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Beyond recall  作者: さなだ プレミ丸
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プロローグ -暗澹- 

魔族×魔法使い×ミステリー×恋愛の要素を出していけたらと思っています。

主人公のベフト・グリンブルスは以前僕が書いていた作品に出てくるキャラクターです。


下記、作品における用語説明


・グライゴア族

魔族の総称。

人間では使う事の出来ない「闇の魔法」を使う事が出来る。

悪魔といえど、見た目は現世で生きる人間と見た目が変わらない者もいる。


・ヴァニタス

悪魔「グライゴア族」が過ごす世界。

現世と比べると終日薄暗く、大きな季節の変化も無い。

淀んだ空気と、濁った低い空が特徴。

人間が暮らす「現世」とは別空間に存在する。

グライゴア族のみが使用出来るヴァニタス・ホールによって現世にアクセスする事が可能。

人間は現世からヴァニタスへ行く手段を持たない。


・現世

人間の住む世界。

100を超える国や一族に分かれ、様々な魔法使いが存在する。

人間はグライゴア族との戦争に勝利を収めている。


・神具

人智を超えた道具。

武器、防具の神具もあればアクセサリーのような物も存在する。

主に人間の住む「現世」に存在する。

1,000年以上前に神が作ったと言われているが、詳しい歴史は誰も分からない。

また、全ての神具が世に認知されている訳ではなく何処かに隠されている神具や封印されている神具もある。

現世の各国に一つは存在すると言われている。


・禁術の書

「神の魔法」が記されている書物。

現世の各国に一冊、厳重に保管されていると言われている。

倫理を無視している魔法や、大きな厄災をもたらすような魔法が記されている。

神の魔法にも通常魔法と同じ様に属性が有り、神の魔法の属性に遺伝子レベルで特化していないと使えない。

国王の血筋は禁術を使える血筋になっていると言われている。


・アダーズ

グライゴア族の10人からなる精鋭隊で、地位が高い者順に数字が与えられる。

任意ではあるが何名か部下を従える事が出来る。

語源はAdder=加える者から。

現世に加わる存在になる為に、少しずつ内側から侵食する為に結成されている。

現世との戦争に敗れ、アダーズのメンバーの半数は死亡。

補充要員として比較的歳の若い魔族が多くなっている。


・アジテーションズ

「攪拌する者」の意。

少数精鋭ながら戦局をひっくり返したり、起点を作成出来る程の実力を持つ。

広範囲に渡る攻撃や、特殊な能力を持つ者達で構成されている。

奇襲を掛ける時は本領を発揮するが、一度攻略されると対策されやすい。


・クリフ

王の側近の精鋭隊。

神具の欠片を利用して作ったヴァニタス版の神具、「魔具」使いの者で形成されている。


・オブザーバー

現世で大きな戦闘が起こる時に、戦闘には参加せず観察する為だけの要員。

戦闘の際に起こった客観的事実を本部に伝える公的機関であり、戦闘員からすればオブザーバーの報告内容によって本部からの評価が変わる。

グライゴア族側が不利な局面に遭っても助ける事が出来ない為に心が無い、お役所仕事と揶揄されている。

オブザーバーは絶対生存を理念とし、護身魔法や姿を隠す技術に特化している。

現世との大規模な戦争により、8割のオブザーバーは死亡した。


「ねぇねぇ、聞いた?アダーズのNo.8が現世の殺人鬼に殺されたんだって。」

ベフト・ブリングルスが雑踏を掻き分けながら歩いていると、ふとその様な言葉が聞こえてきた。

魔族が暮らす此処「ヴァニタス」が人間との戦争に敗れてから、こんなに騒がしい日があっただろうか。


「知ってるわよ。アダーズって私達魔族の中でもかなり実力のあるチームじゃない。さっき速報が入っていたわよね。」

アダーズとは、10人のグライゴア族(魔族の総称)からなる精鋭隊だ。若者であれば誰しもがアダーズの加入に憧れる程人気のチームで、ベフトも少しは興味があった。


「しかも、No.8の子って最近加入した若い子でしょ?現世との戦争で人員を失って、また死者が出るなんて…。」

「ホントよね。傷はいつ癒える事やら。」

ベフトはふと空を見上げる。ヴァニタスの空は何時も薄暗く、陰鬱な空気を放っている。

現世には朝と夜というものが存在するらしい。現世からするとヴァニタスはずっと夜のままの状態だ。


「低い空だ。」と現世に行った事のある魔族がヴァニタスの空を表現していた。

現世の朝の空はどのような色をしているのだろうか。今年十五歳になるベフトはまだ現世には行った事が無く、皆目見当も付かなかった。


何故、人間と魔族はこんなに不平等なのだろうか。

何故魔族はヴァニタスで暮らし、人間は現世で暮らしているのだろうか。


現世は資源も豊富にあり、魔法の知識も魔族より遥かにあるそうだ。

グライゴア族は若い頃から反現世の教育を受けており、ベフトも少なからず現世に対する不快感は持っている。


現世との戦争に勝利を収めていれば、現世の空は手に入っていたのだろうか。

グライゴア族が戦争で敵に回したのは、サウザー王国で暮らすたった二つの種族だ。

所謂人魚と呼ばれている種族「マーレシオン族」と、どのような上級魔法でも使う事の出来るエリート種族「エンブラ族」の二つの種族で、食せば不死になれると言われているマーレシオン族の心臓の回収とエンブラ族の遺伝子情報の回収が目的で起こした戦争だった。


しかし、見事に返り討ちに遭い、今のヴァニタスは半壊状態だ。

若いベフトは戦場に行く事が出来ず、家族を失った。

ベフトは鬱積した感情を晴らす事が出来ず、どことなく歯痒く感じる毎日を送っていた。


アダーズのNo.8の者は、最近補充された期待の新星だった。

しかし、どうやら現世の殺人鬼に殺されたらしい。


ベフトは目の前にある飲食店の前に、新聞紙が落ちている事に気付いた。

文面を覗くと、アダーズのNo.8が死亡!という大きな見出しが書かれていた。

今日発刊された物なようで、ベフトは手に取って内容に目を通した。


「殺人鬼は現世のオルカ王国で息を潜めており魔族、人間関わらず無差別で殺しを愉しんでいる。」

それ故、快楽殺人で殺しを行っていると言われている。

「オルカ王国に潜伏しているグライゴア族の情報によると、その殺人鬼は一切の目撃情報が無い。一切第三者に見付かる事が無く殺人を繰り返している事からステルスと呼ばれている。」

目ぼしい者も見つかって居ない中、ステルスにより殺害事件の数は三桁を超えると言われている。

ステルスは誰にも正体を悟られる事無く意気揚々と現世で生活していると見られている。そう記事には書かれてあった。


こんなやつが現世には存在するのか。

魔法で気配を消しているのか?その名の通り、姿を消す事が出来るのか?

空間を操っているのか?様々な推測は出来るが、誰にも見つかって居ないというのは何処か超常な力をステルスは持っているのではないだろうか。


ステルスは恐ろしい存在だが、ベフトの胸は何故か躍っていた。

ステルスの正体は誰なのか。魔族なのか、人間なのか。

また、どういった価値観を持つ者なのか。

ベフトはそれが気になって仕方が無かった。


この淀んだ世界の外側で、何が起こっているのだろうか。

若者が触れてはいけないタブーのような存在が、ベフトの心に興味を抱かせるのだった。

何処かでベフトはずっと、つまらない日常から脱却したいと思っていたのだ。

薄々自分の性格に気付いていた事かも知れない。

自分は殺人鬼であろうと、気になるものは追求したくなる性根なのだと。

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