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第3話 スライムと灼熱地獄

 次の魑魅魍魎バトル大会に向けて、特訓が課せられる。

 そんな話をしたあとではあったが。

 通常通りであれば、次は1年後くらいの開催となる。


 今後は新シリーズになるから、いつ頃おこなわれるかはわからない、と大家さんは言っていた。

 人間の参加という新たな取り組みについて、実験的な意味合いもあるため、予定より早まる可能性も示唆していた。

 とはいえ、前回の大会からまだ1ヶ月程度しか経っていない。

 準備も必要なはずだし、すぐに開催されることはないだろう。


 どちらにしても、絆を深めるという目的だったら、毎日が特訓と言っても過言ではない。

 なにせ、妻であるぽよ美はスライムなのだから。

 結婚して随分経ったが、ぽよ美にはいまだに驚かされることが多い。


 今日だってそうだ。

 確かに今日は暑い。この近辺でも40℃近くまで上がっているらしい。

 全国のどこかで最高気温記録を更新する勢いだとか、ニュースで言っていたくらいではある。


 だとしても。

 自分の妻が完全に溶けて、ソファーに染み込んでいるとか、どう考えても想像の範疇を超えている。


 いや、普段からソファーに寝っ転がっていて、ドロドロにとろけている状態じゃないか。

 なんてツッコミが来そうだが。

 今日はそんな生易しいもんじゃなかった。


 いつもだったら、かろうじて『ゲル状の物体』といった表現で済む程度なのだが。

 今日に限って言えば、完全に液体になっていた。

 若干緑色がかった水だったのだ。


 ソファーを見たら全体的に濡れていて、ぽよ美の顔(スライム形態でも目と口くらいは一応視認できる)の模様がついていた。

 その顔から、「ダーリン~~~~……」などと、力ない呻き声が聞こえてきたら、ホラー以外の何物でもないだろう。

 もちろん、ぽよ美からは「ホラーなんてひどい~……」と不満をぶつけられたが、その声すら勢いが全然なかった。


 とりあえずバケツを持ってきて、ソファーからぽよ美を絞り出し、事なきを得たが。

 ソファーからバケツに妻を絞り出すとか、そんな表現、おそらくオレ以外に使う機会はないだろうな。

 オレの場合、比喩でもなんでもなく、文字通りの意味になるわけだが……。


 ともかく、バケツの中いっぱいに「たぷん」と溜まった妻の姿を見たオレの心情は、人間の言葉では到底表現し切れない不思議な感じだった。

 バケツの中から「ダーリン~~……」という涙声が響いてくる。

 一瞬そのまま捨ててしまおうか、などと思ってしまったのは、暑さのせいに違いない。

 どんな姿であっても、オレはぽよ美を心から愛しているんだからな。


 さて。

 ぽよ美がここまで溶けてしまうほど暑いのには理由がある。

 エアコンが壊れてしまったのだ。


 ならば、他の部屋にお邪魔すればいい。

 そう考えて、左右の隣となる低橋さん宅、および中泉宅を訪問してみたのだが。

 どちらも同じようにエアコンが壊れてしまったとのこと。


 ここまででも充分におかしかったわけだが。

 他の住人たちの部屋を訪れてもやはり結果は同じだった。


「これはおかしいよね、絶対!」


 中泉が話しかけてくる。

 外からも見えるアパートの廊下部分にいるというのに、ビキニの水着を身に着けただけの格好で。


「おかしいのはお前だ!」


 よもや中学生時代の初恋相手に対して、こんな言葉を発する羽目になろうとは。


「ちょ……っ!? それはひどいんじゃない!? むしろ喜んでくれたっていい状況だと思うな、あっしは!」


「どこからそんな自信が湧いてくるんだか……」


 確かに、中泉は美人になったし、スタイルだっていい方だと思う。

 水着姿を拝見できてラッキー、くらいの思いが無いわけじゃない。

 ともあれ、状況が状況だ。そんなことを言ってはいられないだろう。


 ここでふと気づく。

 以前、水好さんたちがいなくなった際、中泉は混乱と寂しさからとんでもないことを口走ったりしていた。


『もしも……ぽよ美さんも水好も、このまま戻ってこなかったらさ……。あっしと結婚して一緒に……』


 あのときは、オレが途中で言葉を遮って、怒ったんだったな。

 中泉はパニックになると、自分でもわけがわからなくなる、といった部分があるのだろう。


 そして、今日は凄まじく暑い気温で、中泉の家も冷房が効かない状態だ。

 今日は休日だから水好さんも家にいたはずだが、今、ここにはいない。

 つまり……。


「中泉、もしかして水好さんも……」


「そう、そうなのよ!」


 オレが尋ねてみると、思ったとおりの答えが返ってきた。


「水好、頭のお皿が完全に干上がっちゃって大変なの! 水道の水も出ないし、冷蔵庫も動いてないし!

 お酒類だけはあったから、それをかけたりしたけど、全然目を覚まさなくてさ!」


「そうだったのか……」


 中泉はビールやらワインやら各種カクテルやらを常備している。

 それらを使っても無駄だったということか。


「アルコールが入ってるとダメなのかと思って、あっしも色々かけてみたの!」


「……ん?」


 なにやらおかしな話が方向に……。


「まずは唾液とか汗とか涙とかをかけてみたんだけどダメで……。

 それなら、と思って他にも……」


「ちょ……っ!? 中泉、ストップストップ! 事細かに説明しなくていいから!」


「でもでも、事態はしっかり把握しとかないと!」


「もう把握したから! 水好さんのお皿も干上がってしまって大変、ってことだよな!?」


「う、うん……そうなの」


 中泉のやつ、混乱しすぎだろ……。

 いったいどんなことまで話すつもりだったのやら……。


 ところで、今この場にはもうひとり、人間がいる。

 低橋さんだ。

 今日はバイトが休みのようで、珍しく家にいたのだが。


「Oh~♪ 冷華~♪ 愛しの冷華~♪ どうしてキミは、答えてくれないんだ~♪」


 ギターをかき鳴らして歌っているのは、混乱している証だろう。

 その歌詞から察するに、冷華さんもまた、問いかけに答えられる状態ではなくなっているようだ。


「冷華さんはどうなったんです?」


「冷華は~♪ 今にも~♪ 成仏しかけている~♪」


「ええっ!?」


 思わず、低橋さん宅に駆け込む。

 そこには冷華さんがいた。ただし、焦点の合っていない、うつろな表情の冷華さんが。

 しかも完全に透けていて、体を通して向こう側が見えている。


「……いや、でも……西洋の幽霊なんだから、成仏するんだったら、それが正常なことなのでは……?」


「違うんだ~♪ 姿がブレて~、空へと向けて舞い上がる~♪」


 よく見てみれば、確かにその歌詞の通り、すーっと上空へ昇っていこうとしている、白いエクトプラズム状のモヤが見受けられる。

 今はかろうじて冷華さんの体とつながっているが、このままだと魂が天に召されてしまうと考えられる。


 ……ん?

 幽霊なんだから、やっぱりそれはそれで正しいことなんじゃないか?

 オレがつぶやくと、低橋さんから猛反発の歌が大音量で発せられる。


「冷華は~♪ ここで成仏できない~♪ 担当区域が違うから~♪」


 担当区域って……。

 そりゃあここは日本だから、レイス――すなわち西洋の幽霊である冷華さんが成仏するべき場所ではないのかもしれないが……。


「少々補足しますと、担当区域違いデスと成仏できないだけでなく、時空の闇を背負って戻ってきますデス。

 そうなってしまったら、悪霊となってずっと居座ることになってしまいますデス!」


 騒ぎを聞きつけたのか、死神のヨロシクさんが音もなくやってきて、補足説明を加えてくれた。

 担当区域があるというなら、このアパートにいるヨロシクさんが、この辺りの担当死神ってことになるのだろう。

 だったら、お願いしてみるのも手か。


「例外にはなるかもしれないけど、今は日本にいるんだし、冷華さんを成仏させてあげてもいいんじゃないの?」


「ちょっと、佐々藤! 冷華さんがいなくなってもいいっていうの!? このアパートの仲間でしょ!?」


 中泉がオレに食ってかかってきた。

 その反応も、もっともだろう。

 だが、オレだって、本当に冷華さんに成仏してほしいわけじゃない。


「それはできかねますデスね。なにぶんお役所仕事デスので」


「お役所仕事って……。まぁ、べつに期待はしてなかったけどな」


 ヨロシクさんの答えを聞いてホッとする。

 はてさて、いったいどうすればいいのか。

 冷華さんが元気だったら、吹雪でも吐き出してもらえば暑さは凌げただろうに。


 …………。

 考えてみたら、このアパートの中だけで解決する必要はないじゃないか。

 

 バケツに入ったままのぽよ美とか、

 成仏しかけているレイスの冷華さんとか、

 干からびたカッパの水好さんとか。

 見られたらちょっと困るような気はする。


 しかしそれよりも、命の危険の方が今は問題だ。

 ……冷華さんは幽霊だから、命と呼んでいいのかは疑問ありかもしれないが。


 とにかく、まずは近所のコンビニで冷たい飲み物と氷でも買ってくるか。

 そう思って階段を下り、アパートの前の道へ出ようとした、その瞬間。


 バチッ!


「うわっ!?」


 強烈な電撃のようなものが全身を駆け巡り、体が弾かれる。


 一旦、態勢を立て直し、オレは恐る恐る手を伸ばしてみた。

 道とアパートの敷地のちょうど境目くらいに差しかかると、電撃のごとき痛みが襲いかかってくる。

 これはつまり……。


「結界だよ」


「大家さん!」


 こういうとき、一番頼りになる存在。

 地獄の閻魔もやっている、我らがアパートの大家さんだ。


「大家さん、ぽよ美たちを助けてください!」


「そもそも、今ってどういう状況なんです? あっしには理解できません!」


「ららら、冷華~♪ マイスイート冷華~♪ バック・トゥー・ザ・現世~♪」


 オレに続いて、中泉と低橋さんも大家さんのもとへ。

 確認してみると、大家さんのそばには、みみみちゃんと織姫さんと彦星さんの姿もある。

 このアパートの他の住人といえば、あとは七福神の皆様くらいだが、姿は見えなかった。


「あ……七福神様たちは、南国でバカンス中みたいです」


 みみみちゃんが101号室を指差す。

 そのドアの前には、こんな貼り紙が残されていた。


『はろ~ん、弁天よ~♪

 あたしたち七福神は今、常夏の島にて絶賛バカンス中で~す♪

 急用の方は、天界留守番電話サービスにてご連絡くださ~い♪

 でもぉ~、くだらない用事だったりしたら、天罰を食らわせちゃうぞ~♪』


 …………。

 うん、見なかったことにしよう。

 とにかく、大家さんがいれば、なにも問題はないはずだ。

 そんなオレの予想は、甘かったと言わざるを得ない。


「残念だけど、私の力ではこの結界を張るだけで精一杯の状態だよ……!」


 大家さんが額に大粒の汗を浮かべながら苦しそうに言う。

 いったいどういうことなのか。

 簡単に説明してくれた。


「この暑さの原因は、地獄の熱暴走にあるんだよ」


「え? 熱暴走?」


 そんなパソコンみたいな……。

 といったツッコミに反応する余裕すら、大家さんにはなさそうだった。


「地獄の熱は凄まじいエネルギーだけど、実は制御不能なのさ。

 自然の驚異が人間にはどうにもならないのと同じ、ってことかね。

 これまでにも暴走することはあったんだけど、大した被害は出ないで済んでいた。

 ただ、今回は規模が大きすぎてね。

 氷系の悪魔が頑張って抑えてはいるけど、いつまでもつかは正直わからないんだ」


 大家さんは結界を張って、暴走した熱量をこのアパートから外へ出ないようにしている。

 地獄とつながっているのは、このアパートの一室だけではないらしいのだが。

 他の場所は他の場所で、別の閻魔様などが対応に当たっているのだとか。


 今回暴走した熱量は凄まじく、そのまま垂れ流した場合、日本ですら気温が50℃を超えるという。

 それを抑えるために、こうして結界を張っているらしい。

 ただそのせいで、アパート内の気温は上昇の一途をたどり、エアコンも冷蔵庫も水道も正常動作できない状態になってしまったようだ。


「あとは、あんたたちの力だけが頼りなんだよ」


「オレたちの力って……」


 こんなの、どうすればいいのか。

 だいたいオレは、妻がスライムだってだけの、普通の人間でしかない。

 中泉や低橋さんだって、性格的には変わっていても、一応は普通の人間だ。


 抱き合って震えながらも、スマホでメッセージのやり取りをしている織姫さんと彦星さん。

 見た目は小学生、正体はウサギという、どう考えても役立たずなみみみちゃん。

 以上3名は論外だし。

 ぽよ美と冷華さんと水好さんという、意外にも頼れるメンツは現在、命の危機に瀕している状態で……。


 とすると、残るはヨロシクさんしかいない。

 だが、


「すみませんデス。こんな時に臨時の仕事が入ってしまいまして……。

 無視すると査定に大きく響きますので、ワタクシはこれにて失礼しますデス!」


 頼みの綱はもろくも千切れてしまった。

 万事休す。

 これでは、どうしようもない。


「あっ、そうだ! 七福神様たちに連絡を取ればいいんじゃない?」


 中泉が提案する。

 天罰は怖いけど、これはどう考えてもくだらない用事ではない。

 とはいえ、南国からすぐに戻ってこられるものだろうか?


「たぶん、無理なんじゃないでしょうか。

 それに留守番電話サービスってことは、直接つながるわけでもなさそうですし……」


 みみみちゃんの至極もっともな意見に、オレはがっくりと肩を落とす。

 ダメもとで織姫さんのスマホから電話はかけてもらって、留守電にメッセージは入れておいたが……。

 七福神様たちが到着するまで待っていたら、きっとすべてが終わってしまう。


 くそっ! このアパートの住人で、他に頼れる人なんて……。

 と、そこで気づく。


「え? 佐々藤!?」


 キョトンとしている中泉を残し、オレは一目散にダッシュした。

 アパート二階の、自分の部屋へ。

 勢いよくドアを開け、バケツの中で苦しそうに呻いているぽよ美の横を通り過ぎ、リビングのテーブルの前まで到達する。


 そこに置いてある自分のケータイを使って、オレは電話をかけた。

 まずはぽよ太郎。そして海端。さらに垢澤さんにも。

 オレが連絡を取れる女神ハイツの住人3人に状況を伝えたのだ。


 ぽよ美のいとこであるぽよ太郎に伝えれば、その妻で雪女である雪子さんも来てくれるだろう。

 海端に状況を説明すれば、泥田坊の羽似さんもついてくるだろうし、ふたりの部屋の隣には女神であるメリーさんも住んでいる。

 メリーさんにまで話が届けば、女神ハイツの他の住人たちだって手を貸してくれるに違いない。

 垢澤さんは真面目な性格だから、落ち着いてみんなを誘導してくれることだろう。


 オレの予想したとおり、しばらくすると女神ハイツの面々がコーポ錠針へと駆けつけてくれた。

 結界があるとはいえ、メリーさんが女神の力を使えば、人間サイズ程度の抜け穴を作ることなど造作もなかった。


 雪子さんやぽよ太郎は、ぽよ美たち同様、暑さに弱い存在だと考えられるが。

 あらかじめ状況がわかっていれば、対策も立てられるというもの。

 メリーさんから女神のご加護を受け、雪子さんが冷気バリアを何重にも張って、こうして突撃してきてくれた。


 ぽよ美と水好さんには、持ってきてもらった大量の水を使って復活させる。

 冷華さんは雪子さんが吹雪を浴びせかけて現実世界に引き戻す。


 そこからは、一気に押せ押せムード。

 冷華さんと雪子さんのダブル吹雪攻撃、水好さんの大洪水のごとき水攻め、

 オマケに、羽似さんの泥団子攻撃や、ぽよ美・ぽよ太郎の粘液攻撃まで。

 ありとあらゆる能力を駆使して、104号室の先にある地獄の熱を冷ましていく。


 徐々にではあった。

 それでも、確実に効果は出ている。

 たまたま熱暴走が収まってきただけだったのかもしれないが。

 それから一時間もしないうちに、周囲の気温は正常値にまで下がっていた。




「今回は、本当にありがとう。閻魔として、心から感謝するよ」


 大家さんが頭を下げている。

 実に珍しい光景だ。


「うふふ、泉夢さんの機転は素晴らしかったですわね。

 わたしく、異常な暑さだとは思っていましたが、地獄の熱暴走だとまでは、思いもよりませんでしたわ」


 オレはコーポ錠針の住人で力になりそうなメンバーが尽きた段階で、次に女神ハイツの方のメンバーを思い浮かべた。

 もともと交流のあった面々もいたわけだから、助けを求める先としても不思議ではない選択ではあったわけだが。


 女神ハイツの住人は、前回の魑魅魍魎バトル大会では敵同士だった。

 その関係状、刺客を送り込まれるなど、大変なこともあった。

 だが、次の大会では味方になるという話を聞いていた。


 このあいだ、104号室に集められた際、大家さんとメリーさんは、人間であるオレたちに物の怪たちとの絆が大切だと語った。

 あのときは夫婦間の絆を前提として話していたのは確かだ。

 しかしそれは同時に、それぞれのアパートの住人すべてに対しても成り立つと、オレは考えている。


 お互いに信じ合い、頼り合い、助け合って生活する。

 交流を深めていくことで、自然とそんな関係になれるはずだ。

 今回はオレたちが助けてもらった側だが、女神ハイツの誰かがピンチに陥ったら、喜んで助ける側に回るだろう。


「お~、さすがダーリン! でも、一番絆が深いのは、絶対にあたしだけどね~!」


「ああ、もちろんだ」


 人前だというのに、べったり抱きついてくるぽよ美を、オレはしっかと受け止める。

 うん。いい感じにべちょべちょしている。

 完全に復活したようだな。よかったよかった。


「あんたたちは、相変わらずだね~」


「当たり前だよ~!」


 大家さんからそう言われ、ぽよ美は上機嫌で答える。

 さっきまでバケツの中で死にかけていたというのに。


「あたし、バケツプリンみたいにダーリンに飲まれちゃうのかと思ったよ~!」


「飲むわけないだろ!」


「え~~~~っ!? どうして飲んでくれないの~~~!?」


「だってほら……青臭いし」


「ひっどぉ~~~~い!」


 いくら愛していても、相手を飲み尽くすなんてありえない。

 カマキリはパートナーを食べてしまうとか、そういった例外もあるにはあるか……。

 絶対に食べられてしまう、というわけではないらしいが。


 とにかく。

 オレたちはこれからもいつも通り、仲よく暮らしていく。

 それだけは永久不変と言えるだろう。


「意地悪なダーリンなんて、全身で包み込んで溶かしちゃうぞ~♪」


 妻に包み込まれて溶けかける刺激的な日常もまた、永久不変だ。

 ……このあたりは、いい加減、変わってくれてもいいんだがな……。

 2つのアパートの住人たちの笑い声が響く中、オレはそんなことを考えていた。


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