19 再びの南部福祉事務所
絵美の誕生からまもなく…6月中旬のある日、上司の大島課長から呼び出しを受けた。俺…何かしたか?全く心当たりがない。
「森山係長、申し訳ないんやけど、7月から南部福祉事務所と兼務してくれへんやろか?南部の係長が1人病気で休んでしもて、業務が回らんらしいんや」
青天の霹靂…。諸々相談の結果、週に4日南部福祉事務所で、週に1日生活保護課でという勤務配分になった。南部では生活保護現場、本庁では現場の指導監査…一人で二役をこなさければならない。参ったなぁ…。
私の血液型はAB型である。血液型によって人の特性が4つに分かれるというのは、科学的にみて根拠があるのだろうか? という疑問はあるのだが、AB型の人間には二面性があるらしい。少なくとも私に関しては、「AB型気質」に十分当てはまっていると思う。「現場」と「本庁」の「二足のわらじ」…問題なくこなせたというか、とても楽しかった。
ただ、これはあくまでも緊急措置であり、いつまでもそういうわけには行かない。
「森山直樹。兼務を解き、南部福祉事務所係長に補する」
翌年…2011年4月に兼務発令が外れ、兼務先であった南部福祉事務所に残ることになった。
3月までは週4日勤務ということで、業務量を調整してもらっていたが、4月からは係長として部下を率いることになった。対象者が多い地域とのことで、ベテランの前川係長とのペアである。心強い。
前川係長や優秀な部下たちのおかげで、私のいた係は次々と実績を上げていった。2011年の1年間は、私が生活保護業務に就いた中で、一番輝いていたのではないかと思う。
次回から物語の後半に入ります。ここまで何とか安定を保っていた森山家…一気に崩壊へと突き進んでいきます。