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Mercenary  作者: KAIN
・第一章:依頼

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9/13

・第九話

 装甲車は、見た目の物々しさに反して揺れも少なく、随分と快適な乗り心地だった。

 ルシアは握りしめた拳を開かずに、黙って車内に佇んでいた。恐らくはかなりの速度で走っていると思われるが、特に脚を踏ん張ることも無く立っていられるのは、やはりこの車が高性能なのだろう。ルシアは黙って佇んでいた。

「おい」

 声がする。

 三人のうちの一人、どうやらこの『傭兵団』のリーダーらしい青年だ。どういう訳か銃では無く刀を手に、刀身を磨いている。随分と落ち着き払った様子で車両の後部に腰を下ろしている、刀を磨いている仕草や雰囲気は優雅にすら見える。

 その青年が、じろりとルシアを睨みつける。

「いつまで突っ立っているつもりだ?」

 青年が言う。

「……な 何が来ても、対応できるように……」

 ルシアはおずおずと言う。

「この車の装甲は、俺が特殊設計した自信作だよ」

 ははは、と。

 装甲車の運転席に座る青年が、軽い口調で言う。こちらに背を向けているせいでその顔は見えないが、きっとその顔にはにやついた笑みが浮かんでいるのだろう。

「例え機銃を撃たれたって……」

 そう運転席の青年が言いかけた時だった。

 けたたましい警告音が、突如として鳴り響いた。

「ひっ!?」

 ルシアは声を上げた。

「何事だ?」

 リーダーの青年が、刀から顔を上げ、運転席の青年に問いかける。

「……早速おいでなすった様だぜ」

 くくく、と。運転席の青年が楽しそうに笑う。

 そのままカタカタと青年が運転席の操作盤を操作する、同時に、ぴ、と電子音が響き、運転席横の操作盤に設置されたモニターに何かが映る。

「ヘリ……」

 ルシアは蒼白な顔で呟く。黒いヘリ、その機体の下部には機銃が取り付けられ、それは真っ直ぐにモニターの方、つまりはこの車に向けられていた。そのまま機銃が放たれ、オレンジ色の光が閃いた。

「い いやあっ!!」

 ルシアが悲鳴を上げる。

「騒ぐな」

 リーダーの青年がぴしゃりと言い放つ。それと同時にがききききっ!! と甲高い金属音が響く。

「うう……」

 ルシアは小さい声で呻く。さっきまで何の振動も無かった車内に、微かながらも振動が伝わって来る。

「ど どうすれば……」

 ルシアは呻くように言う。

「黙って座ってろ」

 リーダーの青年が言う。

「そ そんな……だってあれは……」

 ルシアが不安そうに言うが、リーダーの青年はそれ以上は何も言わず、ずっと黙っていたもう一人の青年に向き直る。

「落とせるか?」

「問題は無い」

 リーダーの問いに、そのもう一人の青年。ずっと黙り混んで、黙々と長い銃身の、ライフル銃、というのだろうか? その銃身を磨いていた青年に向かって言う。

「あの機銃なら、そうだな……あと十秒ってところか」

 運転席の青年が言う。

「……十分だ」

 青年は言いながら銃を担ぎ上げる。

 やがて響いていた金属音が止まる。その青年はその瞬間に動き出す。

 ゆっくりと立ち上がると同時に、運転席の青年が操作盤を叩く。

 うぃい、んと音が響き、天井がゆっくりと開いていく。

 青年は銃を構え、ゆっくりと天井から顔を出した。


 ごうごうと、風が吹き付ける。

 愛用のライフル銃を構え、スコープを覗き込む。ヘリは一機、分厚い、恐らくは防弾ガラスに阻まれてコクピットの中は見えないが……

 あの機体の大きさならば、操縦者は一人だろう。車体には何処の国籍かを示すものは何も見当たらない、じっくりと調べれば見つかるかも知れないが、残念ながら今はそんな余裕は無い。それに……

 何処の国に所属していようと関係ない。自分達の任務はあの少女を無事に『レオネ国』に送り届ければ良いのだ。急がないと再び機銃斉射が再開されてしまう。

 スコープを覗き込みながら。

 銃の引き金に指をかける。

 自分は。

 『死霊(レイス)』。

 『標的(ターゲツト)』に死を与える。

 余計な事を考える必要は無い。ただ……

 ただ、引き金を引けば良い。

 そして確実に『標的』を仕留め。

 自分達の勝利に貢献する。

 思いながら……

 『死霊』。

 フリードは、引き金を引いた。


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