18.酒酔い妻①
優作の故郷を出てから数日後のある日。優作はいつもどおり、仕事を終えて帰宅する。
「ただいまー」
こうしてまたいつもどおり挨拶をして、玄関で靴を脱ごうとする。するとひとつ、いつもと違うものがあった。
「あれ、このヒールは……?」
優作にとって見覚えのない、見るからに高そうなブランド物の赤いハイヒールが一足並んであった。
女性のものであることは明白なので、まさか浮気などの類いではないだろう。そして、今まで燐花はこのようなブランド物を勝手に購入したことなど無かった。となると……。
「客人かな……」
来客があることなどは何も聞いていない優作だったが、気にせずリビングに入ってみることにする。本当に来客だったときのため、少しだけ身なりを整えてからドアノブに手をかけ、扉をあけた。
「あ、おかえりゆうさくぅ~!!」
「うわっ、燐花!? どうしたんだ!?」
今日も可愛い妻に迎えられた……と思ったら、なにやらその妻の様子がいつもと違うようだった。
普段の燐花では考えられないほどのハイテンションで迎えられたあげく、突然抱きつかれ、優作は面食らう。
見ると、燐花の顔は真っ赤であり、目はトロンとしていた。さらに呂律も回っていない。明らかに様子が普段と違っていた。
優作は必死に状況を理解しようとする。
「あー、この匂いは……!」
優作は鼻に残るアルコールの匂いを感じとる。テーブルの方を見ると、やはり酒類のビンがおいてあった。
そして椅子には、少しひきつった笑顔を浮かべる女性が一人。燐花の友人である上崎綾香が座っていた。
「あはは……。お邪魔してます、優作さん」
「あ、はい。ゆっくりしていってください……じゃなくて! 燐花の様子がおかしいんですけど!」
「お、いいねーノリツッコミだ!」
「そんなことはどうでもいいんです! まさか、そのテーブルの上にあるお酒を燐花に飲ませたりはしてないですよね!?」
優作が取り乱す理由。それは、燐花が酒に物凄く弱いことを知っているからだった。
少量でも飲んだらベロンベロンに酔ってしまい、普段の彼女とは思えないほどハイテンションになる上、子供のような性格になってしまう。要するに、物凄く面倒な人になってしまうのだ。
そのため、今までは絶対にアルコール飲料は飲ませないようにしていたのだが、彼女の様子を見るに、飲んでしまった可能性が高そうだ。
「いやー、その件には訳があってですねー……」
「やっぱり飲んでしまっていたか……! 燐花が酒に弱いことを知らなかったんですか?」
「いえ、そういうわけじゃないんですけど、アクシデントが起こってしまったというか……」
「てことは、わざと飲ませたってことではないんですね」
「そう! ホントに事故だったの!」
綾香が嘘をついている様子はない。となると、原因は燐花自身にありそうだ。優作は、抱きついてくる燐花を抱えるようにして話を続ける。
「そうですか……。ならどうして飲酒を? 一応、酒類は絶対飲まないように言ってきたはずだったんだけどな……」
「それがですネ……」
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