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硝子張りの地獄

「最初にこの黄色いのを注射して、それから体温が30度以下に低下したら赤い奴を注射するんだね」

「そうよ。最初の薬で低体温になっても意識は残るわ。だけどかなり苦しいわよ。後、体もほとんど動かなくなってるから、黄色を注射したら赤いのをいつでも射てる状態、親指で押し込めるぐらいな状態にスタンバっておくのがよいわね」


 カレンは自分の腕に注射をするような仕草を交えて説明した。

 太陽は少し不安げに頷いた。

 カレンは曖昧な笑みを返すと、自分も隣にある冷凍ポッドに体を滑り込ませた。


「これ本当に上手く行くの?」


 カレンの質問に太陽は微笑みを返した。


「大丈夫。きっと上手くいく。

計算上は、全ての電力を冷凍ポッドに回せば6、7年保つ計算だ。今の『テーセウス』の軌道なら2年で火星近傍に到達する。そこてきっと僕たちを拾ってくれるよ」

「ふーん、なにもかも計算上は、ってことね

まあ、いいわ。他に選択肢はないものね」

「そういうこと。じゃあ、また後で会おう」

「了解。おやすみなさい」


 太陽とカレンは互いに挨拶を交わすと、冷凍ポッドに横たわり、ハッチをしめた。

 ハッチを閉めると自分の心臓の音しか聞こえないぐらい静かになった。

 太陽は意を決すると冷凍睡眠開始のボタンを押した。

 静寂にブーンと言う微かなモーター音が混じった。少しずつ低下していく温度を感じながら、太陽は思った。



 珠子。待っていてくれ。僕は必ず生き延びるよ。必ず生きて帰る。約束したからな。



2019/07/14 初稿


これにて完結です。


長い間お付き合いいただきありがとうございました。

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