4歳 厨房
「「「 ただいまー 」」」 家に帰り、厨房へ。
「パエリアとカップケーキ凄く美味しかったよ~」
と言って、リュックからアルミの弁当箱やサラダの入ってた容器とかを出して置く。
「喜んで頂けて嬉しいです。あ…またキレイに濯いである。坊ちゃま達、洗って頂かなくても汚れたままで大丈夫ですよ…あれ? お3人共、カップケーキを入れた容器が見当たらないようなんですが…」
使用人のジークが本当に嬉しそうな顔をした後、遠慮がちに言うてきた。
しもたーー! 食器乾燥機の中や!
「こ、公園の水飲み場で濯いだあと、乾かしてて…忘れてきちゃった。ごめんなさい」
兄様が頭を下げた。
「「 ごめんなさい 」」
私とエリーも頭を下げる。
「あっ、そんな、頭を上げてください! 後で回収してきますよ。どちらの公園ですか?」
「…人の目に着かない所に干してきたから、明日、自分達で回収してきます!」
兄様が有無を言わせない勢いで敬礼しながら言う。
「「 ます! 」」
エリーと私も追随。ビシッと敬礼。
そして、すぐに回れ右して、子供部屋へ退散した。
…今日は、忘れ物だらけやったな…2人より先に私が色々忘れてしまわへんか……心配や………ZZZ。
家着に着替えると、そのまま夕飯までベッドで寝落ちる3人。
その後も、寝ぼけ眼で、時々 意識無くしながらご飯食べて、お風呂入って、すぐにベッドに入って夢の世界へGO!
すぴー、すぴー、すぴー。
ぷぅ~。
◇◇
「フフッ、またメアリーね。年頃までに治るといいのだけれど」
「そうですね~。布団を被ってるのに外に聞こえるって結構な音量ですし…好きな人が出来る前に治るといいですね」
「うちの人なんかは、この可愛さが分からない奴にメアリーはやらない、って言ってるけど…女心としては…やっぱりねぇ。…それで、ダリア…この子達の遊び場所については?」
「申し訳ございません。今日もダメだったみたいです。ご近所の木を切ってもらって生垣と生垣の間の死角をなくすか、修行中の子ではなく影を使うか、それぐらいしないと無理じゃないかとチヨネが言ってました。やはり…ちゃんと護衛を付けた方がいいと思います」
「護衛…ね。う~ん、あの人とも相談したことはあるんだけど…ウチがお飾りの貴族で貧乏だっていうのは周知の事実だし、2人とも頭も運動神経も悪くはないから大丈夫だろ。って結論になったのよね~。それに…いざとなったら、あなた達 影がいてくれるから、安心なのよ」
「何を呑気なこと仰ってるんですか。頭も運動神経も悪くないんじゃくて、すこぶる良いんですよ。お2人は勿論のこと、エリーの運動能力も高くなってきて、行動範囲が普通の幼児に比べて広くなっていると思いますから、この辺りの治安の良い地域を出て…街へ行ったり山に侵入する可能性があります。
運動能力が高いうえに小回りも利くので…影でも油断すると手こずりそうですから、正式な護衛を付けることを考えた方が良いと思います。お2人とも優しいですからね。途中で撒いたりなんて、護衛の面子を潰すような行動はなさらないでしょう」
「う~ん、街に行くときに変装する理由も理解してるから大丈夫だとは思うのだけど…行動範囲が広くなったのであれば仕方ないわね。何かあった時、影も捜索する範囲が広いと大変だものね。…護衛の方、この子達の行動の抑制のためだけに付いてもらうのだから、一般の方を雇えばいいかしら?」
「そうですね。影を付けたら…競争心を煽られて撒きにかかられるかもしれません。一般の方を雇う方が無茶をなされないと思います」
「それは…大いにあり得るわね。う~ん、修行までの10日間ほどの短期バイト、うち土日は休みで実質労働8日ほど…その為に募集してきた人の身元調査を影にしてもらわないといけなくなるのよね…しかも半年に1回…」
「影のことは気にしないでください。役所に勤めてるんですから、ある程度の情報は即入手できますし、そこで、絞り込んで、確認するだけですから」
「確認だけって、簡単に言うけど…忍び込んだり、張り込んだり、周辺での聞き込みもしたりするんだから大変じゃない。ちょっと割に合わないわね。…この子達の居所が把握できればいいんだから……そうね、いいことを思いついたわ。明日からは無理だけど、来週の月曜日から金曜日まで行けるように手配をしてもらえるかしら」
「どちらにですか?」
「孤児院よ」
◇◇
朝、朝食後、身支度を整えて厨房へ向かう。
よし! 今日は、いっぱい狩るで~~。
リュックを持った幼児3人が厨房に現れると、食器洗い中の使用人2人が目を見開いた。
「あれ? 坊ちゃん達、今日も外出だったか?! やべぇ、何も用意してねぇぞ!」
リヨンの言葉に、幼児3人が口を開けた。
「「「 あ 」」」
お弁当を頼むのを忘れていたこと発覚。
「すみません! すぐに何か用意します!」
ジークが濯ぎ中の鍋を置いて、手を拭きながら言う。
「いや、ジークが謝ることじゃないよ。僕達が言い忘れてたんだ…」
兄様が申し訳なさそうに言うと、
「いえ、私が昨日ちゃんと確認するべきでした。プーマさんのベビーシッターが無い平日は、いつもリクエストされるのに…そんなことにも気付かず…いつも仰っていただけるので、それに甘えてました。 職務怠慢でした!」
ジークが頭を下げてきた!
「ええぇぇ~! ジーク頭を上げてよ! ジークはいつもちゃんとやってくれてるよ」
兄様が慌てて言う。
「いえ、これは本当に私の怠慢です…」
ジークが頭を上げそうにないので、
「今回は両者とも悪かったと言うことで! ね! で、今後は、1ヶ月分の予定とリクエストを事前に紙に書いて渡すようにするね」
痛み分けにして、今後の対策を提案。
「坊ちゃん、嬢ちゃん、2人とも甘すぎる。これは、こっちの落ち度だ。謝罪を受け入れろ。それから、1ヶ月分の予定表も不要だ。そんな手間はかけさせねぇ。これからは毎朝、朝食後に翌日の予定の確認させてもらう。それ以降に変更があればその都度伝えてくれればいい」
リヨンが言うてくれるけど、
「でも、予定表があった方が食料の仕入れの無駄も無くなるし、わざわざ毎日確認しなくて済むよ」
仕事の段取りも組みやすいやろ。と思って言うた。
「無駄? そんなもの今まで発生させたことはないぞ。賄いついでに新メニューの研究させてもらってるからな。
しかも、今は、朝と夜のメニュー、イワン先生のチェックが必要になったから予定を1週間ごとに立ててて…かなり計画的になって……面白くないんだよ! 旬の安い食材 大量購入! 見慣れない食材! 急な来客! メニューの変更! アクシデントが発生した時こそ、真の実力が試されるってもんだ! 前日に出されるリクエスト? 当日に変更? 上等! かかってこいやー!…てなもんだ。それとも何か? 嬢ちゃんは毎日俺達に話しかけられるのは嫌なのか?」
リヨン、飄々としたタイプやと思ってたんやけど…中身、熱い男やった。
「リヨンとジークみたいな素敵な殿方に毎日 声を掛けて頂けるなんて、ワタクシ嬉しくて、お花畑でルンルンな気分ですわ」
「…嬢ちゃん。最後の一言は要らないな…馬鹿にされた気分になる。でもまぁ、小さいうちは可愛いくていいか…。じゃ、そういう事で、今から準備するからリュックをそこに置いて、部屋で待ってろ」
厨房を追い出された。
「…リヨンは謝ってなかったよね」
部屋に戻りながら兄様が言った。
ホンマや!! 上司なら一緒に謝らんと!




