予・測・不・可・能
いきなり、後ろから伸びてきた手に 眼鏡を奪われた
「もう、何だよ・・・」
こんなことをする奴はひとりしかいない
振り向くと 想像した通り・・・
ふたつ年下の俺の彼女が 俺から奪った眼鏡をかけて笑っていた
「何やってる?」
「あたしも眼鏡かけてみようかなあ、って。似合う?」
「お前、目、悪いのか」
「うん、ふだんはコンタクトなの。知らなかった?」
知らなかった・・・
まだ、付き合ってひとつきにもならないし
でも
そうでなくてもこいつの行動は俺にとって謎だらけだ
「コンタクトで矯正できてるんならそれでいいだろ、なんでわざわざ眼鏡かけるんだ」
「うーん、だって今、眼鏡っ子ってはやってるみたいだし、慧ちゃんもそっちのほうが好きかなあ、って」
ペロっと舌を出す
くそ
可愛いじゃないか
行動も、言うことも
こういう不意打ちって反則じゃないのか
俺はたいがいのことはあらかじめ予測できると思っていた
ものごとにはすべからく 何らかの前兆がある
それを読んで 分析すれば
次に何が起こるかは予想できる
・・・はずだった
いや
実際、今まではそうだったんだ
だけど
こいつに会ってから 俺の予想は外れっぱなしだ
次に何をするか
何を言い出すか
全然予想がつかない
こんなことは初めてだ
でも、予想が裏切られることに
なんだかカタルシスを感じるのは何故なんだ
ダメだ
自分の感情すら予測できなくなってきた
「どうしたの?」
「いや・・・俺は眼鏡かけないほうがいいな・・」
「そう、どうして?」
俺は彼女の眼鏡を取った
不思議そうに俺を見上げる彼女
その腕を掴んで引き寄せる
そして
大きく目を見開いている彼女に顔を寄せて唇を重ねた
「ちょ、慧ちゃん・・・」
真っ赤になっている彼女に
ちょっと爽快感を覚える
たまにはこっちも予測不能の行動に出ないとな・・・
やられっぱなしは性にあわない
「両方眼鏡かけてたら、キスするときに面倒でしょうがない・・・」
「もう・・・」
拗ねたような表情でこっちを睨んでいる
ちょっとやりすぎたかな・・・
「ファーストキスなんだから、もっとロマンチックなシュチュエーションがよかった」
ロマンチック、ねえ・・・
どうもそういうのは苦手分野だ よくわからない
「だからね・・・」
「ん?」
「もういっかい、もっと優しくキスして・・・」
・・・
やっぱり予測不可能だった・・・
ほんと 理解の範囲を超えている
でも
まあ、いいや
この世界は不思議に満ちている
俺にとっての不思議の具現に
俺は再び唇を重ねた