2歳 弟子入り認可
師匠から話を聞いたモモ爺。
お母様に私と兄様が里まで散歩に行ったら、修行中の師匠にたまたま出会ったと話して、あっさり修行をOKしてもらった。
2人で遊ばせておくより、余程安全やってことらしい。
危ない言うて、絶対 反対される思てたのに。師匠、信頼厚いな~。
細かいことは17時過ぎ、お母様の業務終了後に決めることになった。
お母様に勝手に屋敷を出たことを怒られながらお昼ご飯を食べて、昼寝。いつもより早く寝付けた。
というか、お昼ご飯食べてる途中で既に寝落ち状態やった……。
15時少し前にお菓子を食べて、里(筍の里やなくて、シーノビの里って言うらしい)に行くと、ふんどし君……やなくて、キリカ君(8歳)他、7歳~9歳までの子供5人と教育係のお兄さんとお姉さん(2人共20代前半)がいた。
初級コースの子は未だ学校に行く年齢(平民は10歳から)ではないので、4月中は【影】の人が働いてる店などに行って顔認証訓練を1日中してるらしいが、今日は昼で切り上げ、私達との顔合わせとなった。
師匠の息子のキリカ君……私達と目を合わせてくれへんかった……。
中級(10~12歳)・上級(13~15歳)コースの子供達が学校から帰ってくるまでアスレチックで遊んでいいと言われた。
また、兄様とトランポリンでキャッキャッ言いながら高~く跳んだら、跳び過ぎで危ないから止めろ。とプーマ師匠に言われた。
じゃあ、次はどれにしようか上から見て考えようと思って、縄ネットをよじ登ってたら、どこまで登るつもりだ、危ないから止めろ。と後ろから抱っこされてネットから剥がされた。
ジップライン(池の上にロープが張ってあって、そのロープを伝って滑空するやつ)に行こうとしたら、あれはまだ早い、と行くことすらさせてもらえへんかった。
「師匠! 過保護!」
「しょうがないだろ。傍から見てると頭がフラフラしてて、物凄く怖いんだからな。それにお嬢様の顔に傷痕が残るようなことになっても困る」
えー……。私、ちゃんと修行さしてもらえるんやろか……。
16時過ぎ。全員学校から帰ってきたってことで、中級・上級コースの子供達と各教育係のお兄さん・お姉さん達と挨拶。
「小っちゃい」を連発され、前世でいうところの中学生の子達に順番に抱っこされたり、ほっぺをツンツンされたりして、おもちゃ状態になった。
芝生エリアに連れていかれ、午前中にチヨネ姉さんにかけた技をやってみろと言われた。
掛ける相手は14歳のテイラ君。体重、チヨネ姉さんより重そうやな。背はチヨネ姉さんより低いけど、足が少し長いから重心は高そう。
……と分かったところで、どうしたらええのかわからん。さっきと同じでええか。
「始め!」の合図で、兄様がつま先を踏んでしゃがみ込みふくらはぎを抱え込む、私は後ろへ回って、上着を掴んで足を地面から離してぶら下がり、後ろに倒す。上着から手を離してテイラ君からも離れる。テイラ君、受け身をとる。テイラ君の頭を地面に倒し押し付けて、右手に拳を作って中指の第二関節を少し飛び出させ、眉間めがけて振り下ろす! 寸止めっ!
周りから「おぉぉ~~」と驚嘆の声が上がった。
テイラ君「えっ?」「うわっ!」「って!」「へっ?」「うわ~っ!」って言うたはった。上着引っ張られた時に「くっ!」しか言わへんかったチヨネ姉さんと比べると、やっぱり修行中って感じやな。
「今度は上手くいったね!」
「うん! 良かった~」
兄様と私、ニコニコ笑顔!
「次は私にかけろ」って師匠が言うた。
同じようにして眉間突きをしようとしたら、チヨネ姉さんの時同様、手を掴まれて阻止された。即、兄様がジャンプして鳩尾狙いにいった! が、やっぱり避けられた。
それでも「おぉぉ~~」と驚嘆の声が上がった。
「ん~、何がダメなんだろ?」
兄様、悔しそう。
「あっ! 私が眉間狙うのを止めて、顔の上に座り込んだら体 動かせないんじゃないかな?」
「ダメだよ。そんなことしたら、メアリーが後ろから服を引っ張られて後ろに倒れて……悪くすると僕のジャンピングキックがメアリーにきまっちゃうよ」
「あ~そ~か~。あっ! 師匠はどうすればいいと思います?」
師匠の方を見ると、兄様をジッと見たはった。
で、その後、私の方を見て目が合うと、ニッと笑い、「過保護は止める」って言わはった。
その後、皆さん、向かい合って爪先を踏む・踏まれない練習。
倒された後、素早く起き上がる・起き上がられる前に素早く眉間を突く・鳩尾を殴ったり蹴ったり(全て寸止め)する練習。
私達2人は、師匠に寝っ転がってもらって眉間突きとジャンピングキックを素早くやる練習をした。
最初は「遠慮するなよ。本気で狙え」って言うてたのに、最後の方は「ロンリー! お前、今 本気で狙ってきただろ!」って怒り出さはった。
……まぁ、避けんのも体力いるしな。疲れてきたんやろ……。
17時。師匠に家へ送ってもらう。
お母様の仕事が終わるまでリビングでティータイムや。
メイドのヤーサがアイスティーセットを持って来て……師匠に淹れさせた!
「なるほど、スケサさんが言ってた通りね。その所作で女性に口を割らせていたのね」
「人聞きの悪いことを言うな! 美味しく淹れてるんだよ!」
気の置けへん感じで話す2人。ヤーサが3歳年上で修行仲間やったらしい。幼馴染ってことか。
ほどなくして、お母様とモモ爺が入ってきた。
2人にはヤーサが温かいミルクティーを淹れた。
幼児コースはあらへんから、師匠が仕事辞めて担当してくれることになった。平日9時~17時、昼食(昼寝2時間)&師匠の送迎付き。
我が家からベビーシッター代を出すとのこと。修行よりそっちがメインみたいや。で、やっぱり、月謝 発生したやん! 我が家……牛肉のおかず減るんちゃうやろか……。
因みに、やったはった仕事は飲食店のウェイター。
朝は仕込みの手伝い、昼間は奥様方の噂話を収集、夜は酔っ払いの口を滑らせちゃった話を収集していたとのこと。スケサさんっていう、もう1人の【影】の人と昼・夜の接客をシフトを組んでやってたらしい。
◇◇
後日、スケサさんに「私達の所為で1人で仕事することになってごめんなさい」と謝ったら、「朝の仕込みの手伝いを止めたので、朝ゆっくりできるようになって良かったです」とのこと。
そして「私よりも店主の方が、イケメンのプーマがいなくなったので昼間の売上が減ったと嘆いています」って言わはった。
「えっ! わたしはスケサさんにょほうがタイプです。おくさまがたはみるめがにゃい!」って言うと「嬉しいことを言ってくれますね」ってニコニコしながら、頭をなでなでしてくれた。
やったぁ~!男前に頭撫でられたぁ~!
「メアリー、チャラくて優しい男の人より、落ち着いていて余裕のある優しい大人の男の人が好みなんだ……。モモ爺やトクター先生のことも好きみたいだし……」
「ロンリー、そのチャラい男って私のことか?」
「今の話の流れで師匠以外に誰がいるんですか? 里のお姉さん達にいい顔しまくって……。チヨネ姉さんとキリカ兄がお家からいなくなっても知りませんよ」
「恐いこと言うなよ。それに、別にいい顔してるつもりもない! お前達が私を慌てさせるだけで、普段は私も落ち着いてるからな。
それよりメアリー、40歳以上の男が好きなのか? そういえば……あいつの好きな本の登場人物のランスロやモンドルも40代や50代……。どうりで私に対する態度が軽いはずだ。2歳児に若造扱いされるとか納得いかねぇ~」
「そういう、つまらないことで納得いかないとか言ってるからダメなんですよ」
「お前、3歳でその発言はないだろ」
「僕も普段は、まだまだ子供なんだけど、目の前にダメな人がいると客観的に見ることができて冷静に判断ができるんです」
「……シンリーとクロイ、可愛かったな……」
師匠が遠い目をした。
◇◇◇