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6.アガパンサス(その2)

おじさんこと、ケイスケさんとお仕事を始めて1週間ちょっと、今日は配達の日。開店時間を少し遅らせて、おじさんと配達の荷物をハイエースに詰め込んで運転席と助手席に乗り込むといつもの鍵でエンジンをかけた。配達先を覚えるまで、運転は私が担当することになっている。


今日最初に行くのは、自治会長さん家のお隣さんの二木のおじいちゃん家。いつものように、インターホンを押して扉を開ける。

「おはようございますー!ケイですー!」

「……おお、ケイか。いらっしゃい!すまんが、ちょっと手が離せなくてな。裏まで回ってこれるか?」

予想と反して、声は外から聞こえた。言われたとおり裏に回ると家の裏手にある竹林で作業しているおじいちゃんがいた。


「今年の笹を準備してるんだが、しばらく放って置いたから、時期じゃないが邪魔なのを少し間引いててな。」

「一人で大丈夫?手伝おうか?」

「今日の配達は、終わったのか?」

「まだだけど……。でもその笹、診療所の分もあるでしょ?終わったら、私持って行けるし……。」

「あー、じゃあこうしよう。」

「ケイs、じゃなくてケイちゃんが配達してくる間に、俺がここでじいさんを手伝う。配達が終わったら、戻ってきて俺と笹を回収する。どうだ?」

「いいんですか?」

「雇われてる身だからな。それに肉体労働なら俺のが向いてる。じいさんはどうだ?俺でもいいか?」

「うーん……。見かけない奴だがケイよりは丈夫そうだし、いいだろう。何よりケイの邪魔をせんで済むし、怪我もさせんで済みそうだからな。」

「じゃあ、そういうことで。悪いが配達頼むな。あと迎えよろしく。」

「わかりました。それでは、ケイスケさんおじいちゃんをお願いします。二木のおじいちゃん、ケイスケさんと笹をお願いします!」

配達の品物は縁側に置いて、一人車に戻って配達を再開する。


ちなみに、おじさんからの私の呼び方は「ケイちゃん」になった。最初は「ケイさん」だったけど、年上の人から「ケイさん」は経験がなくて気持ち悪いから「ケイちゃん」にしてもらった。


そしてそのまま特にトラブルもなく、配達が終わりおじいちゃんの家に戻ってきた。


「遅くなりました。お待たせしちゃってごめんなさい。」

「おお!おかえり、ケイもこっちで一緒に休憩にしよう!」

「あれ?なんかご機嫌だね~。ケイスケさんと仲良くなったの?」

「ああ、こいつ中々使える奴じゃったぞ。見た目より力もあるし、料理もできるみたいでな!昼飯を作ってもらった!」

「えっ?お料理できたんですか??」

「独身男性舐めるなよ。こっちは10代から一人暮らししてんだ。得意ではないが、食事くらい作れる。」

「それは、失礼しました。」

「ケイスケなら、ケイを嫁にやってもいいぞ。」

「ダメだよー?お料理できるからってそんな事言っちゃー。私も一応料理できるし、それにまだ結婚なんて考えてないから。」

「そうだよ、じいさん。どっちかって言うと、保護者だな。第一、歳が離れすぎてる。」


そんな冗談を聞き流しながら、ケイスケさんが作ってくれた料理で早めのお昼ご飯を食べて、笹を受け取って診療所へ出発!

のはずが……


「なぁ。竹まで貰ってどうするんだよ。」

「あはは……断り切れなくて。竹炭作ったりとか、竹馬とか?うーん、高校生組にも聞いてみます。」


車内では助手席のケイスケの肩のすぐ横まで立派な青竹がハイエースの後部座席を貫いている。竹がちょっと煩わしそうなのが口調に滲み出ていて、つい口元が笑ってしまう。そんな会話をしてるうちに診療所へ到着した。


「綾ちゃん、宗ちゃん、こんにちはー。笹届けにきましたー。」

「ケイ、いらっしゃい~。ん?笹?」

「二木のおじいちゃんとこに配達行ったから、預かって来た!」

「なるほどね……。ところで一人で来たの??」

「ううん。ケイスケさんは車で待っててもらってる! 立派な竹も貰っちゃって……」

「そう。じゃあ、早く戻ってあげなさい。」

「うん!じゃあまたねー。」


お店に戻って、竹を降ろして、入口の「配達中」を回収してお店を開ける。ケイスケさんには、ちょっと遅いけどお昼休憩に入ってもらった。さっきおじいちゃんのとこで休憩したって言われたけど、あれは別と言って納得してもらった。竹をどうするか考えながら、タブレットに候補を書き出していくーーー。


・竹炭

(量があるから時間かかるかも)

・竹馬

(誰が使う?)

・流しそうめん

(やってはみたい)

・竹飾り

(今は7月)


「うーん……。やっぱりののちゃんたちが来たら、アイデア出し協力してもらおう。」


今日の午後は、チョロチョロお客さんが多かった。

バスに何かあったのかな?高校生が少し多かった気がする。

ちなみに、店内が静かだけどケイスケさんはサボってる訳じゃない。休憩が終わったら、そのまま外の掃き掃除をしてくれて、中に戻ってきたら品出しとか店内を見て回って足りないものを補充してくれてた。在庫が少ないものもまとめてくれてて、夜になると発注するか相談してくれてる。私はついつい18時から閉店準備の時にやっちゃうから、時間がかかっちゃうけどケイスケさんが来てくれてからお金を数えるくらいしかしてない。

そんなことを考えてると、部活終わりくらいの時間になって、高校生組がやってきた。


「あ、みんな待ってたよー!」

「どうしたの?なんかあった?」(ののちゃん)

代表して聞いてくれるののちゃんに感謝しつつ、テラスでみんなに事情を話して、お店の裏に回って竹を見てもらった。


「「流しそうめんしたい!」」(ののちゃん、れおくん)

「「流しそうめん!?」」(ゆうちゃん、みずきくん)

「流しそうめん作り方……っと。」(けんくん)

ののちゃんとれおくんが思いついたままのテンションで欲望を口にする。ゆうちゃんとみずきくんは困惑。けんくんは何故か既に作り方を調べてる。


「……やっぱり?」

(何となく分かってはいたけど、やっぱり流しそうめん。わかる、やってみたいよね!)


「なるほどー。気をつければできそう!ケイちゃん、ダメ?」(ゆうちゃん)

「うっ……じゃあ明日は金曜日だから、明日の夕方からってどうかな?」

「「「賛成!」」」

「じゃあ、男子が流しそうめんのレール達。希々達2人が、そうめん準備だね。ケイちゃん、お店の裏のスペースならお店開いてる時間に作業しても邪魔にならないかな?」(けんくん)

「え?私も竹切ったり手伝うよ?みんなだけじゃ心配だし……。」

「おい、おっさん。そんな格好つなぎしてんだから、工具くらい使えんだろ?俺ら、手伝ってよ。そしたら、ケイさんは店休まなくて済むし、心配もかけないだろ。」(みずき)

「はぁ……わかったよ。じゃあ、けんくん動画見せてくれる?」

「これです。」

「あー、なるほど。あとでちゃんと確認しとく。」

「はい!じゃあ、残りの細かいことはAmuのグループで!解散っ!!」


ののちゃんの元気な号令と共に、高校生組は楽しそうに帰って行った。

お気づきの方もいるかもしれませんが、高校生組内のお兄ちゃん「けんくん」は、「ののちゃん」に激甘です。

いつか高校生組の話も書きたいです。

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