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ミナミヘ セイラ ~第3の眼の覚醒~  作者: 楠本 茶茶(クスモト サティ)
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第2部分 強行(ゴリおし)

第2部分 強行ゴリおし


「ギールそれで良い… ヤレ」

「は、はい。かしこまりました、元首様」


 その命令が出たのはかれこれ半月ほど前になる。


 元はと言えば南極でのゲンパツ建設をめぐって某国と日本の間に根本的な対立があった。

・どんな手段を使ってでも南極にゲンパツを作り、南極の私物化とやがての領有化を図りたい某国。

・南極条約に加盟する某国を除く諸国の後押しを受け、さらに研究フィールドとしてのイザナミ湖をなんとしても保全したい日本。


 某国が自信満々で送り込んだ交渉担当代表団だったが、途中からなぜか腰砕けになってしまい、こともあろうに「南極での核利用制限に関する条約」に勝手に調印までしてしまった。某国への国際的評価は高まったが、そんな妥協を容認していなかった某国元首様の怒りは凄まじかった。


 また買収に応じていた日本代表団の団長は理由不明ながら結果として裏切ったため、東京の家族を消した。それを知った団長は夜の南極をさまよい歩いて凍死した。団長を消す謀略だけは予期したとおりの成果を収めることができた。


 こうなってしまった以上、某国代表団を帰国前になんとしても処分する必要があった。すべてをシェニーという団長に責任をかぶせ、条約を反故ほごにしたかったからだ。そこでビートとラミーという傭兵やといぐんじんを自国の観測船から派遣して新昭和基地を襲わせたが、その後彼らとも連絡が取れなくなっている。それに対して新昭和基地の活動は依然として活発で… 襲撃作戦が失敗したのは明らかだった。


 さらに某国代表団に遅効性の毒を盛って密かに暗殺しようと試みたが、どうやら日本観測隊の中のスリーパーはその任務に失敗したらしい。赤坂という隊員スリーパーとはその後連絡が取れなくなっており、作戦成功を意味する情報は皆無だった。



 まもなく日本の砕氷船しれとこが新昭和基地を出港するとの報告を得て、多少の国際問題が起きることを充分承知のうえで、元首様とその側近のギールは自国代表団を《しれとこ》ごと葬ることを決断したのである。

もしかしたら戦争になるかも知れなかった。


 なにダイジョブだ。国籍不明の潜水艦がやったことで、証拠である魚雷や船体は深い海底に沈むのだ。


 元首様はこのに及んでも日本をナメ切っていた。

「わが国には一切の関係はない」

と強気で言い張るまでのこと、日本は例によってコトバだけの遺憾砲いかんほうを放つだろうが、しょせんそれだけのこと。わが国は知らぬ存ぜぬで押し切ればやがて回避できるだろう。


 そのために某国と息の合う某テロ的首領が牛耳る国家からわざと旧式潜水艦と旧式魚雷および人員を援助を約束して借用し、ドック付きの艦船に厳重にシートを掛けいくつかの欺瞞ぎまん手段を講じさせながらオーストラリア近辺まで運ばせた。

旧式の武器を揃えた理由は、某国の近代的な自国産品を使ってバレた場合を懸念したからだが、どうせ深海に沈めるのだからとタカをくくっていたのも事実であった。


 また敵性国家に当たる軍の当事者と一部の新聞を買収して原子力潜水艦の行方不明を報じさせ、こちらに海外の耳目じもくを集めたのである。


「元首様、例の潜水艦が本日1030、《しれとこ》を雷撃したとの報告がありました。しかし…」

「おお、ようでかした、ついにやったか、しかし?」

「はいしかし…よろしくない続きがありまして…」

「どうしたギール」


「あの…《しれとこ》は大破した模様ですが、沈没とまでは行けなかったようです」

「なぜだ、護衛は居ないだろ… 沈むまで攻撃させたはずではないのか」

「それはそうなのですが…」

いつもは強気なギールが言いよどんだ。


 それをイライラした目付きの元首様がにらみつけている。



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