13 お引っ越しプロジェクトスタート!
2008年1月。森山家の引っ越しプロジェクトがスタートした。私的には実家にも近く、住みなれたエリアにある現居でも何ら問題はないのだが、やはり恭子のストレスが高く、育児への悪影響が懸念される状況になったことから、やむなく…である。
恭子は芦屋近辺に新居を設定したいという。すぐに内緒メールで情報が行ったのだろう。プロジェクトが動き始めてすぐ、佐倉家が動いた。近所にいい物件があるので見に来いという。見に来いと言われても、芦屋と堺では物件価格に倍ほどの差がある。恭子はもちろん前向きであったが、私は相当後向きで、半ばしぶしぶ物件内覧に付き合った。
感じの良い営業マン氏の案内で2軒回る。1件目は線路沿いの中古物件。間取りは良いが、線路を通過する電車は、日中でも1時間に24本。騒音が酷い。2軒目は新築物件。家も狭く、駅からは徒歩30分近くかかると思われ…隣は墓地で薄気味悪い。もちろん却下である。
佐倉家に先手を打たれたのが悔しくて、私も懸命に物件探しをした。同じ堺市内で候補を4つに絞り、休日の度に恭子と2人の子どもをつれて物件内覧に出かけた。そして最終候補を1つに絞り、恭子の希望で義父母を同伴して内覧に出かけることになった。
ここまで、親父…私の実父は登場していない。正月に会った際、引っ越しを考えている旨伝えたところ、そっぽを向いてしまったのだ。私が佐倉家に取り込まれると思ったのか、孫たちを引き離されると思ったのか…おそらく両方であろう。
最終候補は、堺市郊外の新興住宅地である。最寄り駅からは少し歩くが、小学校や保育園、スーパー等も近く、利便は良い。近くを幹線道路が走っているが、緩衝帯が設置されており、市役所に確認したところ、環境基準もクリアしているとのこと。今度こそ終の棲家である。朝昼夕と足を運び、近隣環境も徹底的に調べ、白羽の矢を立てた。建築条件付土地なのでまだ更地であるが、分譲地内にモデルハウスが建っており、生活イメージを掴むことは出来る。
現地で営業マン氏と待ち合わせ、義父母を案内する。一家4人でモデルハウスを見学していると、窓から営業マン氏と義母の姿が見えた。営業マン氏が困っているように見えたので窓を開けてみると…
「近くを大きな道路が通っていますよね。ここは環境基準をクリアしてるんですか?空気が汚いように感じるんですが!」
おいおい…やらかしてくれてるよ…。私は慌ててモデルハウスを飛び出し、義母を制し…営業マン氏に加勢する。やはり、義母の心は芦屋…最悪阪神間という気持ちがあるのだろう。
最終、義母を押し切るような格好で物件を仮契約。恭子と義父は特に言葉を発することはなかった。
ここで新たな構図が出来上がった。私VS義母。この関係性が、今後の展開に暗い影を落としていく。