15.爆弾発言
夕方。長谷川家は食卓を囲んでいた。
「燐花ちゃん、いつも悪いわね~。晩御飯作るの手伝ってもらっちゃって~」
「いえいえ。これくらい、いくらでも手伝います。気を使わなくて大丈夫ですよ、恵美さん」
燐花が答えると、恵美はパッと表情を明るくした。
「まぁ! ホントにいい娘ね~! 優作がこんなに良いお嫁さんもらったなんて、母さん誇らしいわ~!」
もう結構な年のはずの恵美が、子供のように喜んだ。
「そうだね。俺も、こんなに素敵な嫁さんもらえてとっても誇らしいよ」
「バ、バカ! なに急にキザったらしいこと言ってるの……!」
優作の甘い言葉に、燐花は浮わついた気持ちを怒ったようにして誤魔化す。
が、顔が真っ赤なので、当然全く誤魔化せていなかった。
「あらあら、仲もしっかり良いわね! うふふ……」
「からかわないでください、恵美さん! もう、早く夕食食べますよ!」
「まぁ、怒られちゃったわ~」
恵美はまったく反省の色を見せていない。まだ子供のような人だった。
そして、家族四人全員がイスに座り終える。
「じゃあ、いただきまーす!」
「「「いただきまーす!」」」
最初は優作が呼び掛け、三人が後につくように挨拶した。
皆がもくもくと食べ続ける。
「そういえば……」
「ん、なんだい? 母さん」
ふと、恵美がニコニコしながら話をする。
「二人とも、いつ子供を見せてくれるのかしら~?」
―――――――衝撃的な話を。
「「!!!!!!」」
優作と燐花は激しく動揺する。
「ゴホッゴホッ……! な、なんてこというんだ母さん!!」
「~っ! 喉につまった……!」
「だ、大丈夫、燐花さん? はい、飲み物!」
「んっんっ…………、ぷはぁっ! あ、危なかった……。ありがとう、夢来ちゃん」
あわただしくなる長谷川家。
「とにかく母さん、俺の質問に答えて!」
「えー、二人ともいつ子供を見せてくれるのかしら?」
「繰り返してって言ったわけじゃないんだ! ていうか夢来もいるのにこんな質問しないでよ!」
「なんで~? 夢来も子供みたいよね~?」
「だ、だからそういうことじゃなくて……!」
「うん! 見たい!」
「夢来まで!? そういうことを俺達夫婦二人に直接言うのは、マナー違反なんだよ!?」
「優作、あなたなんでそんなに取り乱してるの~?」
「誰のせいだ!!」
長谷川家は今日も平和であった。




