表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/18

#3 水搾取魔械システムの最期

「……改造完了! よし、私が城の中潜入して来るから、あんたは外にいて!」


 私は、ガーデニンシュイ王城の守護魔械を改造し終えて。


 pyston(パイストン)に、そう告げたけど。


「はああ!? お前ふざけんなよ、中でサボる気じゃねえだろうな! いや俺は母上からお前の監督言いつかってんだよ!」


 あーあ、やっぱりねちっこい!

 まったく、これがあのGEAr(ギーア)様の息子だとは思えないわ!


 ―― 私の可愛い可愛い可愛いgearntちゃんたちが、踏み潰してやろうかああ!?


 ……うーん?

 いや、そうでもないか……


 いや、まあGEAr(ギーア)様はねちっこくはないですよ!?


 まあそれは置いといて。


「いいから、行くぞ! お前だけじゃ心許なさすぎんだよ!」


 あらあら。

 結局ついて来る気満々なpyston(パイストン)を私は振り切れず。


 pyston(パイストン)の、追随を許しちゃったわ。


 ◆◇


「さあ魔導士……始めてくれ!」

「はっ、我が王様! ……水搾取魔械、展開!」


 んん、何あれ?

 ひとまず城内に侵入した私は、呆気に取られたわ。


 魔導士は、城の一角にある大ホールを使い。


 そこの空間を全て切り取り、内部機構を剥き出しにするほどの大規模な魔械を発動しようとしている。


 こんな大規模魔械を……


 そして、決定的瞬間は訪れたわ。


「……水搾取魔械、発動せよ! 周辺四国より、水資源を巻き上げるのだ!」


 むむ、やっぱり私の睨んだ通り!

 その魔械の中、魔導士と呼ばれた男は同席している王の前で高らかに叫んだ。


 すると。

 ガーデニンシュイ国上空には、たちまち雨雲が立ち込め。


 そのまま程よく、雨を国に降らせる!


「今日もよくやった、魔導士!」

「いえいえ、何の! この砂漠の国を救う為ならば、周辺四国など歯牙にもかかりませぬ!」


 ……はい、ビンゴお!

 うん、これは許さない。


 というか、許しちゃいけない!

 さあて……


 と、私がホールに出て行こうとした時だったわ。


「失礼いたします! ブラック勇者パーティー、只今参りました!」


 ……んんんん!?

 な……まさか!


 ここで会ったが百年目!

 ……って、私はまったく会いたくないんだけど!


 よりにもよって、私を追放したブラック勇者パーティーがここに!?


 ◆◇


「よくぞ来たな……ブラック勇者パーティー!」

「はっ!!!」


 うん、恭しくガーデニンシュイ王に頭を下げるブラック勇者パーティーだけど。


『さっきこいつら、自分でブラック勇者パーティーって名乗ってたけど普通自分でブラックって言う〜?笑』……って思うでしょ?


 でも別に、こいつらは自分たちがブラックなことを自覚してる訳じゃないの。


 それはね。


「このトランシュ・ブラック、ガーデニンシュイというご立派な国から直々に任務を承り光栄でございます!」


 ……そう。

 勇者パーティーを牛耳るこの勇者、名前がブラックって言うの。


 だから、この勇者パーティーもブラック勇者パーティー。


 ただ、それだけ。


「……して、うまくやったのだろうな?」

「ええええ、もちろんでございます! 周辺四国にわざと魔獣を追い立て、水不足の問題から目を逸らしました!」

「ほう……よくやった。」


 ……へええ?

 なあるほど……GEAr(ギーア)様。


「感謝いたします……ここであいつらとの因縁に蹴りをつける、その時をお与えくださり!」

「!? な、だ、誰だ貴様は!?」


 私はそこで、天井裏を突き破り。

 ホール内に、躍り出たのだった。


 ◆◇


「な……て、てめえマイカー!」

「あらどうしたのクズ魔法技師! 魔法技師の次は、泥棒に転職かしら?」

「ははは、クズノロにはお似合いだよな!」


 はああ!?

 ムッキー、こいつらあ!


 さんざっぱら私をこき使っといてよくも言ったわねええ!


「ええ、まあそんなところよ……だけど。私もあんたたちも、結局泥棒には変わりないですよね? だってあなたたちは、隣国から水を」

「ふん、盗み聞きとは小賢しい! どこの回し者かは知らぬが……魔導士! こんな小娘、さっさと洗い流せ!」

「はっ! ……水搾取魔械、洪水機能発動!」

「む!? きゃあ!」


 だけど、そこで。

 奴らはあの大規模魔械を発動して、私を押し流した!


「ははは、相変わらずのバカが!」

「ザマあないわね!」

「ははは!」


 ガーデニンシュイ王と魔導士に更にブラック勇者パーティーの面々は噴水を生成して、その上に安全圏を確保した状態で。


 さあて、私も何とか抜け出したいけど。


 このホールは、巨大な洗濯機みたいになっていて!

 私はもが……そこに!


 押し、流された!

 も、もうダメえ……


「えい! ったく、一人でできるみたいなこと言っといてこの体たらくかよ情けねえなあ!」


 む……

 パ、pyston(パイストン)


 何よ、助けてくれたの?


「ふん……一応は母上から仰せつかってる役割だからな! ていうか、そうでもなけりゃとっくに見放してんだぞお前なんて、分かってんのかよまったく」


 ……あら、相変わらずねちっこいけど。

 まあありがとう!


 ……さあて。


「……ここで終わると思うとか舐めんなっての! さあ……魔械カバーオープン!」

「!? な、何をする!」


 私はそこで。

 pyston(パイストン)が驚いたことに、彼のカバーをオープンしたわ!


 ◆◇


「さあてさて……さあ国王陛下! 隣国四国からは、もう何も搾取するものがなさそうです!」

「ああ、そうだな……」

「さっきのクズノロ魔法技師みたいに、流してしまえばいいですわおほほ!」


 ……誰を、流してしまえばいいって?


「ふん、だーから! あのクズノロ魔法技師を……え?」


 …… 対水日照り砲の魔械発動! 日照り弾、発射!


「な、何だ!? あ、あの魔法技師の声が……ぐう!?」

「き、きゃああ!」

「ぐああ!」

「うわああ!」

「くう!」


 私が即興で組み上げた銃型魔械から撃たれた弾が。


 そのまま王や魔導士、ブラック勇者パーティーの乗る噴水の水柱を撃ち抜いて消滅させた!


 当然、乗ってた奴らは自由落下よ。


「ご安心ください王様! 水搾取魔械、水柱機能発動!」


 だけど魔導士は、かなり頭の回転も早く魔械に命じて体勢を立て直そうとする。


「!? な、ま、魔械が言うことを聞か……あぶぶ!」

「ぶあっ!」

「ぶ、きゃあ!」

「ぶあ!」

「ぐぶ!」


 でも、残念でした〜!


「悪いけど……この魔械も既に私が掌握させてもらいました〜! まったく、ざまあないわね!」

「く……クズノロ魔法技師い! ぶあ!」


 今度は私が、自ら築き上げた水柱上の安全圏から奴らを見下ろす!


「もが……な、何なんだこれは!?」

「ああごめんなさいねえpyston(パイストン)ちゃん……あなたを、対水日照り砲の魔械に改造させてもらったわ!」


 そう、銃型魔械ってのは改造させてもらったpyston(パイストン)なんだけど。


 それを、手に持ちながら。


「一つ教えてあげるわ……自分を中心に他人という歯車が回ってくれる世界は、誰にもどこにもないのよ!」

「な、何い……?」

「そう……少なくともこの世界は、この機母神様を中心に天が回ってくれてるのかもだけど! 私の前の世界ではむしろ、この大地も回っている天の一角でしかなかった! そこには天の――世界の中心なんてないのよ!」

「な……ま、前の世界だと!?」


 私のこの言葉に、今溺れかけてる奴らは首傾げてるけど。


 この王様もブラック勇者パーティーも、所詮は自己中心的な奴ら!


 それが言いたかっただけよ。


「さあて……またまた改造よ、pyston(パイストン)ちゃん!」

「もが……や、止めろ! は、母上に言いつけるぞ!」

pyston(パイストン)ちゃん! ……機母神様はともかく、私もあいつらも、あなたも。所詮は回される歯車の一つであっても中心となる太陽歯車じゃないのよ?」

「く……だ、だけど! それが俺を改造していい理由には!」

「……魔械カバー、オープン! コール、対水日照り砲の魔械! 改造、日照り花火砲の魔械……」

「な……ひ、人の話を聞けええ!」


 悪いけどpyston(パイストン)、そういうことだから。


「……さあて。日照り花火砲の魔械発動! 日照り花火弾、発射!」


 私はこうして、諸事情に構わず。


 空中で弾けて広範囲に効果を及ぼす日照り弾の改良型を放ち、ホールの屋根を壊して同弾は空で炸裂した!


 ◆◇


「ぐ、ゴホゴホ! な……あ、雨が……」


 私の放った弾により。

 雨雲は周辺四国に散らされ、このガーデニンシュイの雨は上がったわ。


 そしてホールを満たしていた水も、干上がった。


 ほら、夕日が綺麗よ?


「ふ、ふざけるな……!」

「ふざけてはいないんだけど……さあて。もう水搾取魔械も使えないから、あなたたちの国に水はどうしましょう?」

「な……くっ!」


 王は、とっても歯痒そうな顔してる。

 まあ、無理もないわ。


 これからはせいぜい、さんざっぱら搾取してきた四国に頭下げて水恵んでもらうのね?


「貴様……クズノロ魔法技師がたまたま奇抜な魔械できたからって自惚れんな!」

「ええ……こんな屈辱! よくも!」

「ガーデニンシュイ王……こいつは不法侵入した罪人です! お許しいただければ処刑してご覧に入れます!」


 あらら。

 何よ、(私も微塵も思っちゃいないけど)かつての仲間に何て言い草?


「ああ、そうだな……やれ!」

「あ、待って! ……そろそろ定時だから、帰らせてくれないかしら?」

「……はあ? 何言ってんだてめえ!」

「寝ぼけてんの? あんた自分の立場分かってんの!?」

「まあいいさ……なら、土に帰してやろうぜえ!」


 ……まったく、つくづく話の通じない連中だわ。


 まあ、私はあんたたちのおかげ(皮肉)もあって残業慣れしてるからいいんだけど。


「まったく……魔法技師、こいつらバカなのか?」

「うん……今回ばかりはあなたに同意よ。」

「な!? 何だと!」


 pyston(パイストン)も呆れてるわ。

 まあ、仕方ないわね。


 でもね、もし定時を過ぎちゃうと……


 ――あらあらうふふ、マイカーちゃんどうしてお帰りにならないの?


「!? な、何だこの神々しいお声は……」

「み、耳が……」

「とろけそう……」

「……聞いてくださいよGEAr(ギーア)様! この人たちが帰らせてくれないんです! このままじゃ」


 ――あらあらうふふ……はあ゛〜!? こいつらよく見れば……私の可愛い可愛いマイカーさんをいじめてくれた奴らじゃねえか!? 許さない……私の可愛いgearnt(ギアント)ちゃんたちが踏み潰してやる゛よおお!


「ひ、ひいい!!!!」

「な……何だこれは!?」

「ひ、ひいい! こ、これは!」


 あらあらうふふ(棒読み)、驚いてるわ。


 まあ、急に周囲の空間が一気に暗くなり、何か蠢く巨人みたいな者たちが見えたってなればさすがにね?


 まあ安心なさいあんたら。

 今に耳だけじゃなく、全身がとろけるから。


「ガーデニンシュイの国王様、さっき私にどこの回し者か聞きましたよね?」

「あ、ああ……」

「……私、機母神GEAr(ギーア)様の回し者なんです!」

「な……ば、馬鹿な!」


 ――はあ゛〜!? 馬鹿だあ? 私のマイカーさんに、つくづく何晒しとくれとんじゃおらあ!


「ひ、ひいい! う、嘘ではない……ほ、本物の機母神様だ!」


 うん、だからそう言ってるでしょ?

 ……とはいえ。


「私、いくら相手があんたたちみたいなクズでも荒事はよくないと思うの。……だから、この先何も搾取しないって約束して?」

「は、はいい! し、しますしますしますとも!」


 ……はい、国王。

 あんたは素直でよろしい。


「……GEAr(ギーア)様。まあこの通り本人も反省してることですし。それに、確かに定時は過ぎてますが直後に休憩時間です。ギリギリセーフですから、どうか」


 ――あらあらうふふ! ごめんなさい私としたことが♡ ええ、マイカーさんがそう言うなら……分かったか、ボケえがあ!


「ひいい! は、はいい!」


 ……うん、私ギリギリ残業はしてないの。

 かくして。


 初仕事たるGEAr(ギーア)様のバグ:水搾取魔械によるガーデニンシュイ国の潤いと引き換えの周辺国での水不足、修正完了!


 お疲れっしたー!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ