・第十一話
「やれやれ」
佇む三つの影のうち、一番小柄な影がのんびりと口を開いた。
「このヘリ、一応それなりにチューンナップしておいたんだぜー? 呆気なく打ち落とされるとはひでえなあ……」
小柄な影は、ぶつぶつとぼやきながら懐から取り出したタブレットを操作していく。画面上に様々なデーターが表示されるが、何のデーターを入力、解析しているのかは彼しか知らないし、それにどうでも良い事だ。
「……次の手はあるのか?」
三つの影のうちの一つ。真ん中に佇む影が淡々とした口調で言う。
「……もちろんあるさ、既に準備はしてあるよ」
小柄な影が、笑いながら言う。
真ん中の男はそれに何も言わず、その隣にいる大柄な男に向かって言う。
「あの三人をどう見る?」
「……あのスナイパーは……」
大柄な男が言う。
「まだ全然本気では無かったな。奴が本気で戦ったらどうなるのか……見てみたくなってきた」
「だったら俺は」
小柄な影が、まだタブレットを操作したままで言う。
「あの車を走るようにプログラムした奴と戦いてえなあ、ありゃあ相当な知識がある奴だぜ」
くくく、と。
小柄な男が言う。
「……あいつは、俺が直接潰してやる」
小柄な男はそう言って、またしてもタブレットを操作した。
「良いだろう」
真ん中に立つ男は、はっきりとした口調で言う。
「その二人はお前達に任せる、どのみちあいつらは、生きている限りは『任務』を遂行しようとするだろう」
「何で解るんだい?」
小柄な男が言う。
真ん中の男は、小さく笑い声を漏らす。
「少しだけ見ただけで解るさ、奴らはそういう『タイプ』だ」
ふふ、と。男は笑う。
その言葉に他の二人も軽く笑う。
その瞬間。
ぼおんっ!!
轟音が轟き、炎上していたヘリが爆発する。どうやら燃料にまで火が燃え移ったらしい。
今まで影になっていた三人の姿が、爆発に照らされて浮かび上がる。
いずれもが黒いライダースーツ。
そして黒いフルフェイスのメットを被った三人の男だった。
三人は無言のままで、燃えさかる炎を。
否。
その向こうにいるであろう三人の姿を……炎の向こうから見透かしていた。
装甲車は相変わらず、全く振動を感じさせない快適な走りで進んでいく。
もともと道も整備されているのだから、揺れもしないのだろう。ルシアは床の上に座りながら思った。
「あの……」
ルシアは、三人のリーダー格であるディナルの顔を見て言う。
「この道を通っても、大丈夫なんですか? その……さっきのヘリみたいなのが来たら……」
「無意味だ」
ディナルは淡々とした口調で言う。
「いきなり襲撃してくるような連中だ、どのルートを辿っても、すぐにまた襲って来るだろうさ、だったら最短ルートを通る方がずっと手っ取り早い」
ディナルはふん、と鼻を鳴らして言う。
ルシアは何も言わない。
結局それ以上は会話らしい会話も無く、ルシアは黙り混んでいた。
ややあって。
「あの」
ルシアは、もう一度口を開く。
「皆さんは、どうして傭兵になろうと思ったんですか?」
ディナルの方を見ながら問いかける。
「それは……」
ディナルは軽く息を吐いて言う。
「この『仕事』に、何か関係のある質問か?」
じっと。
鋭い目つきで真っ直ぐに見据えられ、ルシアは思わず身体をすくませる。
「おいおい」
ジャックが運転席で、相変わらずコンソールを操作しながら言う。
「あんまし女の子を怖がらせるなよ?」
ジャックが言う。フリードの方は何も言わず、興味が無いという様子でライフル銃を磨いていた。
「……関係は、ありませんね」
ルシアは言う。
「何となく、聞いてみたくなっただけです、ただの雑談ですよ」
じっと。
ディナルの顔を見る。彼らの実力がどれほどのものか、先ほどの戦いだけでも十分に解る。あれだけの実力があれば……きっと……どちらかの国で正規の兵として雇って貰えるだろう。にも関わらず、敢えて傭兵……しかもどちらに味方するのか、金次第で選ぶという立場を貫いているのは……一体どうしてなのか……?
ルシアはディナルの目を見ていた。何処か……
何処か、寂しそうにも見えるその目を。




