#14 絶対神との再会
「……さあて。どうなっているのかしら。」
「ああ……ったく、愚かな人間め。またどんな悪事をしてやがるんだ……?」
私とバッグ型に変形しているpystonと物陰に隠れ。
広場を注視して、そこに来るカップルたちを眺めていた。
すると。
「パパ〜!」
「おお、よしよし! ……なあ君、明日なんだけど。」
「ごめんなさいあなた……私と別れてくれないかしら?」
「……え!?」
おおおい!
こらこらこら!
一つ、唐突に別れようとしているカップルが!
いくら何でも唐突に過ぎるでしょ!
私は今にも、物陰から出たい衝動に駆られた!
けど、すんでの所で我慢したわ。
「何でだい!? ようやく子供も産まれたばかりなのに」
「この国ではよくあることよ、ごめんなさい……」
いやいや、そんなあっさりされてもお!
と、その時だったわ。
「! あ……そ、そうだね僕たち。元々そんなに好き同士じゃなかったし。」
……いやいや!
あんたもあっさりし過ぎでしょ、旦那さん!
急に旦那さんも、あっさりと別れ話を受け入れた!
……ちょっとちょっとお!
◆◇
「あらあらうふふ、さあどうだったかしらマイカーさん?」
「はい、GEAr様……」
その日の仕事終わり。
私はGEAr様の御許で、いつも通り報告を始めた。
「……やはりあの国のカップルたちは、別れちゃまた別の人とくっついてを繰り返していました。」
私はここで、そう報告した。
あのカップルの後も、他のカップルも注視してたけど。
やっぱり他のカップルも、そんな感じだったわ。
「そうだったの……あ゛あ゛〜! よくもよくも、今すぐにでもgearntちゃんたちに他の全人類諸共! 滅ぼさせてやりでえ゛なあああ!」
「ぎ、GEAr様あ!」
……ああ、やっぱり分かっていたけど。
空間が一気に暗くなり、わ、私めがけて強風が吹きつけて来る!
「ぎ、GEAr様落ち着いて下さい! 前にも言いました通り、私が何とかします! ……それに」
私はGEAr様に呼びかけつつ。
ちょっと迷いつつも、こうも言った。
「……gearntちゃんたちはもう、奈落にいます! ですから……彼らよりも、私を頼りになさってください!」
そう、それは前から気になっていたこと。
何故奈落に消えたはずのgearntちゃんたちに、GEAr様が言及なさったのかって。
……まあ尤も、こんなこと聞いたら場合によってはGEAr様の傷を抉ることにもなりかねなかったんだけど。
だから、これはちょっと冒険しすぎだわ今にして思えば。
……さて、GEAr様はどう思われているかしら。
「……あらあらうふふ、そう言えばそうねマイカーさん。私としたことが。」
……ほっ!
ああ怖かったあ〜……
何とかGEAr様は、矛を収めてくださった……
「……で、あればGEAr様! どうか」
「あらあらうふふ、ええ元より。私はあなたを信頼しているわ、マイカーさん……」
「……ありがとうございます、GEAr様!」
何とか、丸く収まったわ……
◆◇
「……私としたことが、つい口にまで出ていたわ。gearntちゃんたちのこと。」
後で知ったけれど、その頃。
GEAr様は一人、物思いに浸っていらっしゃったわ。
――gearntちゃんたちはもう、奈落にいます!
「あなたにしては中々踏み込んだことを聞いて来るじゃない、マイカーさん……でもね。私のgearntちゃんたちはまだ、やれるのよ……!」
ご、ごめんなさいGEAr様!
私、自分でも思っていたんですけど何て大胆なことを……
ん?
え、まだやれる?
それはどういうことなんですか?
「やあやあGEArちゃん! 君から呼び出すなんて珍しいねえ。」
「……あらあらうふふ(棒読み)、よく来てくれたわ……」
な!?
な、何でですかGEAr様!
何で暗黒械神tartaronが、こんな所に!
◆◇
「さあて……よし! 何とかして、この国の秘密を探らないと!」
「何だよ、やけに張り切ってるじゃねえかマイカー!」
次の日。
私はまた、アキノソーラー国を訪れていたわ。
そうしてまた、広場に張り込み。
カップルたちを、注視していた。
「ごめんなさい……私と別れて。」
「な! な、何故だ!」
……あらあら。
また、カップルが一つ別れた。
まあ男性の方が、納得いかないみたいだけど。
すぐ、納得するでしょ。
そう、昨日みたいに――
「な、何でだどうしてだ何故だ! わ、私と別れるなんて! 私は言っただろう、神だと! 私の何がいけないんだ!」
「や、止めてよ! そ、そういう所が特に嫌なの! 神とか、馬鹿じゃないの!」
……んん?
え、嘘。
昨日とは打って変わって、男はいつまでも未練たらたら。
あれ、おっかしいわね。
こういう時、昨日だったら何故か(いや恐らく理由は魔械によるものだけど)男もあっさり身を引くものだったのに。
「止めてよ! だ、誰か来て! け、憲兵さん!」
「な! く……しまった、目立ってしまうとはな!」
あらあら。
男は女性の方からそう言われると、とっとと走り去ってしまった。
何だったのかしらあれ……
「ん!? シャー! ……お、おいマイカー! 早く行くぞ!」
「え? な、何? も、もしかして!」
と、私が呆けていると。
バッグ形態のpystonが何か嗅ぎつけたみたいで、私をバッグ形態のままグイグイ引っ張る!
もしかして、あの男が何かこの国の秘密を握っているの?
◆◇
「ふう……まったくあの女、人を呼ぶとは焦るではないか!」
「いや、今も焦った方がいいかもだぜ?」
「!? この声は……ぐっ!」
そうして男は、裏路地に逃げ込んだけど。
そこへ私を乗せた、ドラゴン形態のpystonが天から降って来た!
まあ男は素早い身のこなしで、避けたけどね!
「お前……匂いがする! さあ、正体を現せ!」
……え?
し、正体?
何言ってんの、pyston。
「……いいのか? ここで私が正体を現せば、私の灼熱にその娘――人間であるその娘が、焼き尽くされることになるが?」
……は?
な、何言ってんのこいつ?
さっきの自分は神だ発言といい、こいつ厨二病?
「ああ大丈夫だよ、こいつには母上の加護があるからなあ……ほら早くツラ見せろ!」
「! お祖母様の、だと?」
……は?
いや、ますます訳わからないわ!
ぎ、GEAr様にあんたみたいな孫がいた覚えないっつーの!
……って私は思ってたけど、今にして思えば私は気づくべきだったわ。
「分かった……さあ、見るがよい!」
「……む!? な、あなたは……!?」
……そう、その人は。
神々の頂点に君臨する雷神、ZeusExMachina様だった!
そうして今ZeusExMachina様の持つ燃え盛る雷の灼熱が、私に吹きつけて来ている!