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日常の奇妙な短編集。

耳垢占い

作者: 三春星秋

不気味で健康に悪そうな青い光。

いつものようにネット掲示板を探す。

その中で一際、目を引いたのがあった。

「横浜の中華街にある、不思議な占いを知ってるか?」という掲示板。


マウスでクリックして見る。


するといきなり、喧嘩腰なコメントをしている奴がいる。


「どうでもいい書き込みすんなよ!占いとか本当につまらない」


それに対して火に油を注ぐ奴ら。

「過去に占いしてあなたは死にますって言われたんか笑」

「お前の方がつまらない笑」


こういうのには関わらないのが正解だ。


「中華街には何度か行ったことあるけど不思議な占いなんてあったかなぁ」

「占いなんて不思議なものばかりだろ笑」


「掲示板の主はどんな占いか知らないの?」

返信があった。

耳垢(みみあか)占いって言う、不思議な占い」

「それは不思議だなぁ笑」

永遠と流れる言葉の羅列(られつ)

収集がつかないのでパソコンをぴしゃりと閉じる。


「そういえば明日は土曜日か、せっかくなら行って探してみようかな」

少しの好奇心が心を鳴らす。


土曜日の朝。電車に乗って横浜の中華街に到着。どっしりと構えた門が建物の間に挟まれていて日本ではない異国に来たようだ。通りを歩いたりしたが見つからない。

やはり、デマだったかと夕方になってから思う。段々と明かりが灯り、夜が飲み込んでいく。ふと気になって路地の中に入る。どこか知らない場所に行ってしまうのではないのかと怖くなった。


木の看板に書かれている。「耳垢占い」やっと見つけることが出来た。まさか本当にあるとは誰も思わないだろう。


「そこのお前さん」

腰を丸めた小さな老婆がそこに居た。

「なんですか?」

「耳垢占い、やっていくかい?」

「では、せっかくなら」

「そうかい、耳を貸しな」

綿棒で掻いて耳の中を回したり、時に冷たくなったり、時に温かくなったりした。

「大丈夫ですか?耳の中が変な感じがするんですけど」

「大丈夫、大丈夫、これは良い兆候だ」

「そうなんですか?」

「おぉ!これは金の運が開けたぞ」

「金の運って凄いんですか?」

「お金持ちになれるぞ」

「本当ですか?怪しいですけど?」

「この湿っぽい感じそして黄色にも似た黄金の輝きと薄さ、完璧だ!」

「よく分からないですけど凄いことは分かりました」

「良いかい?耳の穴、かっぽじったからよく聞こえると思うが私が言う事を紙をやるからメモしといてな」



●一週間の中で宝くじを買うこと、いくらでも構わない。


●そのお金を全部、使ってはならない。


●目の前で困っている人を助けること。



「この三つを守ることでお金も貰えるしお前さんの夢も叶うぞ」


そう言われてから宝くじを買って、家で当選しているか確認してみると本当に当選していた。


それから一週間、宝くじを買い漁った。

働かなくても遊んで暮らして豪遊しても減らないほどのお金。


とても幸せな人生。朝の満員電車で通勤している会社員をつまみにして飲む酒は格別だ。


それから一年が経って結婚をして子供が産まれて豪邸に住む大富豪となった。

歩道橋を歩いているとあの時の老婆を見かける。

沢山の荷物を持ち、今にも転びそうで危なっかしい。

ビニール袋の底が裂けて物が階段に落ちていく。その拍子に老婆が転がる。

肌が冷たく感じた。

怖くなって急いで家に帰る。

高鳴る心臓を置いて大丈夫だ、大丈夫だ。

と落ち着かせる。



次の朝。

テレビをつけてニュースを見る。

昨日の歩道橋の事が放送されていた。

老婆は意識不明の状態で入院をしているらしい。

安心して溜息を吐く。ずっと重く肩に伸し掛かった罪悪感が少し和らいでいくのが感じられた。

死んでいないのが幸いである。



いつもの日常に戻っていく。家族を得て、お金を持ち、豪邸に住む。

なんという幸せ。そう、幸せ。

男は夜、寝るときそう思った。




瞼を開けると視界が一瞬、白くなって眩しい。

「お名前、分かりますか?」

白い天使の女性の声が聞こえる。


病室にある洗面器の鏡を見るとそこに「老婆」が映っていた。



「横浜の中華街にある、不思議な占いを知ってる?」という掲示板。


また、書き込んでいく毎日。

日々、形を変えてインターネットに残り続ける。



「そこのお前さん」

「なんですか?」

「耳垢占い、やっていくかい?」


〜〜〜完〜〜〜

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