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ミナミヘ セイラ ~第3の眼の覚醒~  作者: 楠本 茶茶(クスモト サティ)
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第15部分 チートはチィト面倒くさい

第15部分 チートはチィト面倒くさい


 実証実験により解決しておきたい課題は他にもあった。

① 予言を元にしてこれからの行動を変えた場合、予言した未来がやってくるかという問題

② もしかしたらほんの偶然の、一過性の能力だったかもしれないという問題

③ 「見たい未来の方向性」をコントロ-ルできるかという問題

④ 確実に的中するのかという信頼性の問題

⑤ 予言か夢かを確実に判別する問題


①についてはドッジボールの例であげたとおりだ。予言に基づいて行動を変えると未来は変わり得るものになり、逆に予言の意味が失われてしまいかねない危険性をはらんでいる。


②では今後の「切り札」として利用することはできない。今後しばらく続いてこそ、某国との謀略合戦に勝利が期待できるはずだ。


③も②と似ている。仮に次の総理大臣の「所信表明演説」を一字一句予言できたとしてもミナミヘ家の安全や某国との暗闘への貢献はない。某国の考え方や次の作戦がわかってこそ意味があるのだ。


④一度賭けに勝ったとしても、次も勝てるとは限らないのと同じことだ。評価や解釈の違いはあるにしても、実戦にあたっておおむね的中しているという確実性が要求されるはずだ。


⑤は最大の問題点だ。もしこれから何らかの施策しさくに活かすとすれば、「あれは夢でした」ではさまざまな支障が生じて迷惑このうえない。さらにミナミが口に出すことはなかったが、予言の中にセイラの潜在的願望が反映されてしまうのではないか」という密やかな危惧きぐだった。

この娘なら大丈夫だと思うけどな… 今後こういう「当たり」が続いたとすると、いつしか心映こころばえも変化してくるかもしれない。しかしセイラを見ている限り、彼女自身にはそんな意識はまるでないように見えた。


 心配になったミナミはセイラに直接訊ねてみることにした。

「セイラ、予言と夢の区別ってできる? 何か違いとかあるのかなぁ」

「そうね… あの… ん、なんかうまく言えないけどね… そうだなぁ」

「そっか、やっぱり難しいよね。セイラも初めてなんだし」

「あ、そうじゃなくてね、たぶん区別はできるの。何がどう、というか… 雰囲気が違うの」

「雰囲気、ね」

「ああ、えっとね、夢って時間とか場面とか人とか順番とか滅茶苦茶って言うのかな、支離滅裂っていうか一貫してないでしょ? でも予言はその辺がブレないっていうかね、しっかりしてるのよ。」

「ああ、なるほどね、それならわかる気がするな」


 うん、これはこれでヨシとしておこう。



 さらに細かいことを言うと、予言の確度を上げたり下げたりするような食事や習慣、睡眠時間や運動、瞑想、服装やパワーストーンやパワースポットの効果など、確かめておきたいことは山ほどあったが、とにかくデータが少なすぎて判断できなかった。こればかりは地道に積み上げて確認していくしか方法がない。

仮に他のヒトが

「こうすれば効果がある」と言ったとしても、それはそのヒトには効果があったということで、参考にはなっても絶対的な方法にはならないだろう。そもそも出まかせの大嘘フェイク情報かもしれないし、そういう能力がない方にとって確かめようがない主観的な実験結果… というより個人的感想に近いもの… つまりサプリメントが高らかにうたう効果と五十歩百歩の主張にすぎない。だから母娘で協力してすべてを解決していく必要がある課題だったのだ。


 セイラが眠りに就いている間、ミナミはセイラの能力について調べられるだけ調べてみようと思った。ただここはオーストラリアであり、気軽に神田の古書店街のようなところを巡るワケにはいかない。日本語のフィクション、ノンフィクションの小説も簡単には入手できない。そもそも日常英語の聞き取りリスニングと喋りスピーキングには不自由しないし、論文の英語なら読み書きリーディング・ライティングはできるミナミだったが、小説のような英語は得意ではなかったのだ。


 そこでミナミはしばしば日本の「小説家になろう」サイトを訪れては、今の母娘の参考になることを探索してみた。たくさんのチートが載っていた。その体現方法をざっと分類すると

 ・生まれながらの体質や家系による。貴族階級クエストの場合が大多数

 ・師匠のもとでの修業による

 ・古代文字ルーンや呪文、暗号による。無詠唱でも可能なのは相当なパワーの持ち主のみ

 ・自然(雷など)や精霊、魔獣の力の利用または借用(桃太郎の犬猿雉的パターン)による

 ・何らかの偶然(洞窟、トンネル、扉など)による。他者が創った仕掛けであることもある。

 ・自らの修業や徳業による


 まだ他にもあるのだろうが、さすがにすべてを調べる余裕はない。読んでいるとつい楽しくなって時を忘れてしまうこともあったりする。

なんで作者の方々はこんなに上手なんだろうか…


 そう感心する一方で、今の母娘にとって参考になるものはほとんどないのが残念だった。




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