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子どものいる風景 ~電車の中で~

作者: 成井隆

 電車はほとんど満席でした。

 入り口近くに、幼稚園の年長ぐらいの男の子と母親が並んで座っていました。親子は何か楽しそうに語らっていました。

 次の駅で電車が止まると、赤ちゃんを抱いた女性が乗ってきました。手には紙袋を提げ、いかにも大変そうでした。

 女性が乗ってくるのにいち早く気付いた母親は直ぐに立ち上がりました。そして(どうぞ)と席を譲ろうとしました。譲ろうかどうかというためらいはありませんでした。子どもを持つ同じ母親同士という意識がそうさせたのでしょう。

 赤ちゃんを抱いた女性は申し訳なさそうな仕草をしましたが、

「どうせ直ぐに降りるんですから、どうぞ」という優しい言葉に

「すみません」と、遠慮がちな態度で席に座わりました。

 

 男の子は母親が席を譲る一連の行為を黙って眺めていましたが、女性が隣に座ると、人なつっこい顔で、

「〇〇で降りるんだから、だいじょうぶなんだヨ」と、二つ先の駅名を口にしました。そして、赤ちゃんにほほえみかけたのでした。

 そこには、自分の母親を常に信頼し、そして自慢に思う少年の顔がありました。

 目的の駅に着いたとき、男の子は赤ちゃんに手を振りながら電車を降りていきました。女性が母親に会釈しました。母親は女性に微笑み返しました。

 ドアが閉まって電車が動き始めました。窓の外には、電車を降りた母親と男の子が手をつないでホームを歩く姿がありました。

 男の子は、この四月、どこかの小学校の新一年生になっているのでしょう。


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