表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Mercenary  作者: KAIN
・第一章:依頼
4/4

・第四話

 コテージの扉を開け、外に出る。

 ひゅうう、と、そろそろ冬になりかけの、ややひんやりとした空気がディナルの全身をすっぽりと包む。周囲を見回しても、この辺りの草木は全て戦火で焼き尽くされ、今では荒涼とした岩肌が広がるだけだ。それでも、ちゃんと見てみれば、この岩だらけの山にも少しではあるが、生き物や植物が生息している。

 そんな小さい動植物の営みを見るのが、ディナルは好きだった。小さい生き物でも、自分達と同じ場所に住む者達……彼らがいる場所にならば、自分達のような、『亡霊』でも、そこに暮らして良い、と言われている。

 そんな気が、した。

 そんな事を考えていた時だ。


「よう」


 声がする。

 ディナルは顔を上げた、ディナルが寝泊まりするコテージとは、別なコテージの扉が開いて、一人の男が顔を出していた。

 ディナルと同い年くらいの若い青年だ。もっとも、彼の正確な年齢をディナルは知らない、そもそも……

 ディナルは軽く笑う。

 そもそも、自分の年齢すら、ディナルははっきりと覚えていない。物心ついた時から戦場にいて、そして……

 そして、戦って来た。この青年がどんな人生を歩んで来たのか、それをディナルは知らないけれど、きっと彼も……

 彼も、似た様なものだろう。

 ディナルは、そう思った。

「……ああ」

 ディナルは、青年に向かって軽く手を挙げる。

「良い朝だな? ディナル」

 青年が言う。

「……本名で呼ぶな」

 ディナルは顔をしかめる。

「おいおい」

 青年は、軽く笑う。

「今は、『任務』の時間じゃないだろう?」

 青年は告げた。

 その言葉に……ディナルは軽く息を吐く。

「『依頼』が入ったんだろう? ならばもう『任務』の時間だ」

 ディナルは言う。

 その言葉に……

 青年は、軽く苦笑いを浮かべる。

「相変わらず、お堅い事だな」

 青年が言う。

 ディナルは、何も言わないで、黙って歩き出す。

 目指す場所は、もう一つのコテージ。

 そこに、自分にさっき通信を送って来た相手がいる。

 そして……

 そこでは、新しい『依頼』が待っている。

 それだけで、自分には……

 自分には、十分だった。


 やがて、もう一つのコテージの前に、二人は立つ。

 ぶううううううん……と、耳障りなプロペラ音が、二人に向かって近づいて来る。それが何なのかはすぐに解った。

 ドローンだ、丸い円盤にプロペラが取り付けられたドローン、昨日の『仕事』で見た時には、その中心から飛び出す突起は銃口だったけれど、今、自分達二人の目の前を飛んでいるドローンに取り付けられているのは、どうやらカメラらしい、そのカメラが、二人の様子を音もなく撮影している。

 ややあって。


 ピンポン……


 と。

 甲高い電子音が響く。

 それと同時に。


 がちゃり……


 微かな金属音。

 目の前のコテージの扉の鍵が、ゆっくりと開けられる。

 そのまま、ゆっくりと……

 ゆっくりと、扉が開けられる。

「どうぞ入ってくれ」

 コテージの奥から声がする。

 ディナルと青年は、ゆっくりと。

 ゆっくりと、室内に入る。

 薄暗い室内、この中には、大量のPCが置かれているらしい。太陽の熱はPCに良く無い、という事で、このコテージの中は、いつも薄暗い。

 そして。

 コテージの奥。

 ぼんやりとしたPCのディスプレイの光が照らし出す室内に、三人は集まった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ