5.燐花の友人訪問(後編)
「じゃあ、次はリンリンの番だよ! さあ、優作さんのどこが好きなの!?」
「お、それは俺も興味あるかな」
「え、私も言うの!?」
「もっちろん! 優作さんだけに言わせる気ー?」
「う……。それは……」
三人は、優作と燐花の恋バナネタで盛り上がっていた。
「さあ、リンリン! 観念して話すんだ!」
「う……。な、ないわよ別に……」
「ええー? それはないよリンリンー!」
「だ、だって」
「ほら! リンリンが話さないから優作さんが……」
「………………俺は、燐花に好かれてなかったのか。知らなかった……。そうだよな、俺に良いところなんて……」
「ゆ、優作が病んでる!?」
優作は、ショックでどよ~んとうなだれて病んでいた。
「……ちょっとベランダにいってくるよ。上崎さん、燐花を宜しく頼むね……」
「えー!? ちょっと飛び降りる気!? ゆ、優作さん早まらないで! ほ、ほらリンリン、何か言ってあげて!」
「もう、分かったわよ……!」
優作が立ち上がって、トボトボとドアにむかって歩き出した時。
「ま、待って優作!」
「……?」
優作が元気なく振り向く。燐花は勇気を出し、顔を赤らめながら、口を開いた。
「……優作の、いつも優しいところとか、カッコいいところとか……。え、笑顔が素敵なところ……。全部、好き……」
何とか言い切った燐花の顔は、茹でダコのように真っ赤に染まっていた。
「……本当かい?」
「(コクッ……)」
燐花が頷くと、優作の顔色もみるみる生気が戻ってくる。
「……俺も、燐花の全部が好きだよ」
「ば、馬鹿……! 今言わないでよ……」
完全に二人の世界が作られる。
「ありゃりゃ、二人ともゾッコンって事ですな。あたし邪魔物かな?」
横からみていた綾香は、ただただ楽しそうにそれを傍観していた。
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玄関前。綾香が帰宅するのを、優作と燐花は見送っていた。
「今日はありがとー! 楽しかったよー!」
「全く……。綾香のせいでどれだけ困らせれたか」
「あれー? でもリンリン嬉しそうにしてたじゃん!」
「う、うるさい! 全くあなたって人は!」
綾香の冗談に燐花は、怒っているというより呆れたようにしていた。
「まあまあ燐花、いいじゃないか。上崎さん、今日はお恥ずかしいところをお見せしてすみません」
「いえいえー! 楽しかったよー!」
「俺も楽しかったです。是非またいらしてくださいね」
「いいのー? じゃあまた行くねー!」
綾香は玄関の扉に手をかけて、振り返った。
「じゃーねー!」
「さようなら。お気を付けて」
「さようなら、綾香」
「うん! ……リンリン、ぐずぐずしてるとそのうち優作さんとっちゃうよ?」
「ちょ、ちょっと何を言って!?」
バタンッ! と、燐花が文句を言い終わる前に扉は閉められてしまった。
「全く、最後まで私をからかって、イタズラ好きなんだから」
「嵐のような人だね」
綾香が去ったあとは、いつもより閑寂としたような静けさが目立った。
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そして、また就寝前。
「ねえ優作」
「なんだい?」
「……今日、好きなところ言ってくれて、嬉しかったわ」
「俺もだよ。燐花ちゃんをまた好きになった」
「そ、そう」
「うん」
「「……」」
暫しの静寂。
「…………」
「一緒の布団で寝ようか?」
「……うん」
優作の布団に入った燐花は、最初の不安なんてものがなかったかのように、幸せな気持ちで一杯になった。
今日も今日とて長谷川夫婦は、仲良しであった。
優作は、人前では 燐花 と呼ぶようです。
燐花にそう言えと言われてるのかな?
誤字があったら教えてください。