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魔力無し異端令嬢は学園生活を楽しみたかった・・・  作者: 酒杯樽
学園とアルラウネ
6/10

4話 行きたくない!!

「今夜は夜会があります。貴族社会の社交界を学ぶいい場になりますので皆さん出席しましょう。ちなみに主席生徒は必ず出席するようにお願いします」

「・・・・・・はい」


正直、あんな場所にいたくない。人の弱いところをチクチクと突いてマウントを取るだけの場じゃないか。行きたくない!!それが本音だ。強制ならばいくしか無いが。


「・・・・はあ・・・・」

「アルラウネ様には少し辛い場所ですわね。何かあれば私の所へおいで下さいませ。力になれるかもしれません」

「ありがとうミラ。その言葉だけでも肩の荷が軽くなるわ」


ミラの説得もあり、なんとか行こうと思うのだった。


 着慣れない上に歩きにくいドレス。靴擦れしそうな高いヒール。肌が傷みそうな化粧。そして明らかに不機嫌オーラを放っている私。専属執事の爺は現在、領で父上の補佐をしている為いない。つまり、私に使えるものが身辺に1人もいない。さて、そんな私が着慣れないドレスを1人で着れるでしょうか?いや、無理だ。そんなわけで急遽王宮からメイドを借りたわけだが・・・


「化粧濃すぎなんだよな・・・私がやったほうが上手いなこれは」


洗面器を前にして化粧を落とし、再度手鏡を使って化粧直しをしていた。と言ってもアイシャドーとリップくらいだが。


「・・・これでいいかな。」


手鏡をしまい、夜会の会場に向かった。途中、クラスの人と合流した。


「・・・普段からドレスも着ない、靴も低いもの、化粧は肌を痛めると・・・結果的にこんなところで躓くじゃないですか主席様。」

「ミラ?思っても口に出さないほうがいいよ。私は動きやすさと機能性重視なだけだよ。」

「はいはい、貴方にだけは言われたくないですわ。あと、会場ででそれはくれぐれもお控えくださいね」

「・・・分かったわよ。」


同じクラスでクラス委員長のミラ・フェン・コルト伯爵令嬢と談笑しながら向かう。近づくほどに賑わいの声が大きくなっていった。会場につき、大きなため息を吐いた。


「では、入りましょうか」

「はい」


ゆっくりと扉を開けた。瞬間的に視線が飛んでくる。複数の令嬢グループ、令息グループが近寄ってくる。尤も目的は違うわけだが。


「随分遅くなりましたわね。アルラウネ様。何か用事でもありましたの?」

「そんなことはありませんわ。ただわたくし、普段は家に籠もってばかりですの。ドレスなどは着慣れないものでして、少しばかり手間取ってしまいましたわ。」

「そうでしたの。従者を持たないと大変ですのね。」

「従者は現在、()()()()の代理で領政を務めております故、あまりこのような場に連れてくることは難しいのです。」

「・・・・そうなのですね」


異端の貴方には従者も就いてこないでしょうにという魂胆が丸見えだったのですこーしマウントを取ってみる。他の令嬢グループも同時に黙る。さて、私は行きますか・・・思った矢先、私のもとに歩いてくる金食い1号(ベレッタ)金食い2号(ミカエル)が見えた。


「まさかこの場に貴方が来るとは思わなかったわ。アルラウネ」

「主席ですので仕方なくですわ。ベレッタお姉様、ミカエルお兄様。」

「ところでアルラウネ、貴方ドレスなど持っておられたの?」

「ああ。ベレッタの言うように、異端のお前は到底ドレスを買える金など無いはずだが?」


バカか、こいつら。貴族としてその発言はどうなんだろう。私をいびりに来ていた他令嬢たちまで顔をしかめている。


「南大陸からの輸入品ですわ。よく公爵領に来られる商隊から購入いたしましたの。金銭に関しては私の個人資産より出しましたわ」

「南大陸との国交などあったか?」

()()()()()()名義でのみ、取引が成立するよう、国王陛下自らが措置を取ってくださりました。」

「あら、お父様が」


こいつらの耳は都合が良すぎるだろう。まわりからも「アルラウネ嬢は上二人と違って優秀」だとか「上2人は貴族を知らない」だとか聞こえてくる。


「では、私はこれで。」


こいつらといても私の気分が死ぬだけなので、さっさと退散することにした。側にいながら一言も発さないでくれたミラに感謝しつつ、向かうのは令息グループ。全員向き合ってくれるので軽くカテーシーをとる。


「父上から聞いていた話では王族だろうと口が酷い不敬極まりない令嬢だと伺っていたのだが。」

「あら?ウィリアム王子殿下は口の悪い令嬢がお好きなのでしょうか?大変申し辛いのですが、ご婚約者は選んだほうがいいと思いましてよ。」

「撤回しよう。思っていたよりも予想通りの令嬢だったな。」

「ふふ。国王陛下にはもっと口を悪くしております。私が不敬罪で断頭台の露となるのも近いのかもしれませんわね。」

「そうなったらここの男共で全力で笑ってやるよ。」

「それは嬉しいですわ。賑やかな死に場所となりそうですわね」


もしかしたら、私とウィリアム王子の後ろにはなにか違うものがいたかもしれない。なぜならこの物騒な会話の意味をちゃんと理解できたのはウィリアム王子を中心とする成績優秀令息グループ、通称「学友会」のメンバーだけだったのだから。


こうしてまあ、不穏な空気は流れつつも夜会は続く。私が思ったことは唯一つ、「やっぱり夜会なんて行きたくなかった!!」と。

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