表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/600

2歳 アスレチック

 


 12月下旬から1月上旬。お父様が再び帰ってきて、誕生祭と迎春に浮かれた。


 12月の誕生祭。魔道具の飾りがキラキラピカピカ光り、それが雪景色に反射して、キラキラが更に倍!

 むっちゃ綺麗で、兄様の目ぇもキラキラ。私の目ぇもそうなってたハズや!

 我が家だけやない。街中も同じようにキラキラピカピカで、丘の上にある我が家は夜になると眼下の景色も楽しめた。


 1月の迎春時には花火があがった。綺麗やったけど、領主家的に事故が無く無事に楽しんでもらえたことが何より良かった。


 雪が積もってるということでぇ~、雪合戦に雪だるま! かまくらも作った……いや、作ってもらった!


 そして、お父様が王都に戻る日 ── お父様がごねてクロイが無理矢理連れて行く ──

 前回同様、玄関前でそんな光景が繰り広げられた。

 (なん)か……恒例行事になりそうやな。


 そうして2月を迎え、私は2歳になった。お父様から多分ホンマに涙で字が滲んだ手紙とプレゼントが届いた。

 3月には兄様が3歳に。お父様から ── 同上 ── 。



 4月。最近、でんぐり返りや転ぶ回数が減ってきた! ジャンプもできまっせ~。


 ということでぇ~~、行動範囲を広げることにしましたあ~。


 朝の散歩。いつもは家の庭や裏口なんかを異常がないかチェックしながら歩いてるんやけど……以前から少々気になっている案件があったので実行することに。


 サササッ ── 素早い動きで裏門から敷地の外へ出て塀の外側へ廻り、目的地へ。


「ねぇ、きみ、ここでなにしてるの? なまえは?じゅうしょは? なにか、みぶんしょうめいできるものもってる?」


 兄様がいつも我が家を覗いてる少年を見上げ、職務質問!

 上手いぞ兄様! 滑舌もバッチリ! 練習した甲斐あるわ〜。


「…………」


 質問には答えず、黙ったまま立ち尽くす無言の少年。


 ふむ。やっぱり何か後ろめたいコトがあるんやな。


 よし! と気合いを入れ、後ろから、そぉ~っと近づく。


 そして ──


「ぅおりゃっ!」


 と、事前にチェックしといたウエストがゴムのズボンを引きずり下ろした。


 よっしゃ! これで逃げられへんやろ! と思ったのも束の間 ──


 えっ?! 嘘やん! 


 ズボンを下ろして現れたのは……何と、ふんどし!!

 Tバックのぷりぷりおいど(お尻)を見てしまったあ!

 と言うか……ふんどしの上にズボン履いて、トイレの時 大変やないのかな?


「…………」


 こんなことされたのに、ずっと無言の少年。


 慌ててズボンを上げるんかと思ったら、無言のまま真っ赤になって(後で兄様から聞いた)、ズボンを置いたままダッシュして逃げはった。


 お~い。このズボンど~すんの~?

 証拠を置いて逃亡したらアカンやろ。


「さくせんしっぱい。にげられちゃったね」


 抜け殻のズボンを眺めながら残念そうに話し掛けてくる兄様。


 こっちは幼児で、向こうは小学校中学年ぐらいの少年やから、ずらされたズボンを上げようとしゃがんだところを2人で取り押さえるつもりやってんな。


「とりあえじゅ、まちにょこどもではないにぇ」


 無言少年が走り去った(ほう)を見て(つぶや)く。

 街とは逆の、山の方へ逃げて行かはってんな。


 と言うか……ふんどし……。むっちゃ気になるんやけど。


「にいたま、おひるまでじかんあるから、いってみよ」


 意を決して、山の方へ行ってみることにする。まだ1回も行ったことないねんな~。


 あ、そや。このズボンも持って行こう。貴重な手掛かりや。


「うん、でも、ふかおいはしないからね。メアリーきをつけてよ」

 了承した兄様がお兄ちゃんらしく注意してくるから、

「うん」

 って、妹らしく(うなず)いて歩き出すと、

「それもつよ」

 ズルズルと引き摺ってたズボンを持ってくれた。


 おぉ〜、3歳にしてジェントルマンやん!


 てくてく、トコトコ ── 幼児2人で、いろは坂のようにくねくねした(ゆる)やかな坂道を登る。


 1本道やから迷うことはないし安心や。


「…ぅひゃっ!」


 油断してたら、ズルッと降り積もった桜の花びらで滑りそうになった。


「メアリーだいじょうぶ?」

 心配してくれる兄様。

「だいじょ〜ぶ」

 笑顔で答えると、

「て」

 って言うて、手を差し出してくる。

「ありがと〜」

 言うて手を繋ぐと少し前を歩いて、引っ張ってくれた。ほんま優しいお兄ちゃんや。


 と言うか……家に桜の樹ぃないのに花びらだけ降ってくるから、何処(どこ)にあるんやろうって気になってたんやけど、この先にありそうやな。


 ちょっと楽しみ! とか思いながら、しばらく歩いていくと、パァーーーっと開けた場所に出た。


「ええっ!」


 なんと! そこには茅葺屋根が!

 桜の樹もいっぱいあるし、竹林もある! 田んぼと畑もあって鶏が飛びそうな勢いで走り回ってて……

 あっ! 鴨が小屋で飼われてる! 何やこれ! 日本の昔懐かしな田舎やん!!


 そして ── んんっ? あ、あれはっ!!


『アスレチック!』


 思わず日本語で言うた。っていうか、こっちで何て言うのか知らんわ。


 ツッコミながら木でできた遊具らしきモノに向かって走り出す。

 ほんまにそうか? 確認するためや。


「メアリー、どうしたの?」


 兄様も慌てて付いてくる。


 近づくと土のグランドと芝生や池の上にアスレチック遊具があった。


 背が低いから、上にはみ出た部分しか見えへんかってんな。

 ちゅ~か……重いコンダーラもある。ホンマにグランドや。


 うずうず。

 我慢できずに縄で作られたネットまで走って、よじよじとよじ登ると、


「メアリー、あぶない!」


 兄様が下から注意してきた。

 こういう遊び道具は家にないからな。


たにょしいよ(楽しいよ)。いっしょににょぼろ(登ろ)


 せっかくの機会なのでお誘いしたのだが……その手には、無言少年のズボンが!


 手掛かりになるもんやし、ほっとくワケにはいかへんよな……。どうしよ……。


 よし!


 ちょっと考えて、兄様の背中側の服の下に入れることにした。

 これやったら、もし落っこちた時にもクッション代わりになる。……と思う。


 普段からあちこちよじ登ったり、ぶら下がったり、飛び降りたり、花壇の端を平均台みたいに落ちひんように歩いたりと ── 結構2人とも運動神経いいからな。大丈夫やろ。


 言うてもまだ頭重いから、気を付けて登る。楽しい~。

 大人になってからは遊びたくても遊べへんかったしな。

 周りの目もあるし……公園のブランコに至っては、大人が乗ったら重さで壊れるんちゃうか?! って、ちょっと不安で乗れへんようになった。


 よじよじ。上まで登ると、アスレチック場の全貌が見えた。


 丸太を色んな高さに埋めたエリア。電柱みたいに足場のある背の高い丸太。いくつかの丸太をロープで吊下げて吊り橋みたいなってる遊具。新体操の吊り輪みたいなやつに、ターザンごっこのロープ。幅の広い滑り台(半分はロープが垂れ下げてあってロープを使ってよじ登れるようになってる)。ネットのトランポリンもある! ロッククライミングも。

 それに……池の上をロープを掴んでぶら下がって滑空するやつ……ジップラインやっけ? それもある!!


 それぞれ、低めのもんから凄く高いのもあって、大人でも充分楽しめそ~や!

 徒歩圏内にこんなとこがあるって最高やん!


 あ……お金いるんかな? いるよな……。メンテせなアカンやろうし、老朽化したら買い直しもせなアカンもんな。

 でも……入口に料金所無かったし……。今日は知らんかったってことで、ツケにしてもらお。



 そうと決まれば ──


「にいしゃま、こんどはあにょ網にょところにいこ」


 にこっと笑って目的の場所を指差し、木製の幅が広い滑り台を寝っ転がってシャーっと下りる。

 座って滑ったら、でんぐり返りしながら下りることになりそうやしな。


 そうして辿り着いたネットのトランポリン。

 2人でキャッキャッ言いながら、ボヨ~ン、ボヨ~ンって跳ねたり転がったり。


 兄様、跳ねすぎ~!

 私も跳ねようと立ち上がろうとするけど、立ち上がる前に転んで、そのままボヨ~ン、ボヨ~ン。

 

 うひゃひゃ、楽しいぃぃ~。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ