#16 恋愛対象交換魔械の最期/絶対神のとばっちり
「ああ……永きにわたる課題だったからな。我が国の少子高齢化は。」
アキノソーラー国王は感慨深そうに、そう言い。
王妃もこれまた感慨深そうに、頷いてる。
「ええ……その解決策は見事に成功したわね。まあ、もともとこの国の男女は恋愛しなさ過ぎるの。かと言って、モテない人を頑張らせてもダメ。だから、モテる人たちに相手をとっかえひっかえさせて」
……あらあら、何か割と酷いこと言ってる!
「シャー! ……ったく、私利私欲のために性懲りも無く魔械を使いやがって極悪人共が!」
「ええ、そうね……ん? あれ、そうなのかしら?」
「って……おい! そこは疑問の余地なしだろ!」
だけど私の頭を、ちらりと疑問が翳める。
いやいや、だって。
確かに何でも魔械に頼るのは間違っているけど、目的は少子高齢化解消でしょ?
前世の母国もそうだっただけに、何かまともに見えちゃうのよね……
「何であれ、人の心を操ってんだぞ! そんな魔械を他の目的に使われてみろ、どうなる?」
……あ!
そ、そっか……
私は自分の頭に浮かんでいた疑問を見透かしたようなpystonの言葉に、はっとする。
「そっか……pystonちゃん、意外にあったまいい〜!」
「へっへーん……っておい! 意外とは何だ意外とは大体忘れたか俺は仮にも女神の子なんだよ人智を超えた存在なんだよ」
……はいはい、また始まったねちっこタイムはさておき。
「……ちょっとお待ちい、そこのアキノソーラー国王と王妃陛下あ! 全部聞かせてもらったわ、これからあなたたちを成敗させてもらいます!」
「な……だ、誰!?」
「ど、どこから湧いて出たのだこの無礼者めが!」
私はそのまま、騎乗するpystonと共にステルス化を解き地上に降り立った!
◆◇
「さあさあアキノソーラー国王と王妃い! おらおら、舐めてんじゃないぜ!」
pystonは、すっかり勇んで。
シャーと音を立てて、アキノソーラー国王と王妃を威嚇する。
「ひ、ひいいあなた!」
「ば、化け物! へ、兵たちよ出会え出会え!」
そして当然というべきか、王様はまあ兵士たちを呼ぶ呼ぶ!
「はあ゛〜!? てめえら……俺は機母神GEArの息子だぞおらあ! ったくよ、どいつもこいつも俺を化け物呼ばわりしやがってえ!」
――ば、化け物だあ!」
――……はあ゛〜!? ふざけんじゃねえぞてめえら! 人間の分際でよくもこの俺を化け物呼ばわりしてくれたなおら! 俺は機母神GEAr様の息子だぞオラ、機母神と同じく崇め奉れよ俺を!
……かつてネコニックバンの国で言われたこと、気にしてたんだこの子は。
まあ、でもいいのよ今そんなことは!
「おい、マイカー! 俺を魔械に改造して魔法弾ぶっ放せ! それでそのまま、あの魔械諸共王も王妃もけちょんけちょんだ!」
「ああら、あなたから進んで改造されようなんていいじゃない……でも、今回はあなたじゃないわpystonちゃん! 魔械カバー、オープン!」
「は……? お、おい!」
私は、だけど今回はpystonじゃなく。
私たちが今いる王の間の空間の一角恋愛対象交換魔械の魔械カバーを開いた!
◆◇
「魔械、改造……」
「な、何をする貴様! というか何故私の魔械に干渉出来る!」
王様はすっかり驚いた様子だけど。
そして私は、そんな王様に「ええ、それは私が機母神GEAr様の技師だからです。」と教えてあげたい気分だけど!
「……恋愛対象交換魔械、発動!」
今は、あなた方を懲らしめる方が先!
「な……こ、これ! 何を勝手に魔械を発動させて」
「あ、あら……まあ〜♡ な、何て可愛らしいドラゴンさんなの〜!」
「え……お、俺? ……って! い、いきなり馴れ馴れしくモフモフすんな!」
「な……お、お前!」
そのまま突っかかる王様だけど。
王妃様が突然、pystonを愛ではじめたからすごくびっくりしてる!
「あら、あなたもいたの……でもごめんなさい、私たち別れましょう!」
「え……? な!? ど、どうしたのだいきなり!」
あらら、更にかわいそうなことに。
王様は、いきなり振られちゃったのでした!
「おいたわしや王様……でも。国民たちも同じお気持ちだと知れば我慢できるはずです!」
「な……何い!?」
でも、追い討ちかけるようで悪いけど。
私は王様に、更に捲し立てた!
「分かりませんか? 国民もこの魔械によって強制的に愛する人と切り離されました! そう、あなたは今自分がやってこられたことが自分に返って来ている状態です! さあ……どんな気分ですか?」
「く……なるほど、皆こんな気持ちになっていたのか……」
まあ正確には、振られた方も気持ちを操られて別れを快諾してたんだけど。
そこには敢えて、私は触れなかった。
「じゃあ、約束してくれますか? もう、こんな魔械は作らないし使わないと。」
「……ああ、約束する!」
「……はい、素直でよろしい! じゃあ……恋愛対象交換魔械、発動!」
私は王様のその言葉で、満足した。
「あ、あら……? ……ひい! な、何で私がこんな化け物に!?」
「ふにゃ……って! おいこらてめえ、さっきまで愛でてた癖にその態度は何だおらあ!」
……くすくす。
何よpyston、満更でもなかったの?
まあ、何はともあれ。
これでまた一つ、GEAr様のバグ解消ね……
ピカッ、ゴロゴロ!!
「ひいっ!?」
「きゃあ! あ、あなた!」
「だ、大丈夫だぞ、お前!」
「な、何だ!?」
と、思ったのも束の間。
何と、城の近くに。
無数の落雷が!
――見つけたぞ、世界の理を乱す魔械……この絶対神自ら、改めて目に入れに来た!
「こ、この声にこの雷……まさか!?」
「な……何ででしゃばって来てんだよ!」
その時聞こえて来た、その声に私とpystonはピンと来た。
これは――
ゴロゴロゴロゴロ!!
「きゃあ! あ、あなた、城に雷が!」
「だ、大丈夫だお前! 私が守る!」
「pystonちゃん、二人を守って!」
「ふん、指図すんな!」
その雷が私たちのいる尖塔に落ちて塔が破壊され、剥き出しになると。
――おおおお、見えたぞ……
「……ZeusExMachina様。」
私は姿こそ見えないけれど、雲の向こうにいるであろう絶対神に呼びかけた。
◆◇
――おや? そうか……丁度そなたらも取込中であったか……
「ええ、そうです絶対神様。」
私は、やや震えつつも。
絶対神に、そう返す。
「ああ、だからてめえが出る幕はねえんだよZeusExMachina! だから引っ込め!」
……うん、pyston。
前々からだけど、あんたいくら甥とはいえ絶対神に屈託なさすぎよ!
――いやいや、そなたらはこの世界の理を乱す魔械とそれを使う輩を懲らしめているのだろう? ならば……ここからはその役目、私に譲るがいい!
「! ZeusExMachina様……」
うん、だけどZeusExMachina様も中々頑固なお方で。
引く気配がないわ……
はあ、どうすれば。
と、その時だったわ。
――あらあらうふふ……ZeusExMachina。何故あなたが、ここにいるのかしら?
――おやおや、これはこれはお祖母様……ご機嫌麗しく。
ぎ、GEAr様あ!
あーあ、またGEAr様が矢面に……
私はまた、機母神と絶対神の睨み合いを見なきゃいけなくなったみたい……