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Mercenary  作者: KAIN
・第一章:依頼

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5/13

・第五話

 ディスプレイの前に座っていたのは一人の青年。くるりと振り返った青年の顔にはクマがある。いつもいつもモニターとにらめっこをしていて、滅多に外に出ない変わり者だが、こいつの作り出す様々な機械類やドローンには、任務を遂行する上でいつも助けられている。その反面、こいつは警戒心も強く、常に自室であるこのコテージの周囲には沢山のドローンが飛び回り、近づく者を厳しく監視していた。

「よう」

 そいつが朗らかに笑って言う。

 ディナルも青年も何も言わない。ただ無言で青年の顔と、モニターを見ていた。

「で?」

 口を開いたのはディナルの横にいる青年だ。

「任務なんだろう? 誰からの依頼でどんな……」

「そう急かすなよー、仮にも狙撃手なら待つ事だって大事だろ?」

 にやりと笑って、モニターの前に座る青年が言う。そして……

「フリード」

 モニターの前に座る青年が、ディナルの横にいる青年に向かって笑いかける。

 フリード。そう呼ばれた青年は興味もなさそうにふん、と鼻を鳴らした。

「俺はお前と違って、無駄が嫌いなだけだ、解ったのなら早く教えろ」

 そして青年。

 フリードは、モニター前に座る青年に向かって言う。

「……ジャック」

 その言葉に。

 モニター前に座る青年、ジャックは軽く笑う。


 ディナル、コードーネーム、『亡霊ファントム

 ジャック、コードネーム、『騒霊ポルターガイスト

 フリード、コードネーム、『死霊レイス


 本名なのか、それともあだ名なのか、何故傭兵になったのか、何処の生まれなのか、この傭兵団『亡霊ファントム』を結成してもう数年ほどが経過しているが、今まで一度も話した事が無い。今後も多分話す事は無いだろう。

 それで別に構わない。自分達は傭兵団として任務をこなし、報酬を得る。それ以外の事には関心が無い。こいつらの過去などどうだろうと関係ない。ただ『使える』か『使えない』かだ。

 そしてこいつらは『使える』。そう判断したからこそ、ディナルはずっとこの二人と行動を共にしている。そしてその期待を二人は裏切らない。

 それで十分だ。


「それで?」

 フリードがもう一度面倒そうに言う。

「一体どんな奴からの『依頼』なんだ?」

 その言葉に、ジャックは腕を組み、わざとらしくふふん、と笑ってみせた。

「驚くなよ、今回は……」

 にやつきながらジャックが言う。

「今回の『依頼人』は、『エイブ国』側だ」

「内容は?」

 ディナルが問いかける。

「おいおい」

 ジャックがにやついたままで言う。

「正式に引き受けてもいないのに、内容を聞いても良いのかい?」

「受けるかどうかは、内容を聞いてから判断する。いつもそうしているだろう?」

 ディナルはにこりともせずに言う。

 その言葉にジャックは肩をすくめた。

「オーケー、ただし……聞いてから後悔するなよ?」

 言いながらジャックは、鼻歌交じりにモニターの前のキーボードを操作する。


 カタカタと響く軽快な音を聞きながら、ディナルは目を閉じた。

 『内容を聞いても良いのかい?』

 ジャックの言葉を思い出す。いつも自分達は、内容を聞いてから受けるか否かを判断していた。確実にこなせる『依頼』でなければ受けない。それこそが傭兵として、自分達が生き残る為の秘訣だ。だからこそ自分達はここまでやってこられたのだ。

 それをわざわざ確認する、という事はつまり。

 内容を聞いたら、もう断れない。

 そういう事だろうか?

 或いは……

 ディナルは目を閉じたままで思う。

 或いは……危険な内容なのかも知れない。

 だが。

 どんな任務であろうとも、自分達は必ず。

 必ず、生き残る。


 ディナルが目を開けると、目の前のモニターに人が映っていた。

 六十代半ば、という年齢の白髪の男。仕立ての良いスーツに身を包み、顔には温厚そうな笑顔が浮かんでいる。この男には見覚えがある……確か……

「……アルソン外交大臣?」

 フリードが低い声で言う。

「エイブ国の外交大臣のか?」

 ディナルは言う。じっと目の前の男の顔を見る。確かに資料でしか見た事が無いけれどその顔は間違いなく、『エイブ国』の外交大臣、アルソンだ。


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