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さらば王都よ、旅立つ第一王子は……魔王復活が迫る中、私との婚約を破棄し隣国の美人のもとへ逃げるクズです

作者: 甘い秋空
掲載日:2023/12/28



「僕は、フランとの婚約を破棄する」


 栗毛が揺れる第一王子が、すまなそうに、私へ言いました。


 私と第一王子の間を、遮るように、風が吹きます。



 王宮の中庭、聖剣が台座に刺さる記念碑の前です。


(なぜ、旅立ちの挨拶をしたタイミングで……)


 第一王子は、貴族たちに旅立ちの挨拶を終えた直後、私との婚約破棄を宣言しました。


 私や集まった人々は、全て軍服姿です。


 王宮の頭上には、瘴気が広がり、空は朝から晴れているはずなのに、曇り空のように薄暗いです。


 私の銀髪も、風に揺れます。



「このままだと、午後には魔王が復活するだろう」

 第一王子が空を見上げます。


「なぜ、婚約を破棄なさるのですか」

「政略結婚ではありますが、私に何か問題でも?」


 私は、第一王子を見つめます。





「隣国の聖女ならば、この瘴気を浄化できる」

 第一王子は、空を見つめたままです。



「僕はこれから、隣国の王女を連れ帰るため、早馬に乗って行ってくる」


「道中は危険が多い」

「僕に何かあった時、貴女を悲しませたくはない」


 やっと、私を見てくれました。



 貴方が何かするつもりだと、心の内が言葉に漏れ出ています。


 そして、貴方に何かあったら、私が悲しむと思っているのですね。……そんなわけないのに。


 私は、悲しむフリをして、呆れます。



「この聖剣を抜くことが出来れば、魔王の復活を止められるが、僕を含め、誰も抜くことが出来なかった」


 第一王子は、聖剣に手をかけますが、ビクともしません。



 聖剣は、魔王を倒した聖戦士が所持していた剣と言われています。


 石の台座に、刀身が半分くらい刺さっており、王都の歴史上で抜いたものは、いないとされています。


 皆が聖剣に視線を移しますが、聖剣は何も語りません。



 なぜ、刺さっている刀身が半分くらいだと、私だけが知っているのか、それは秘密です。


 可愛い令嬢が聖剣を抜いたとなれば、色々と面倒なことが起き、困るからです。


 私は、目を伏せます。





「僕は、必ず、隣国の聖女を連れて帰る」

 第一王子は、力いっぱい宣言しました。



 しかし、聞いている貴族たちは、しらけています。


 彼の宣言は、魔王の復活を阻止するとか、王都を守ることではなく、聖女を連れて帰ることが目的だと、貴族たちは気が付いたようです。



 第一王子は、中庭を去ろうと、背を向けました。

 急いで、この国から逃げるつもりです。


 私は、悲しみよりも、怒りが湧いてきました。



『力が貯まってくるぞ……もう少しだ……』頭上から、魔王らしき声が響き落ちてきました。



 早馬でも隣国との往復に6日は必要です。魔王の復活に間に合うはずがありません。


 私は、逃げるつもりの第一王子を睨みます。

 風が少し強くなってきました。




「隣国の聖女様のお顔は分かりますか、偽者と区別はつきますか?」


 私は、心配そうな表情を作って、彼を引き留めます。



「もちろんだ、隣国との交流会で、しっかり覚えた」

「夢でデートを重ねているから、間違えることはない」


 振り返った第一王子が、自信満々に答えました。

 彼の頭は、お花畑のようです。



 先週、隣国の交流会で、第一王子は、隣国の聖女と踊っていました。


(隣国の聖女は、絶世の美人でした……)


 ダンスを、婚約者である私よりも数多く、隣国の聖女に強要しました。これは、彼が一目ぼれしたぞと、会場でささやかれました。



『復活する時は満ちた……』さっきから、頭上がうるさいです。





「兄上、早馬の用意が出来ました」


 第二王子が報告に来ました。


 黒髪のイケメンで、政治手腕に長けていると貴族間で噂のクロガネ様です。



「護衛たちは王都に残って戦うと言っており、兄上一人の旅になりますが、大丈夫ですか?」


 クロガネ様が心配そうな顔で尋ねます。





「大丈夫だ、僕がやらねば、誰がやる! 隣国の聖女は、僕がもらう」


 第一王子の鼻息は荒いです。まるで馬のようです。



「やはり、ダメか、抜けない」


 第二王子が、聖剣を抜こうと試みています。



「クロガネ様でも抜けませんか。なぜでしょう?」


 私は、抜けないほうが不思議です。



「では、僕は、隣国の王女に会いに行くから」


 第一王子が、嬉々として中庭から去っていきます。



 残る私たちは、彼を、怒りの瞳で睨みつけます。

 誰も第一王子を止めません。



『絶望を味わえ……聖戦士の血筋よ……』も〜、頭上の声がうるさいって。





「フラン、貴女なら、この聖剣を抜けるんじゃないのか?」


 黒髪と同じ色の瞳が、まっすぐに私の緑色の瞳を見つめます。



「クロガネ様、そ、そんなわけないでしょ。なぜ、そ、そんなことを言うのですか」


 彼の言葉にびっくりして、私は少し慌てました。



「フランが悲しむ時と、王都を守る聖なる力が弱まる時が、妙に一致している」


 彼は、幼い頃と同じように、私を見つめます。



「クロガネ様は、幼い頃から、私が悲しんでいると、元気付けてくれましたね」


「嬉しかったです。でも、それは、王都を心配しての言葉だったのですか?」


 私の初恋は、幻だったようで、少し悲しい気持ちになりました。





「そんなことはない、俺の、初恋の相手を護りたい気持ちに、今も変わりはない」


 クロガネ様が、私を見つめたまま、近づいてきます。


 こ、これは、キスへつながる予感がします。



「王族として、国民を護る気持ちはある」

「しかし、フランを護る気持ちは、俺個人の気持ちだ」



「王都に残る貴族たち、護衛兵たちは、愛する人を護るため、歯を食いしばって、ここに立っているんだ」


 周囲の貴族たち、護衛兵たちが頷いています。



『復活だ……全てを滅ぼしてやろう……』この声、うるさいって。



「うるさいって、このクソ魔王!」


 私は、王宮の上に広がる瘴気に浮かんだ、魔王の顔に向かって、怒鳴りました。



「どうした、フラン、何がうるさいんだ?」


 クロガネ様は、私の怒鳴り声に驚いています。





 私は、聖剣を抜いて、頭上に掲げます。


「バリバリバリ!」


 イナズマが、瘴気に浮かんだ魔王の顔に向かって、駆け上がります。



 クロガネ様だけでなく、貴族たちも、驚愕します。



 魔王の顔が砕け散り、瘴気が消え去り、青空が戻りました。





 私と第二王子を、歓喜した貴族たちが祝福します。


 私たちは、魔王を倒した英雄となったようです。




    ◇




 王都を出てすぐの街道脇です。

 身ぐるみはがされた遺体が、見つかりました。


 第一王子は行方不明です。

 国を捨てた王族を、神は許しません。




     ◇




 青空の下、王宮の中庭に、着飾った人々が集まり、歓談しています。



 聖剣は、台座に刺さったままです。



 私たちの結婚式に、隣国の聖女からも、参列して頂きました。もちろん、夫である隣国の王子と、息子も一緒です。


 隣国の聖女は、夫と息子がいても、絶世の美人です。



「フランの方がきれいだよ」


 新郎のクロガネ様が、私の気持ちに気が付き、元気付けてくれます。




「「幸福なときも困難なときも、いついかなる時もお互いを愛することを誓います」」


  王太子となったクロガネ様と私は、聖剣の前で、永遠の愛を誓いました。





 ━━ fin ━━




お読みいただきありがとうございました。


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面白かったら星5つ、もう少し頑張れでしたら星1つなど、正直に感じた気持ちを聞かせて頂ければ、とても嬉しいです。


いつも、感想、レビュー、誤字報告を頂き、感謝しております。この場を借りて御礼申し上げます。ありがとうございました。

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