#11 機母神の説得
「い、いや……な、何これは!?」
gearntの一人を前に。
神託所に残されていたカサンダ巫女猊下とやらは、恐怖に怯えていた。
まあ無理もないわ。
(自分でやっといてこう言うのも何だけど)偽機母神魔械に縛られて動けないカサンダ以下偽機母神教の奴らは、今はこうするしかなかったんだから。
いえ、さっきまではこうするしかなかった。
「……偽機母神魔械! 偽機母神教の奴らを抱えて全力ダッシュ!」
「な……ぐっ!」
もう今は、そうしなくてよし!
私が、来たからね!
間一髪。
私の叫びを受けた偽機母神魔械の偶像は、偽機母神教の奴らを拘束も保ったままgearntの一人から逃れた!
◆◇
「あ、あなた……どういうつもりよ!」
「そ、そうだぞ……我らが憎くないのか!」
あらあら、助けてもらって開口一番はお礼じゃなくて探り?
「ええ、まあ憎いけど! あんたたちには生き地獄を味わせるつもりだからまだ死ぬべきじゃないのよ!」
「な……貴様!」
私がそう言うと、あら腹黒司祭さん。
私に、食ってかかって来た。
「止めなさいクローム……マイカー・エンデバー、まさかあなたは本当に」
「ええ、私は機母神様の技師です!」
「……そんな……」
いやいやカサンダさん、何、そんなって?
私、何度も言いましたけど?
「……まあ、あなたたちなんかとここで油を売る暇はありません! 早く、行かないと。」
そう。
私はさっさと、行かないと。
GEAr様の御許へ――
◆◇
――あらあらうふふ。さあ私の可愛いgearntちゃん、その調子よ……その調子で、人間たちを滅ぼしなさい!
「GEAr様!」
そのまま私は、走っている。
GEAr様の声が今脳内に響いていて、私はならばとこちらから呼びかけているけれど。
……駄目ね、全然。
これはどうやら、私からは声を届けることができないみたい!
「くっ、だったら……!」
私は走りながら、天を仰いだ。
その目の先には、gearntの一人が。
◆◇
「聞こえるかしら、gearntちゃん! さあ、あなたたちのお母様に繋いでくれないかしら?」
私は尚も走りながら。
……傍から見れば、間抜けな絵面とは知りつつも。
のっそりと、でも力強く大地を踏み躙るgearntの一体に必死に呼びかけていた。
「……まあ無理よね。なら……飛び移らせてもらうわ!」
だけど、やっぱりと言うべきかgearntは私を無視した。
だから、私は思いっきりgearntに飛びかかる!
「えい! ……ったく、やっと捕まえたぞマイカー!」
「ん!? な……pystonちゃん!」
と、そこへ。
pystonがやって来て、私をその舌で捕らえた!
「ど、どうしてここに?」
「そりゃこっちの台詞だ! ったく、てめえ分かってんだろ? お前に何かあったら俺は母上にどやされんだぞ! 知ってての嫌がらせか? まったく」
あー、相変わらずのネチネチタイム発動だわ!
まったく……
ん、ちょっと待った!
「……待って。スマラちゃん親子やグラシャスさんに、(癪だけど)ブラック勇者パーティーはどこに!?」
「ああ安心しろ、母上の許にいるからよ! あそこなら安全だからな、まあ……お前はどうしたってどやされたからこうして来てやったんだけどな! まったく、少しは人の迷惑も」
……よ、よかった!
まあ、相変わらずのねちっこタイムだけど。
……まあともかく。
「ともかく! ……魔械カバー、オープン!」
「な!? お、おい……モガモガ!」
私はいつも通りというべきか、pystonを魔械に改造した!
◆◇
――あらあらうふふ。gearntちゃんたち、さあそこよ! 行きなさい!
GEAr様の上機嫌な声が響いている。
だけど……ごめんなさいGEAr様!
「拘束魔械、発動! さあ止まりなさい、gearntちゃん!」
この悪夢には、さっさと止まってもらいたいの!
私は銃型の魔械に改造したpystonから、網を射出して。
gearntの一体の足を拘束して、転倒させた!
――……マイカーさん。
よし!
GEAr様が、こちらに気づいてくださった!
「GEAr様……私ショックです。私があの偽機母神教を一人で何とかしますと言ったこと、信じてくださらなかったんですか!?」
私は――GEAr様に対しては不適切な態度ですごめんなさい! だけど。――食ってかかるようにGEAr様にそう言った。
――あらあらうふふ。……pystonから聞いてなかったのかしら? 私は元々、この人類ではこの先世界は保たないと思っていたの。
「ええ、分かっています……」
――そう。ならお願い、このままgearntちゃんたちの好きにさせて。
「でも! それとこれとは別です。如何にGEAr様がそう望まれても、今回ばかりは私はただ見てはいられません!」
私は、これまた不適切だとは思ったけど。
GEAr様に、半ば歯向かう!
「もが……おいいい加減にしろお前! 母上のお気に入りだからって好き勝手言ってんじゃねえぞ! だいたいてめえは」
……あんたはちょっと黙っててpyston!
でも、その時だった。
バリバリ!
――!? な、何事! ……な、わ、私の可愛いgearntちゃんたちがああ!
「え……か、雷が!?」
「な……お、おいマイカー! てめえ、いくら何でもやり過ぎだぞ!」
突如として、空から無数の落雷があって。
それらがgearntたちに命中し、次々と倒れさせている!
いやいや、でも私じゃないわよ?
そう、言おうとしたけど。
「申し訳ございませんが……神々の王たる私に断りなくこのようなことをなさるなど、困りますな!」
――あら……
……え!?
な、何か空から、誰か神々しい人が降りて来た!
◆◇
――ああら……これはこれはZeusExMachina。
……え!?
か、神々の王たる絶対神ZeusExMachina様が!?
「ご無沙汰しておりますお祖母様……ご機嫌麗しく。」
え……お、お祖母様!?
私は更に、混乱するばかり。
いやいや、そもそもGEAr様に。
あんな若々しくて綺麗な人……いや女神様に子供がいたこと自体驚きだけど!
ま、孫!?
こ、こんなダンディな男性――ZeusExMachina様が?
――我が孫ZeusExMachina……私の可愛いgearntちゃんたちをどうするつもり?
「ええ、恐れながら……地底の暗黒械tartaronへと幽閉させていただく所存にございます!」
……え??
わ、私が混乱する間にも。
話が、どんどん進んで行ってる――