハーックション!」


 と、いうわけで。


 私は雪積もりし街頭に出て、道行く人に、大声で叫ぶけど。

 あああ、寒いしクシャミが!


 うん、このクシャミは風邪かしら?

 ……いいえ、これは昨日まで暖かかったことによる寒暖差アレルギーだわ!


 うん、きっとそうよ!


 ……だけど。


「……だあれも、足止めてくれない!」


 道行く人は、一瞥すらしてくれないわ!

 はあ、これが現実かしらね……


 ん、でも待って。

 じゃあ。


 ――あらあらうふふ……はあ゛〜!? こいつらよく見れば……私の可愛い可愛いマイカーさんをいじめてくれた奴らじゃねえか!? 許さない……私の可愛いgearnt(ギアント)ちゃんたちが踏み潰してやる゛よおお!


 私の頭に、この前のガーデニンシュイの一件が浮かぶ。


 うん、あの時定時で仕事終われなさそうな私を気遣って。


 GEAr(ギーア)様が出て来てくださった。

 そうよ、GEAr(ギーア)様はとてもお優しかったわめでたしめでたし!


 ……じゃないのよ!


 私が懸念したのは、今!


 私を相手にしない通行人たちにもGEAr(ギーア)様が怒って、可愛い可愛い(棒読み)gearnt(ギアント)ちゃんたちが生み出されて世界諸共全人類ぺしゃんこ!


 ……なんてことにもなりかねないんじゃないかって話よお!


「いけないいけない、かくなる上は! 魔械カバーオープン!」


 そう、こうなれば!

 私の腕を見せつけるべく実演販売(いや何も売ってないけど!)をやり散らかすしかないわ!


 さあ!


「コール、火炎魔械! 改造、屋外暖房魔械!」


 私は手元の空間を切り取って、中から覗く歯車機構を工具たちを操りいじくり散らかす!


 元々、戦闘用であるこの火炎魔械の出力をまずは抑えて。


 で、更に。

 周りに積もる雪を湯気として蒸発させて、即興の温室構築!


 お、するとすると。


「な、何だあれは!」

「あ、暖かい……」

「す、すげえな嬢ちゃん! これどうやってやってるんだ?」

「え、即興で!」

「あ、あたしにも当たらせてよ!」


 おおお、よしよし!

 さあさあ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい!


 ◆◇


「ふう、何とか見てくれたけど……逆に応対で忙しくって、サークル募集かけるの忘れちゃってたわ! ああいけないいけない、さあて……ひとまずポスターはそこいらに貼ったけど、どこまで集まることやら……」


 私は自宅(城)に戻り。

 一息吐いたわ。


 ああ、心地よい疲れね……

 これで、土曜日はもう終わっちゃうわ。


 さあて、明日はどうしましょ……

 と、思ったその時だったわ。


「失礼します! あ、あ、あの……ま、マイカー・エンデバーさんのお宅はここですよね……?」

「あ、はい……どちら様ですか?」


 と、その時。

 私の自宅(しつこいようだけどもはや城)の戸を叩いて戸越しに聴こえて来たのは若い男性の声。


 これは。


「ぼ、僕は……ぐ、グラシャス・インディゴと言います! ま、魔械サークル参加希望者です!」


 ……あらあら!

 もう参加者が来るなんて。


 ◆◇


「へえ、グラシャス・インディゴさん……普段は勇者パーティーに加入されている?」

「あ、はい……ただ、プ、プライベートぐらいは充実させたくて! た、ただ……け、結構な……い、いわゆるブラック勇者パーティーなんで! む、無理しないぐらいの活動にしたくて……」


 ……へえ、ブラック勇者パーティー……

 ま、まあそれは聞かなかったことにしましょう!

 ね!


「……じ、ジョブは魔法技師さんですか?」

「あ、はい! ぎ、技術にはちょっと自信があるんですけど……ぼ、僕かなりの人見知りで本番に弱いタイプで! そ、それでそういうところ克服したくて……」


 ふうん、そういう子なんだ……

 よし。


「なら……お手並み拝見したいわ! ちょっと、何か作ってみて?」

「あ……は、はい!」


 私はそう言って、ちょっとグラシャスさんから離れた。


 すると。


「……魔械カバー、オープン! コール、氷魔械! 改造、年中氷室魔械!」


 ……え?

 うわ、何か部屋寒くなった!


「ど、どうですかこれ!? い、一年中部屋を寒いままにできる魔械ですよ!」

「う、うん……はっ、ハーックション!」


 な、なるほどね……

 で、でも待って!


 そもそも、一年中週末は寒いし!

 あ、でも、夏は涼しくていいかしら……


 いや、にしても寒すぎ!

 お、温度差大きすぎて身体キーンなるわ!


「え……だ、だめですか……?」


 い、いいえまあダメじゃないけど! 

 ち、ちょっと実用性はないわね……


 と、ともかく!

 寒すぎるから早く戻して!


「え……は、はい!」


 よ、よし!

 ぐ、グラシャスさんは戻してくれたわ!


 ◆◇


「はあ、はあ……あ、ありがとう! う、うん腕は良さそうね……」

「え……で、でもさっき実用性ないって」


 え、ええまあそうだけど……

 あんな魔械即興で作れるなんて私ぐらい(自画自賛)なんだし!


 すごいのは事実なんだから、それは自信持っていいわよ!


「あはは、あ、ありがとうございます……で、でもやっぱり僕なんかじゃダメですよね?」

「ん、何言ってんの? ……参加を認めます!」

「……え!」


 まあ、貴重なサークル参加希望者第一号をそんな手放す訳がないっていうのもあるけど。


 グラシャスさん、基本いい人そうだし。

 別に、何も参加拒否する要素ないですよ?


「あ、ありがとうございます! よ、よろしくお願いします部長!」


 ぶ、部長!?


 ――部長、これなんですが

 ――あ゛ん!? 誰が喋っていいと言った!?


 ……あーあ。

 前世の記憶、また蘇っちゃった。


 で、でも会社の部署の部長て意味じゃないから!

 さ、サークルの部長て意味よね?


「ん、どうしました部長?」


 ――あ゛ん!? 誰が喋っていいと言っ(殴


 いや、出てこないで!

 べ、別にここは前世じゃないし!


「い、いいえ何でもないわ! あ、ありがとう加入してくれて……こ、これからもよろしくグラシャスさん!」

「は、はい!」


 と、とにかく……な、何とかサークルも立ち上がって!


 こ、これでプライベートも何とか盛り上がりそうだわ!


 ◆◇


「あらあらうふふ、ご機嫌ようマイカーさん!」

「はい……ご機嫌麗しく、GEAr(ギーア)様!」


 そうして、休日明け。


 私はGEAr(ギーア)様と始めてお会いした時と同じ空間で、そのご尊顔を拝見しているわ。


 さあて、さて……


 ちょっと休日ボケしてるけど。

 頭を切り替えて、ここは仕事モードに入らないと!


「ちゃんと休んだんだろうな? 後でスタミナ切れなんか起こされて誰が迷惑被ると思う? 俺だよ」


 ……ああもう、相変わらずねちっこいわpyston(パイストン)


「あらあらうふふ……pyston(パイストン)ちゃん? 私のマイカーさんに何言ってくれてるのかしら〜? あなたのお目付役に〜?」

「ひ、ひいい! も、申し訳ありません母上!」


 ん? 私の方がpyston(パイストン)のお目付役?


 いやいや、あなた逆言ってたわね!

 そう文句言いたいけど。


pyston(パイストン)ちゃん?」

「ひいい、母上え!」


 ……ま、やるまでもないかも。

 さておき。


「ぎ、GEAr(ギーア)様! 次の任務は何でしょうか!」

「……あらあらうふふ、そうねそれを言わないと。そうねえ、次の任務は……馬鹿な国民には価値が分からないとか言って、国民たちには偽通貨を使わせて国王がぼろ儲けしてやがるネコニックバン国! まったく、何晒してくれとんじゃああ!」

「ひ、ひい! ぎ、GEAr(ギーア)様!」


 私がGEAr(ギーア)様にそう尋ねると。

 はい、毎度というべきか。


 今私たちがいる空間が一気に暗くなり、何か蠢く巨人みたいな者たち――GEAr(ギーア)様の妊娠されている、可愛い可(以下ry)巨人族gearnt(ギアント)ちゃんたち。


 ……また、慌しい平日が始まるわ。

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