表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
148/600

4歳 前科3犯の聖女 メアリーの逃亡プラン



 お風呂から上がって、リビングでお茶を流し込み、

「ちょっと疲れちゃったから、晩ご飯までお部屋で休んでくるね」

 と言って子供部屋へ。


 部屋に入ると、すぐに、

『メアリー、聖女やん!』

『メアリー、マリちゃんと一緒やん!』

 エリーと兄様が目をキラキラさせながら言うてきた。


『う~ん…実力にかなり差があるけど…マリちゃんと一緒な気はする』

 聖女とは言わずに答える。


 だってさぁ、聖女って聞くと、なんか神々しさみたいなの想像するやん。私そんなん皆無やし…。

 前世を思い出すってのが神さん(から)んでんのかも知れんけど…。もしかして、神さん…ホンマはきっちり記憶消去せなアカンのに初期化だけしてんのちゃうやろな…。ほんで、何かのキッカケで記憶復元されてしまうとか…。

 私、熱 出た時に前世 思い出したみたいやけど…意識朦朧として、どっかに頭 打って、昭和のテレビみたいに…壊れたと思ったけど叩いたら(うつ)った!…みたいな復元の仕方したんちゃうやろな…。


『とりあえず、メアリーが聖女やってこと、絶対バレんようにせなな!』

『せやな! メアリー、これからは魔法、山でしか使ったらアカンで!』

 エリーと兄様が、むっちゃ真剣に言う。

『うん。私も…3つの罪で刑務所に入るだけやったら…まぁ、しゃ~ないな、とは思ったんやけど…聖女扱いとか…お城に死ぬまで監禁とか嫌やし…使わへんようにする。…また、2人のこと巻き込んでゴメンやけど…よろしく』

 そう言うて、2人にペコリってすると、

『メアリー、何言うてんの! もし、バレたとしても…僕、将来の伴侶を奪われるつもりないからな!』

『私もや! もし、バレたら…タケットとワックルで山越えて、愛の国外逃亡しよな! その為に私、もっと(つよ)なるから!』

 私に抱きつきながら、そんなことを言うてきた。


 …どうやら、バレたら駆け落ちすることになるらしい。山 越えて国外逃亡ってことは、北東の高い山 越えなアカンし…魔獣がいっぱいいるらしい魔の森を避ける為に高山病かかるぐらいの上空飛んでいかな…まさに高飛びやん! でも、それやと…地上からは見えへんむっちゃ魔力たっぷりの鳥型魔獣と剣で戦うことになるんちゃうやろか…。


『こっそり船作って、海から逃亡の方が()~ないか?』

 空路ではなく海路を提案すると、

『海上ってあんま魔力ないんやろ? 海、舐めたらアカン! って、港でよ~聞くし、非常時に魔法 使えへんかったら危ないんちゃう? 山やったら、シールド使えるし…最悪、地道に歩いて山 越えられるやろ。追手も()ぃひんやろうし』

 エリーが冷静に返してくる。私より、ちゃんと考えてる。


 そうして、エリーと高飛びの仕方について話してたら、

『あんなぁ、2人共、アホちゃう?』

 兄様が呆れた顔しながら言うてきた。ほんで、

『なんで、わざわざ国外に逃げなアカンの? そんなんせんでも、山小屋に住んだらええやん。合言葉 知らん人は入って来れへんねんし。ほんで、出掛ける時は変装したら ええんちゃうん。僕等いんよ~になったら、タラちゃん 寂しがんで。それに、エリーもオカンのお墓参りできるし、ウチの両親を始め、屋敷の皆や里の様子も見れんで』

 と、途轍(とてつ)もなくナイスなアイデアを提案してきた!


 お兄ちゃん、あんた…自分のことだけやなくて、周りのこともちゃんと考えて…完璧やん!! それに比べて…私…ポンコツや…ポンコツ過ぎる!! 幼児2人よりポンコツってどういうことや、私!!

 アカン…40代の記憶持ちとして恥ずかしすぎる…ちゃんと真面目に考えよ。



『うん。せやな。それでいこ。それやったら、2人も今まで通りここで生活できるしな。山小屋には私がタラちゃんと住むから、2人は、こっそり山小屋に遊びに来て!』

 大人らしく、更なる改善案を提示する。


『はあ? なんでメアリーだけ山小屋やねん』

『そうや。ウチら一蓮托生、言うてるやん』

 反対意見が出た。


『あんな、お兄ちゃんのおかげで気付いたんやけど…3人共おらんようになったら…タラちゃん同様、ウチの両親も泣くで。号泣やで。だから、2人には、ここに残って両親を支えて欲しいねん。

 それから、私が逃亡する理由は、私が聖女的な魔法使いってことやし。一蓮托生案件とは別件や。

 私、タラちゃんと暮らすから寂しくないし、2人も今と(おんな)しように、夜に会いに来てくれたらええよ。それに、私…やりたいことあんねん。だから、暇を持て余すこともないし安心して』

 ニッて、笑いながら言うと、

『…やりたいことって何?』

 兄様が怪しいもんを見る目つきで訊いてくる。

『タラちゃんに裁縫を教えてもらう!』

 楽しそうに笑って言うたのに…まだ、怪しいもんを見る目つきのままの兄様。(うつむ)いて、なんか考え出した。エリーも考えこむ…。


 …やりたいこと…裁縫…なワケない。山小屋に潜伏してホンマにやりたいのは…エリーの住んでた家探しや。

 私の犯した罪は…エリーに焼印を付け、エリー母娘をあの村に追いやった奴等の罪を暴いたり、追及する為の証拠になったかもしれんご遺体を埋葬し…証拠を隠滅してしもたことや。そして、そいつらが罪に問われへん所為(せぇ)で…新たな被害者が出てるかもしれん…ってことが一番の罪や。

 まぁ、ご遺体が残ってたとして、どこまで証拠になるかわからんし、自首したところで、向こうが自領の人間やないって言うたら、捜査されへんやろうし…もしかしたら、私は、この世に存在していなかった人を埋葬したってことで罪にすら問われへんかもしれん。

 モモ爺の言う通り、他の領のことやし…割り切らなアカンのやろうけど…聖女やってことがバレたら、キーモン領の紋章を解除されて王都に連行されるんやろうし…領は関係無くなる。だから、紋章が解除された時点で逃亡し山小屋を拠点にして、ゲンブー領に行き…家を探し出して、こっそり証拠を集める!


『無理やな』

 考え込んでた兄様が(つぶや)いた。何が? って視線を向けると、

『メアリーが聖女ってバレて逃亡したら、オトン、領主を解任されて準男爵になってしまうかもしれん。それだけやったら、里に住んでメアリーに会いに行くこともできるやろうけど…多分、それだけでは済まへんと思う。娘を(かくま)わんように国の命令で王都に引っ越しさせんのとちゃうかな…見張りつきで。そしたら…メアリーに会えへんようになる! オトンとオカン…僕等がおらんよ~になって泣くかもしれんけど…オトンにはオカンがおるし、オカンにはオトンがおるから大丈夫や。うん、やっぱり僕は山小屋でメアリーと暮らす! メアリーを1人にするワケにいかへん!!』

 兄様が目に力を入れて言うた。

『うん。せやな。国も、わざわざキーモン領まで捜査員を派遣し~ひんやろうし…絶対、王都に家族監禁してメアリーが会いにくんの待つ気がするな。言うても、私は最初っからメアリーと山小屋で暮らすつもりやったけどな!』

 エリーもうんうん(うなず)きながら、迷いなく言うてる。


 う~ん、その可能性…あるな…。どうしよ…なんて説得しよ。兄様とエリーには普通の生活して、たくさんの人等と笑って過ごして欲しいんやけど…。

 そう思いながら2人の顔を見ると、力強く(うなず)いてくる…。


 …説得は無理そ~や。…泣かしてしまうけど…逃亡する時は、1人で空飛んで逃げよ。


『そうと決まれば、山小屋の畑、復活や。タラちゃんに、マリちゃんが何処(どこ)に何を植えてたか確認して、その食材を育てよ! マリちゃんのことやさかい、害虫寄せ付けへんとか、風吹かせて受粉させるとかの、対策してると思うからウチの畑より育てやすいと思うわ』

 兄様、山小屋で生活する気満々やな。


 まぁ、ここは反対せんと乗っかろ。私の逃亡生活に必要やしな。

 と、なると…タラちゃん雑草の刈り取りはしてたけど、全部アカンようになったって前に言うてたし…水とか肥料は自分で何とかせなアカンかも…久々に魔道具作成かな…。


『でも、もう5月も後半やし…今から種まきしても間に合わへん(もん)も多いで』

 畑仕事をせんとアカン我が家のメイド、その仕事を教えて貰ってるエリーが言う。


 う~ん…それはそうかもしれんけど…う~ん、でもな…と考え、

『それでも、とりあえず試しにやってみよ! 収穫量より、()ずは出来るか出来ひんかや! 私、今日の夜、こっそり生ごみ(あさ)って、トマトとかアボカドの種にキャベツ・レタスの芯、それに、人参のヘタとか(ひら)ってくるわ! ほんで、こっそり水耕栽培しといて、お父様が王都に行った後、山小屋に持って行くわ。ホンマは昼に山小屋 行って、畑がどうなってんのか確認したいけど…いつ行けるか分からんし…畑付近に夜間照明 設置するな。マリちゃんの壁紙シールドで灯りは漏れへんし…うん! これでいこ!!』

 と、前向きに意気揚々と言うたら…


『照明の件はメアリーに任せるとして…生ごみの件は私がなんとかするわ。聖女にそんなことさせられへんし』

『うん。エリー、頼むわ。メアリー、聖女の前に貴族のお嬢様やしな…。ごみ(あさ)ってる所なんか見られたら…入院させられるかもしれん』

 中身も幼児の2人が呆れながら言うた。

 そして、どこで水耕栽培したらバレへんか相談しだした。


 …ホンマしっかりしてんな、2人共…。おばちゃん置いてけぼりやで…。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ