6話 異端者
翌日になり、早朝。私が着いた時には、既に学園の正門にグループごとに集合がかけられていた。・・・そして・・・
「ねえ、あれってアルラウネではありませんこと?」
「まあ、本当ですわ。学友会に入ったって本当なのかしら。」
「まさか、どうやったのか知りませんが、ウィリアム様達を誑かしたに違いありませんわ」
「入学式の頃からおかしいと思っていたのですよ。星があんなに取れるなんて」
「聞けば、魔力無しの異端なんですって?才能も無いのに、学友会に入れるなんてありえませんわ」
などと、わざと聞こえるように喋っているのか、本当に聞こえてないと思っているのか、全部丸聞こえな会話をこちらにうっすら視線を向けながら令嬢グループがやっている。しかもほとんどが上級生の。一方の令息グループはというと・・・
「俺ですら突破できないあの試験をあんなやつが突破できるはずがない」
「いくら積んだんだ?」
「異端のやることだ。ああすることでしか自分を満足させられないのだろう」
などの否定的な意見と、
「アルラウネ嬢はあの試験を突破できるぐらい頭がいいんだな」
「夜会の時から思っていたが、上二人とは雲泥の差だよな」
「私のような使えない人材が言うのも何だが、アルラウネ嬢のような優秀な人材が、この先の王国には必要だな」
などの肯定的な意見と、
「あ~~~。学友会の(ピーー)がぁぁ!恨むぞアルラウネこのアマがァァ!」
「いや待て、学友会でアルラウネを(ピーー)する(ピーー)のような(ピーー)を・・・」
「いやここはあえてアルラウネ嬢を(ピーー)させて(ピーー)する展開にしてそれを他のメンバーが(ピーー)するような・・・」
などの変態的な意見が乱立していた。・・・うん、カオス。・・・正直学友会は美形令息ばっかだったからBL狂いは居るだろうなとは思っていた。・・・意外に多くて後悔した(しかも同性側に)。ちなみにクラスメイト達はというと・・・
「まあ、アルラウネ様なので可怪しくは無いのではなくて?」
「まあ、あいつだからな」
などとなるべく我関せずを決め込みたい御様子だった。・・・私としては多分それがいいと思う。
そうして私は色々陰口を叩かれながらも学友会の面々と合流する。メンバーは基本的に自由人が多いため、私が合流したときにいたのは3人だけだったが。
「おはようございます。ウィリアム様、レヴィリック様、ダリアン様。」
「別にもう正式に加入が決まっているんだから様付けはいらない、敬語もいらない。それが学友会のルールだ。」
「そうだぞ。それにレヴィリックはダーラ辺境伯家、俺はゴレアス伯爵家な上に妹とも仲良くしてもらっているんだ。身分はそっちのほうが高い。気を使う必要はない。」
「・・・人目もありますゆえ、そういう訳にはいきません。了承ください。」
他愛のない話をしていると、残りのメンバーも合流し、私含めた7人全員が揃った。集合時間1時間前のことである。・・・自由人達、早すぎる。
「あの、皆さん今日早くありません?」
「今回は北の山林地帯の中でも最近やっと人が入り始めた地域なんだ。早く行きたいって気持ちが先行しすぎたんだ。」
目元に若干クマが出ている薬物研究バカ、リック・バーン侯爵令息が目を輝かして言う。正直、目のクマがなければもっと輝いていたなんて言えない。
「あの地域でどんな作物が育ちやすいか分かれば、父上も開拓しやすいと思うんだ」
「山を超えたら隣国なんだ。外務大臣の息子として、血が騒がないはずないだろう?」
農業狂いのラドリア・アーク公爵令息、地理オタのレヴィリック・ダーラ辺境伯令息も同様だった。工業マニアのダリアン・ゴレアス伯爵令息はどうせ鉱山資源だろう。アルトとウィリアムは・・・まあ、領地の開発方法だろう。
そんな感じで全員の話を聞いて若干困惑しているときに、事件は起きた。
「学友会の皆さん、おはようございます。次期べネーデ当主、ミカエルでございます。」
おっと、平常心平常心。ここで驚いたら私の負けだから。
「・・・ミカエル殿、一体どうされたんですか?」
「いえ、何やら学友会に次女で魔力無しの異端が入会されたと聞いたもので」
平常心平常心。キレたら負けだ。こいつはこんなやつだから無視でいい。
「確かにアルラウネ嬢は入会されたが、それがどうかしたのか?」
「いえ、ウィリアム殿下、もう少し考えては如何かと思いまして。こんな異端を入会させるのは名高き学友会に傷をつけることになりますよ。」
平常心平常心・・・いやこれは無理。流石に無理。
私は学友会の護衛のために左腰に帯刀していた刀を左手逆手持ちでミカエルの首に突きつけ、右手でミカエルが剣を抜けない様に押さえた。この間1秒もなかった。周りすら動きを捉えられなかったのだろう。何だなんだとこちらに集まってきた。
「アル・・・ラウネ・・・何・・・を・・・」
「何をも何もない。今の発言は王位継承権第1位を所有する第二王子、ウィリアム・ヴァイルス王子に対する名誉毀損にあたる。その意味を知らないとは言わせない。学友会に傷をつける?べネーデの名に泥を塗り続ける兄上が言うな。長男にも関わらず家紋すら付けることを許されていない分際でウィリアム王子を嘲笑する資格はない。発言を撤回し謝罪しろ。」
いつもの私とは違う強い語気。恐怖したのかミカエルは謝罪も何もなしで逃げていった。観衆の理解が追いつかないうちに私は刀を仕舞う。正直この時は、貴族に自分の都合の悪いことを理解しようとしない習性があってよかったと心から思った。だって、あれ程のことがあったにもかかわらず、何事もなかったのように私の陰口を叩くのだから。
「大丈夫か?」
「慣れてますので。しょうがないんですよ。私は異端者ですから」
そういう私は一体どんな心情をしていたのか。分からなかった。




