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17 南部福祉事務所へ

 2009年3月初旬。上司の横田課長から面接室に呼び出された。


 「森山さん、実は異動の話があって…。あなたは以前、本庁の生活保護課で仕事をしていたことがあったよね?そこで、南部福祉事務所に係長として行ってもらおうかという話があるんやけど…」


 「福祉事務所」といえば生活保護の現場である。私は、2003年から3年間勤めた本庁生活保護課での経験から、生活保護の現場の仕事をしてみたいと思うようになり、異動希望を出していたのである。


 南部福祉事務所は我が家からも比較的近く、異動先として願ったり叶ったりであるが、「係長」というのが少しひっかかる。推薦されるのは非常に光栄ではあるが、我が家の状況を見ていると、まだ時期尚早のように思える。


 「課長。生活保護の現場は一度経験してみたいと思っていたので、素直にうれしいです。でも、『係長』はまだ少し…」


 少し迷ったが、横田課長に我が家の現状や不安材料をこと細かく話をした。


 「森山直樹。南部福祉事務所主任に補する」


 4月…私は「主任」のまま南部福祉事務所に異動することになった。


 南部福祉事務所は、大阪府南部の福祉事務所を持たない町をカバーする「郡部福祉事務所」である。町の代わりに、府が広域行政として対応するのだ。


 児童相談所とは違い、対象世帯の家庭訪問が主な仕事である。そして、毎月対象世帯の生活保護費を算定して支給する。システム化されているとはいうものの、想像以上に事務仕事が多い。


 幸いなことに、私には本庁生活保護課でのベースがあり、生活保護制度を熟知していた。そして、元々事務仕事も苦にならない…というか本庁では、出来の悪い一般行政職よりもよっぽど使えると言われ、本来の業務外の仕事を多々受け持っていたのである。


 最初こそ「お師匠さん」がついてくれていたが、ゴールデンウィーク明けには独り立ち…とにかく仕事が楽しかった。学生時代に避けていたのは何だったんだろう…?


 そしてあっという間に年度末3月。上司である田中課長と出張していた時のこと…


 「森山君、今度こそは係長に昇任させるから。本庁の生活保護課に行ってもらうよ」


 今度は拒否できない。というか、この昇任の話を蹴ったら、私はたぶんずっと主任のままだろう。田中課長に深々と頭を下げた。

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