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Mercenary  作者: KAIN
序章:任務
2/4

・第二話

 ざざざざざ……と。

 滑る様に丘の上を駆け下り、そのまま刀を振りかぶって、装甲車に向かって走る。相手の車を停める、がちゃ、がちゃ、と音がして、トラックの方からバラバラと、迷彩服の兵隊達が現れる。

 ディナルは兵士達を無視し、だっ、と装甲車に向かって走る。

 兵士達が、ばっ、と正面に立ちはだかる。だが……


 タァーン……


 遠方から聞こえたのは、銃声。

 そして、正面に立つ兵士達のうちの一人の頭から、ばあっ、と血がしぶく。

 そのまま、その兵士はどう、と倒れる。


『刀なんて……』


 耳に取り付けた通信機から呆れた声がする。


『時代錯誤なものを使っているから、近づいて戦うしか出来ないんだぜ? 隊長』


「『死霊』(レイス)か?」


 ディナルは通信機に向かって言う。だが相手は何も言わず、さらにもう一発の銃声が轟く。正面に立つ兵士達のうちの一人の頭から、またしても血がしぶく。

「くっ……」

 別な兵士が呻く。

「『狙撃手』(スナイパー)か!?」

 その兵士は言いながら、ばっ、とポケットから銃を取り出す。そのまま銃を手に、何処かに向かって走り出そうとする。だが……


 ぶぅううううう……


 聞こえたのは……

 まるで小さい羽根が回る様な音。そして……

 兵士達の頭上に、何かが飛んで来る。そして。


 ががががががががっ!!


 と。

 銃声が轟く。銃を手にした兵士の身体に、複数の穴が穿たれ、そのままどさり、と仰向けに倒れる。

「な 何だ!?」

 兵士の一人が声を荒げる。

 いつの間にか、ディナルと集まった兵士達の周囲を、プロペラの付いたドローンがいくつも飛び回っている。

『どうだい?』

 通信機から聞こえたのは『騒霊』の声。

『俺の『相棒』達は?』

 そのまま、ドローンが、レーザーポインタを一斉に兵士達に当てる。ディナルは無視して、その兵士達の横をばっ、と走り抜けて装甲車に飛びつく。

 そして。

 ドローンの銃声。

 さらには、『死霊』のスナイパーライフルの狙撃音が同時に響く。


 装甲車の運転席に飛びついたディナルは、そのまま装甲車に乗り込もうとする。

 だが。

 ばっ、と。

 運転席から、誰かが飛び出して来る。それは迷彩服を着た敵方の兵士だった。

 ディナルは刀を構え、そのまま相手と向き合う。相手の手には、ぎらり、と輝く軍用のナイフが握られていた。そのままだっ、と相手がこちらに突っ込んで来る。

 繰り出されたナイフは、正確にこちらの心臓を狙っている、だがディナルは動じた様子も無く、刀の柄尻をぶんっ、と振り下ろして相手の手首を打ち付ける。

 ごぎ、と鈍い音がして、相手の手首の骨が砕ける。手から力が抜け、ナイフがぼろ、と地面の上に落ちる、ディナルはそのまま刃を返し、相手の懐に踏み込み、脇腹を浅く斬り裂く。赤黒い血が、一気にばっ、と噴き出す。

 ディナルはそのまま、ぶんっ、と刀を振るい、血を払い落とす。相手の身体がどう、とその場に倒れ、動きを止める。

 ディナルはそのまま、ふん、と鼻を鳴らして刀を鞘に収めた。

 そのまま無言で装甲車に近づいて行き、開きっぱなしになっていた運転席の扉から車内に入り、背後の荷台を開ける。

 そのままゆっくりと……

 ゆっくりと、背後に回り込んで小さい木箱に入った荷を下ろす。

 前線に届ける物資、中身がなんなのかは聞いていないし興味も無い。『任務』はただ一つ、これを回収して運ぶ、それだけの事だ。相手が、いかにも積み荷を積んでいそうなトラックに兵士を乗らせ、兵士が乗っていそうな装甲車に敢えて積み荷を積んでいた、というのは、なかなか上手く考えたものだが……

 ぶううううううん、と音がする。『騒霊』の『相棒』のドローンだった。小さい銀色の円盤の上にプロペラが取り付けられ、正面には黒いカメラアイが取り付けられている、このカメラには、ディナルは知らないが、暗視機能やら、赤外線のカメラやらの機能も取り付けられており、物体を透視して物を探す事も出来る、というわけだ。

 そのままディナルはゆっくりと木箱を持って歩き出す。

 さっきまで兵士達が集まっていた辺りを見る。

 すでにそこに立っていた兵士達は、全員が倒れてしまっている、それをやった人間の姿は無い、ただドローンが、まるで小鳥の様に飛び回っているだけだ。

 ディナルはゆっくりと歩き、木箱を車から離れた場所に置き、ゆっくりとトラックに近づいて行き、燃料タンクの蓋を開ける、そのままとぼとぼと零れた燃料に向かって、ポケットから取り出したライターに火を点け、ぽんと放り投げる。

 そのままディナルはゆっくりと車から離れて行く。

 そして……


 爆発音が、轟いた。


 ディナルは爆風を背に受けながら、そのまま歩き出す。

『相変わらずだなー』

 通信機から『騒霊』の声がする。

「余計な痕跡は残さない、そうで無いと……」

『我々の実力や戦いの手口などから、我らの『実力』が知られてしまう、だから敵は全て殺し、そして痕跡も消し去る』

 『死霊』の声がする。

『それが我々のやり方だ、そうだろう?』

 そして。

 『死霊』が通信機の向こうから言う。

『『亡霊』(ファントム)』

 『亡霊』(ファントム)。

 そう呼ばれ、ディナルは……

 ゆっくりと、頷いた。


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