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プロローグ

 本日より連載を開始いたします。毎日20時更新。第一部は全41話の予定です。

 「森山直樹と森山恭子は協議の方法により離婚する」


 2013年12月3日午前10時。大阪家庭裁判所の家事審判室で、審判官がそう宣告した。


 森山直樹、41歳。妻・森山恭子との約1年7ヶ月にわたる離婚問題に決着がついた瞬間であった。


 審判官、2人の調停委員と裁判所書記官、恭子と代理人の山越弁護士、私と代理人の杉山先生が狭い審判室に会し、調停調書の読み合わせが行われた。内容に問題がないことを確認し、書記官に差し出された書類に判を押す。続いて、山越弁護士が私の元にやってきて離婚届の書類を差し出し、本人欄への記名捺印を求めた。


 離婚届には恭子の記名捺印に加え、義父である佐倉雄二、実父である森山正の記名捺印がある。義父はともかくなぜ親父が…?疑問が怒りに変わり、湧き上がってくるやりきれない感情を抑えるのに必死であった。そして山越弁護士にも…。


 離婚調停での決着ゆえ、調停調書を区役所に提示すれば、離婚届なしで手続きができるはずであるにもかかわらず、今回佐倉家の意向で、形式的には協議離婚という形が取られた。理由は戸籍に残るからだという。いかにも体裁にこだわる佐倉家らしい意思表示である。私は離婚さえ出来たら…佐倉家の呪縛から解放されれば何でも良いのだが…。


 調停上の手続きが終わり、私は2人の調停委員に深々と頭を下げた。


「結果に不本意なところはあったかもしれないけれど、離れて暮らすお子さんたちのためにも頑張ってくださいね」


 女性の調停委員が優しく声をかけてくれた。


 ほぼ頃合を同じくして、今後の事後処理の調整しようと、杉山先生が恭子と山越弁護士の姿を探したが…2人の姿はすでにそこにはなかった。


「季節は進んだねぇ…」


 家庭裁判所から駅までの道すがらで、杉山先生がつぶやいた。


「先生ありがとうございました。あの2人の様子を見ていると、事後処理も難儀しそうですが…引き続きよろしくお願いします」


 駅の改札口で杉山先生を見送り、私は再び外へ出た。そのまま仕事に出かけるつもりでいたが、この自由感を満喫したいと思い、職場にもう1日休む旨電話連絡を入れた。そして大阪城公園へ移動。缶コーヒーを啜りながら、足元で餌をついばむ鳩を見つめていた。


「なんでこんなことになったんやろう…?」


 そんなことをぼんやり考えていると…、心は約13年前…2001年1月にタイムスリップした。

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