マイナスのキルゾーン
この頃暑いと思います。
荒廃した都市の大通りに一人の少女が立っていた。
少女はボロボロのコートをはおり、フードを深く被っている。
少女は何かを警告しているようだった。
「 」
聞こえない、距離がありすぎて音が届かない。
距離を縮めようと少女に向かって歩いてみた。
だが距離は縮まらない。
進めば進むほど少女は距離を離して何かを呟く。
痺れを切らして走り出す。
とどかないのに手を伸ばす。
やはりとどかない。
何故?どうして?なんでとどかない?
疑問が怒りと悲しみに変わる。
願った、何に願ったかはわからないがただ「とどけ」と一言だけ願った。
瞬間、周りが黒くなり大地を染めた。黒く、黒く、真っ黒に染めていく。
少女は何かを叫んでいる。
「 」
距離がありすぎて音がとどかない。
焦っているようだ。
もしくは恐れているようでもあった。
少女は動けない。
少女の周りは黒だらけ、しかし少女のところだけが黒くならない。
何故だろう、わからない。
とりあえず今は少女に近づくことにした。
一歩、もう一歩と確実に近づく。
そうすると少女は静かに黒い地面を踏みしめながらこちらに向かってくる。
そして握手ができるほど互いに近づいてしまった。
少女は何かを呟いている。
「 」
声が小さすぎて聞こえない。
聞こえないはずなのにその呟きに恐怖を感じた。
少女が一歩近づく。
そして一言。
「消えろ、劣化人間」
そう、それは懐かしいフレーズであった。
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嫌な夢を見たような気がする。目が覚めるまで夢だと気づかないほどに現実じみていた。
心臓が落ち着かず、記憶がまとまらない、周りを確認する。
自分の部屋だ。
カーテンから差し込む光が眩しい。
「朝…か…」
そう呟くと何故だか時計が気になった。
携帯で時刻を確認…。
10:00
完全に遅刻であった。
読書ありがとうございました。