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ミナミヘ セイラ ~第3の眼の覚醒~  作者: 楠本 茶茶(クスモト サティ)
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第22部分 政府専用機

第22部分 政府専用機


 結局…

セイラたちはミナミの目論見もくろみどおり、キャンベラからは政府専用機に便乗して帰ってきた。そしてそのことがセイラたちにとって後に大きな便宜を産むことになる。


 ひとつには、《しれとこ》沈没の経緯、そして某国の目論見を【直接話す】ことができたこと

ふたつには、大臣をはじめ高官や事務官と顔見知りになり、一部はコトバと交わすまでになれたこと

みっつめには、第3の眼による予言の信憑しんぴょう性が跳ね上がったこと


 しかもセイラは世間で言う美少女の部類に充分入るし、命の際から生還したことや予言を的中させたことなどから「実績」という信頼を得ることができた。関係者の幾人かはすでにセイラのことをあたかも「カリスマ」のように扱いはじめている感があった。

 飛行機のなかでも、遠くから「あのヒロイン」とか「ジャンヌダルクかも…」などというコトバが切れ切れに聞こえてきて、思わず母娘で顔を見合わせたものである。


「ねぇ聞いた? ママ」

見元でかろうじて聞こえるささやき声でセイラがミナミに問いかけた。

「イヤでも聞こえるわ、あれじゃ」

「あたしのことかしら、あれ」

「でしょ?」

「アタシ、違うのに…」

「いいのよ、言わせとけば?」

「でも…」

「アタシたちが言い出したわけじゃないよ。ヒトの言うことに責任とる必要はないわ」

「だって責任重いよ。負けちゃいそう」


「…そうよね。その気持ちはセイラしかわからないよね」

「うん。ママでもやっぱ無理かな」

「アタシの予言は当たらないし、だれも頼りにはしてないからさ、気はラクだね」

「アタシが間違ってたら… どうしよう」

「セイラが? 責任て、なんの?」

「ヒトが怪我したり亡くなったり… それから、戦争が起きたりしたら? アタシのせい?」


「セイラ…」

ミナミはセイラを抱き寄せ、髪を静かに撫でながらこう言った。


「セイラ… あなたは見たままを話してくれればいいの。それを取り上げて政策に活かしたり対策を考えたりするヒトたちは別にいるわ。セイラが言うことを取り上げたり、活かしたりするのはその人たちの仕事よ。いい? 未来が変わっても、思い通りにならなくても、あなたには関係がないことなのよ。

セイラはセイラらしく、セイラのできることをしてそれをきちんと語ってくれればいいのよ」

「う… うん。でもやっぱり間違ってたらさ、大変でしょ」


「セイラ… あなたの責任感はとても立派だと思うわ。ただよく考えて… ホントはセイラに責任は無いのよ。そもそもセイラは日本政府からお給料は貰ってないでしょ。パパはパパ、ママはママで自分の働きの分は貰ってるからガンバルのは当然だけど、いまのセイラはボランティアなんだから」

「あ… それもそうか。そうだよね」


「ボランティアの予言がたまたま当たったから、次も当たるかとか当たらないかとか、セイラを知らないヒトにとっては賭けみたいなもんでしょ。勝手に信じる方が悪いのよ。アナタはアナタで思ったことを言えば良いし、それを聞いて信じる人は信じれば良い、そうじゃないヒトは何もしなければ良いハナシ。そこから先はセイラには関係ないわ、はっきり言えば、ね」

「そんな… そんなに無責任でいいの?」


「うふふ… 無責任て… うふふふふふ… セイラ、アナタは自分の今朝の夢に責任持てるの?」

「夢ですって? それはちょっと失礼じゃない?」

「いいえ、夢よ。セイラにはわかっても、他のヒトにはわかりゃしないわ、たとえば《しれとこ》が沈む夢を見たからといって、現実の《しれとこ》とは関係ないよね、普通」

「それは… そのとおりだわ」

「たまたま当たれば正夢まさゆめとか予言だと言われるけどさ、外れたら逆夢さかゆめ見たんだって言われるだけ」


「だな… それも納得できるよ」

「当たる確率がね… 確率が高いヒトが予言者って評価されることになるんだけど、それでも外れることがあるのはみんな知っているわ、大丈夫」

「でもね、アタシは言う以上は当てたいの」


「ああ… わかった、そういうことね。セイラ、そんなに身構えると肩凝るよ、もっとリラックス!」

「…」

「当てたいって妙な力が入るとさ、却って当たらなくなると思わない」

「思うよ、だけど心配だもん」

「そう、それは気持ちとしては大切だけどね、心配したって結果は変わりゃしないわ。それに予言のためにはそういうプレッシャーは却って良くないと思ったの。それってサングラスをかけてモノを見るようなものなんじゃないかって」

「サングラス?」

「そうねぇ… 先入観とか期待とか、そういう雑念は無い方が良いと思うんだ」


「あ、そうか、例えると… そうね、澄み切った静かな水面みなもに月を映すような気持ちになれっていうことかな?」

「あ、そうそう… セイラ表現が上手いわね… どこで覚えてきたの」

「テヘヘへ… 何かのラノベにあったフレーズだよ、こんなんアタシが思いつくワケがないわ」

「あははは… 天才かと思ったのに… 残念」

「うふふふ… 種明かししない方がよかったかな?」

「だな… それにね、セイラ… この機会に言っておくわ」


「失礼いたします。ミナミヘ様。 セイラさまとミナミさま、失礼いたします。私は外務省総務室の外部そとべと申します。実は外務副大臣からお二人に少々お話を伺いたいとの用件を承ってまいりましたが、少々お時間を空けていただけますでしょうか」

「あ、はい… 副大臣が? あ、はい… ではあの、ただいま伺います。セイラ、良いわね。続きはまたあとで… ではお願い致します」

「ありがとうございます。御案内いたします。さ、さ、こちらへどうぞ」



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