クズ勇者
シリアス?です多分...
ダンジョンから無事生還したキアラ達はリーチという小さな町に向かっていました
「キアラお姉ちゃん、リーチに行って何するの?」
アーリアはキアラの横を歩きながらそう問いかけます
「え〜っと、確か騎士様が言うにはリーチで情報を集めて欲しいと言う風に言われましたね」
「情報?」
「はい。今回手に入れた聖剣のよう武器とか、後は魔族についての情報とかですね」
「なんだか面倒そうね」
アイシャがキアラの話を聞いてそう呟きます
「ずっと気になっていたのだが、キアラのそのレイピアはなんなのだ?」
アルジェの問い掛けにキアラは少し気まずそうに
「実はこの武器、勇者様が手に入れるはずだった聖剣なんですよね」
「「「え?」」」
キアラの思い掛けない発言に一同が驚愕します
キアラはそうなった経緯を3人に話します
「じゃあ、なに?勇者が手に入れるはずだった剣が人になったかと思えば、勇者じゃなくてキアラを主人だって言った訳?」
「はい、そうなります」
「へぇ〜、これがね」
アルジェはレイピアをマジマジ見つめます
「そういえば、アーリアあんた精霊使いでしょ?何か分からないの?」
アルジェはアーリアに視線を向けます
「やってみる!」
そう言うとキアラのレイピアをずっと見つめ出します
「なんだろう、魔力がたりてない?」
「魔力、ですか?」
キアラは不思議そうに聞き返します
「うん、何となくだけどこの精霊、魔力が枯渇してる」
「それはどうしたらいいんでしょうか...」
「精霊だから勝手に魔力は溜まっていくはずだよ!」
「そうなんですか、じゃあいずれは目を覚ますはずですね」
「うん!」
キアラはアーリアの返答に安心したのかホッと息をつきます
ーーー
小さな町にリーチに着いた5人は今日泊まる宿を確保するとすぐに夕食を食べようとしました
しかし
「ごめん、僕はちょっとやる事があるから4人で食べていてくれ」
裕樹はそう言い残し1人宿を出て行ってしまいました
「大丈夫でしょうか...」
キアラは聖剣を手に入れる事ができず、落ち込んでしまっているのだと思い心配そうな顔をしています
「大丈夫でしょう。さ、ご飯食べに行こ」
アイシャに促されて4人は夕食を食べに行きます
キアラside
「少しお手洗いに行ってきますね」
「わかったわ」
私はみんなに一言声をかけてからお手洗いにに向かいます
お手洗いを済ませてみんなの元に帰ろうとした時です
「キアラ、少し、いいかな?」
勇者様が声をかけてきました
「別に構いませんが、どうしました?」
「キアラに少し話があるんだ。ここじゃあ、少し場所が悪いから移動したいんだ」
私に話とはなんでしょう?
勇者様に先導されて着いたのは人気のない路地裏でした
なんだか薄気味悪いですね
「それで、話とは何なんですか?」
「それはね、こうするためさ!」
そう言った瞬間勇者様の目が光りました
何をするんですか!
声が出ない...
あれ?体も動かない、なんで、
「アハハハ、はぁ、やっとだよ、やっと」
勇者様は私にゆっくりと近づいてきます
「はぁ、まさか聖剣に触れるだけでスキルが強化されるなんて思わなかったけど、おかげで上手くいった。催眠って便利だね。目を合わせるだけでいいんだ」
私の体に何が起こってるの...
「さてと」
勇者様は私の胸に触れてきました
「ハハ、見た感じで分かってたけど本当に胸がないんだね」
そのまま手は私の股間に
「ん?これは、まさか...」
勇者様の顔が険しくなっていきます
「答えろ、お前は男か?」
嫌だ、嫌だ、バレたくない!
考えとは裏腹に私の口は事実を伝えようと動きます
「はい、男です」
「ハ、ハハハハハハ」
勇者様は私の返答を聞いて狂ったように笑い出します
「ふざけるなよ!僕の今までの苦労を返せよ!お前を抱けると思ったから僕はあの苦しい訓練を耐えたんだ!どうせあの3人にも女だと騙しているんだろ!気持ち悪い!」
何一つ表情を変えることのできない私に勇者様は罵倒を浴びせます
ドン!
「かは!」
バカ、ボキ
腹を立てたのか勇者様は私に暴行をおこなってきました
「クソが!クソが!」
暴力を受けて倒れてしまった私にさらに追撃するように蹴りを入れてきます
ここで死ぬのかな...
「あんた、キアラになんてことしてくれてんのよ!」
「ぬぉぉぉ!」
「お姉ちゃん!!」
私がそう思った時、乱入したてきたアルジェが私と勇者様の間に攻撃し、勇者様が後ろに退きます
後から来た2人も私を庇うように前にでます
「あぁぁ!もう最悪だよ!」
「気をつけてください、勇者様の目を見ると体を操られます」
「わかったわ」
3人は私の忠告を聞いて気を更に引き締めました
勇者様はそう叫んだ私を忌々しそうに睨みつけた後、ニタリと笑うと
「そうだ、お前らにいいこと教えてやるよ、キアラに関する重要な秘密だ」
勇者様が何と言おうとしているのか察した私は背筋がゾッとしました
「やめて!それだけは!」
「そいつさ、男なんだぜ」
言った、言われてしまった
「はぁ?あんた何言ってんの?そんな訳ないでしょ」
「何を訳のわからないことを言っているのだ!」
「そうだよ!ね、お姉ちゃん!」
皆んなが確かめるように私に視線を向けて
バレちゃう、今までの事が全部、お母さんが壊れちゃう、みんなも
あの夢みたいに
嫌だ!
「キアラ⁉︎」
「どこに行くのだ⁉︎」
「お姉ちゃん⁉︎」
私は訳が分からなくなって走った、いや逃げ出した
「はぁはぁはぁ、ゲホ、ゲホ」
どのくらい走ったのだろう、もう、息も続かなくなってきた
元々あれだけ暴力を振るわれてボロボロになっていのだから仕方ないのだろう
あぁ、ダメだもう体が
ドン、ズズズ
私は近くの壁に背をつくとそのまま崩れ落ちた
これからどうしよう
みんなにバレちゃったし、もうあそこには戻れないな...
ぽたぽた
私は自分で知らずのうちに涙を流していたようだ
思えばあの時からよく頑張ったよね、お姉ちゃんの代わりになって、お姉ちゃんになり切って
あれ?私って、僕って、どんなんだっけ?
あぁ、ダメだ..意識が...なくなって....