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7歳 【影の道】の予備知識


すみません! むっちゃ間 空いてしまいました!



 ズザザザザァーーー……と、山小屋から直線コースを横滑りで滑降。


 緑の結界まで下りてきたので、他に人がいいひんか確認しながら【聖女様の通り道】の方へ移動し、幅2mほどの大きな樹──に見える【影の道の入口】前に到着。


 きょろきょろ、背の高いリュージが周囲を確認してくれてるので、私はチョンと樹の幹にしか見えへんの柔らかいシールドに指先をつけ、すぐに呪文を唱えられるようスタンバイ。


『おし、大丈夫や』

『おっけ~。〝料金所〟』


 言うてる()に小さい声でゴーサインが出たので、同じく小声で呪文を唱えると、指先がフッ……と幹の中へ消えていった。


 そう……この、元・日本人にはむっちゃわかりやすい内緒の呪文は、シールドを解除する呪文やのに、(まぼろし)の景色はそのままなのである!


 一体、どういう仕組み?!


 その答えは……例によって例のごとく、元陛下が書いた日記【聖女列伝】に記載されていた!


 以下、『聖女列伝=マリアに意地悪をされた!=』編より、【影の道】についての予備知識を抜粋。

 

◇◇


 マリアと私の私兵【影】と共に王都とキーモンを結ぶ巨大な隠し通路【影の道】を完成させた翌日。


 僕は、国王である弟に完成の報告と今後の管理体制を相談するために、【影】の代表〝スキア〟と共にマリアが運転する雲のような乗り物の荷台に乗り、その通路の中を飛行しながら城へと向かった。


 そう! 僕はあの(ちゅう)に浮く乗り物に乗ったのだ!


 これまで何度頼んでも乗せてくれなかったのに……


「僕とスキアは馬での移動だから、君も念のため途中の休憩所で一泊できるよう準備を整えておいてくれ」


 前日の夜、里で行なわれた打ち上げパーティーの帰りにそう言うと、 


「え? 私は往復3時間で行き来できるのに、何であなたと一つ屋根の下で雑魚寝(ざこね)しなくちゃならないのよ」


 まるでゴミを見るような目で僕を見ながら、ちょっとドキドキすることを言って、初めて乗せてもらえることになった。


 女であるスキアを思ってのことだろうが、「私はスキアを乗せて翌日に行くから、あなただけ先に行って待ってなさいよ」なんて意地悪なことを言わないあたり優しいんだよな……と、何だか温かな気持ちで就寝。


 翌朝、ウキウキしながら集合場所である【影の道】の入口へ行ったら、そこには誰もおらず、〝あっ! そうか! 雲の乗り物は秘密の魔道具だから中で待ってるのか!〟と、張り切ってカムフラージュの大樹の中へ進もうとしたら、足に何か柔らかいモノが当たってポヨンと押し戻された。


 え……まさか……入ってすぐの所に停めたのか? しかも、左側に?!

 歩いていたから良かったものの、馬に乗っていたら大惨事になるところだぞ!


 下手をすると命を落としかねなかった状態に、〝いやいや、有り得ないだろう……〟と呆れながら首を振る。

 

 全長90㎞強と、基本、馬で行き来するこの道は、左寄り通行である。

 馬を()いたり乗り降りするのが左側なので乗降時に接触事故を起こしたり進行の妨げにならないよう、(みんな)でそうすることに決めた。

 そして、馬が乗り上げないようにと道の両端に設置することにした動く歩道の【ベルトコンベアー】も、キーモンから王都へ、王都からキーモンへと、それぞれの進行方向へ向かって左端を流れるように並べた。


 流されている時に後ろから馬が駆けてくるのでちょっと怖いが……走っている馬が壁際へ寄って来ることはないし、走ってくるのが見えるようにと逆向きに設置すると、〝しまった! 馬から降りる時にうっかり【ベルトコンベアー】の上に着地してしまったあぁぁぁぁ!〟となった時、足元が動いていることに驚いて手綱を強く引っ張ってしまったり、そのまま進行方向とは逆の(ほう)へ流されると、手綱を後ろへ引っ張ってしまうことになるので、馬が驚いたり混乱して暴れる可能性があるから、この(ほう)が安全なのである。


 そして、山に隠し通路があるのがバレないよう()えて【()の道】と、まるで暗い地下にあるような名前にした道の入口は、馬が壁に当たったりしないよう幅2mと、馬が2頭ぎりぎりすれ違える幅しかないし、〝中からは外が見えるが、外からは中が見えない〟という、まるで要塞のような造りになっているので──


 1.馬がビックリするから出入口には何も置かない!

 2.出る時は一旦停止し、入ってくる馬があれば例え王家の者であっても、ぶつからないよう道端に()けること!

 3.入る時は後から入ってくる馬のこと考え、広い道の本線へ出るまで、立ち止まらずに進むこと!


 ──と、馬のためにとても厳しいルールを設けてあるのだ!


 それなのに……何で、よりによって左側に置いてるんだよ! 入る者はそれを信じて入るしかないんだぞ!


「おい! 何でそんな所に停めたんだ! いくら柔らかいとはいえ危ないだろ! すぐ奥へ移動させろ!」


 ………………。


 あれ? 誰か来た時のために、外で待機しながら指示を出したのだが……待てど暮らせど任務完了の返事が聞こえてこない。


 あっ! もしかして……「工事が終わったから誰も入らないし、どうせなら目立たない夜のうちに停めちゃお!」とか言って昨日のうちに停めて、まだ来てないのかも……。


 仕方がない……。事故が起こる前に僕が移動させるか……と、右側から入ろうとしたら、そちらでもぽよんと柔らかいモノに押し戻された。


 おいおい……まさか、縦向きじゃなく、横向きに停めたのか!?


 〝有り得ないだろ!〟 と、頭を沸騰させながら、中を覗こうとしたら、なんとそこでもボヨンと押し戻された!


 はあ? おかしいだろ! あの乗り物にそこまでの高さはなかったぞ!


 と言うコトは……これ、壁か?! 入口に雲の乗り物を置いているじゃなくて、〝こんな所、誰も来ないと思うけど……山菜を採りにくる可能性もあるし、念のため……〟と言って、何も知らずにやってきた者がケガをしないよう()えて柔らかくした【トンネル】の壁なのか?!


「おいおい、入口の場所を変えたなんて、そんな話、聞いてないぞ!」


 今日は遊びじゃなくて仕事なのに! こんな意地悪をするなんて(ひど)すぎる!


 腹立ち(まぎ)れに拳を打ちつけたら、ボヨンという感触とともに「違うわよ」と樹の中からマリアの声が聞こえてきた。


 はあ?! なんだいるのかよ! と、心の中で驚きながら怒っていたら、


「これまでは工事をしていたから自由に出入りできるようにしていただけで、本来、この道は〝隠し通路〟兼〝敵襲に備えての避難通路〟なんだから、その用途に(たが)わぬよう、合言葉を唱えないと入れないようにしたのよ」


 得意気な顔をしたマリアが事情を説明しながら、僕を()けるようにして樹の中から現れ、


「おはよう、ミュージ。朝から元気そうで何よりだわ」


 不貞腐(ふてくさ)れている僕を見ながら、ニコニコと楽しそうに朝の挨拶をしてきた。


 きっと中で、あたふたする僕を見て楽しんでいたのだろう。

 むちゃくちゃ恥ずかしいし腹も立つが、優しかったマリアをこんな意地悪な女にしたのは僕なので、他の者に迷惑が掛からない限り甘んじて受け入れるしかないのである。


「おはよう、マリア。通れなかった理由はわかったが……それならそれで、前以(まえも)って言っておいてくれ。びっくりするじゃないか」


「ちゃんと安全にできたか確認したかったのよ。あっ! もちろん【影】には報告済みよ」


 遠回しに 厭味(いやみ)を言うと、意地悪ではなく、実験のために黙っていたのだと言ってきた。


 いやいや……何で王兄の僕で試すんだ! 逆だろ逆!


 ──と、思いっきり怒鳴りつけたいところだが……領民の安全にも関わることなので、どういうモノなのかを確認せねば! と、すぐに気持ちを切り替えることにした。


「〝合言葉〟ということは、君の家に入る時のような突起物の付いた板の魔道具を新たに設置したということか?」


 まずは魔道具の位置だ。大丈夫だとは思うが、簡単に壊されたり、何かの拍子に移動してしまうような所だと意味がないからな。


「魔道具は玄関マットで、怪しまれないよう(なか)に置いたわ。出入口ぎりぎりの所に動かないよう固定して樹の幹の映像部分に透明の壁が現れるようにしたの」


 きょろきょろと〝ヒラケゴマ〟とよく分からない言葉を唱えないといけない突起物の付いた板を探していたら、【トンネル】の魔道具同様、外には置いていないと言ってきた。


「えっ……(なか)って……じゃあ、どうやって中に入るんだ?! 立って合言葉を言うだけでいいのか?!」


「いいえ。できればそうしたかったんだけど……さすがにそれは難しかったから、どこでもいいからこの壁……というより、この樹の幹に触れて合言葉を言えばいいようにしたわ。それで、30秒間は通れるようにしたし、その後は自動的に通れなくなるようにしたから、その間に通り抜けて、その後は何もせずそのまま奥へ進めばいいわ。それと、馬はこれまで通り自由に出入りできるようにしてあるから、ぶつかる前にちゃんと馬を停止させることができるのであれば、馬に乗ったまま入ることも可能よ」


 びっくりしながら入り(かた)を訊くと、柔らかい壁をぺんぺん叩きながら、馬には優しい仕様になっていると教えてくれた。


 そして──


「領民の(みんな)に避難してもらう時とか、長時間通過できる状態にしたい時は、誰かが玄関マットの上で〝通れるようにして〟と合言葉を言って、そのままマットの上に立っていればその間は通れるようにしたから、慌てて入る必要はないし、逆にすぐにでも通れなくしたい時は玄関マットの上で〝通れなくして〟と言えば、その瞬間、玄関マットの上に触れていない者は通れなくなるわ。あと、出る時は馬と同じ様に人間もそのまま通り抜けられるようにしたから、合言葉を知らなくても外へ出られるし、敵を締め出したまま【影】だけが外へ出て戦うことも可能よ」


 しっかり領民のことを考えた仕様になっていると教えてくれた。


 ふむ。「通れなくてしてよ!」や「通れなくしてくれ!」でもいけるから、老若男女問わず発動できるし、通れるようにする時の合言葉も「ずっと通れるようにして!」とか「(みんな)の避難が終わるまで通れるようにして!」と思わず(くち)について出そうな言葉にしてあるから、パニックになってもちゃんと使えるな。


「あっ! あと、知らずに解除されると困るから解除の呪文は〝ジュゲム〟という物語に出てくるとても長くて複雑な名前のモノにしたし、万が一、解除されるようなことがあっても、発動するための呪文は〝通れなくして〟と、さっき言った通れなくする時の合言葉と一緒だから、もし呪文を忘れても大丈夫よ」


 ふむふむと(うなず)いていたら、聞いたことがない単語を(くち)にしながら、未来永劫使えそうなことを言ってきた。


 さすが聖女マリアだ!──と、うむうむと(うなず)いていたら、


「じゃ、王家の用事でこの道を使う時は、ミュージが1万マネ払ってね。入る時の合言葉は〝リョーキンジョ〟よ。【影】には〝もし、払わないようだったら私に言ってね〟って伝えてあるから、忘れないようにした(ほう)が身のためよ」


 と、聞いたことがない言葉を言いながら、金銭を要求された!


「いやいや、隠し通路だから、合言葉はそれでいいが、なんで王兄である僕がお金を払わないといけないんだよ!」


「え? だって、この道を造ったのは魔法使いである私だけど、私は国のために魔法を使うのを()めたから国から魔法使い手当てを貰ってないし、かと言って(おお)っぴらに請求すると隠し通路の存在がバレちゃうでしょ? だから、あなたのお小遣いから払ってもらうことにしたの」


「くっ!」


 そのしっかりさ、さすが聖女マリアだ!


「今日は言ってなかったし、帰ってから払ってくれればいいわ。じゃ、早速、壁に触って合言葉をどうぞ」


 僕はお金を持ち歩いていないので取りに戻ろうとしたら、それに気付いたマリアが後払いでいいと、ちょっと優しいことを言ってくれた。


「リョーキンジョ」


 ありがとうと礼を言い、早速、教えてもらったばかりの合言葉を唱えて足を入れると、昨日までと同じように何の抵抗もなく通り抜け、ふわっ……と、昨日までとは明らかに違う地面に着地。


「え? これが玄関マット?!」


 僕が想像していたのは入口の幅に合わせた、幅2m・奥行き1mほどの大きなラグのようなモノだったのだが……今、足元にあるのは、青々とした芝生──のように見える、何か緑色の柔らかい突起物が生えたモノで、それがトンネルの内部の幅3m・奥行きは僕が想像した1mほどに敷き詰められていた──って……違うな。所々(ところどころ)白くなっている部分もある。


「出る時にちゃんと気を付けるよう、こっちから見ると〝止まれ〟って書いてあるのよ」


 何でそこだけ? と首を(かし)げていたら、先に進んでいたマリアが振り返り、その白い部分は反対方向から見ると字になっていると教えてくれた。


「それから、全体を緑にしたのも、馬がここで一旦停止するようにしたかったからよ。早馬を使うなら馬の乗換が必要になるだろうし、役目を終えた馬が〝あれ? ここだけ草が生えてる?〟と自分の(うまや)へ帰る時に走って出ないようにしたの」


 へぇ~と感心していたら、さらに、感心するようなことを言ってきた!


「本当、君はしっかりしてるね」

「しっかりと言うか……安全のために作ったのに、事故を起こしてしまったら意味がないでしょ」


 そんな感じで仲良く話をしながらてくてく歩いていたら、前方に待望の雲の乗り物と、先に来ていたらしいスキアの姿が見えてきた。





お読みいただき、ありがとうございます。ペコリ


リアクションもありがとうございます。ペコペコリ。

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