第11部分 チートができる可能性などチットもない…
第11部分 チートができる可能性などチットもない…
ちっと失礼… なんかココロに火が点いて、かなり理屈っぽくなってしまいました…。勢いでもう少し書いてしまおう。
生物が多少の突然変異を許容するにしても、御先祖さまの基本形を踏まえて進化していくことが真実であるならば、ヒーロー、ヒロイン、怪人や怪獣、妖怪お化けの設定にいたるまで、おかしなことは山ほどある。逆に合理的な要素はほぼ見当たらない。
簡単な例を挙げてみよう。
目から「なんとか光線」や「なんとかビーム」を出す例はヒーロー、ヒロインに限らず妖怪怪獣に至るまでいちいち例を挙げられないほど多い。しかもただ眼が光って明るくなるだけでは眩しいだけで相手の損害はゼロ。だからアレはレーザーなのだろう、と勝手に思っている。
熱光線だとすると、当たった方よりも出してる方が熱くなければおかしいし、なんとか光線である以上、照射時間を短くすることはできても避けることはできない。理由は… 見えた瞬間にはすでに命中しているからだ。
ではレーザーだとすればどうか。レーザーという人工の光を出すためには位相(光という波の方向)が揃うようにハーフミラーの間を何百万回も往復させる必要があるが、そのためにはそれなりの光源となる細胞を用意し、眼の網膜と角膜などをハーフミラー化しつつ、同時に発生する熱を逃がす必要が出てくる。そんな仕組みを眼球の中に持たそうとすれば、主役である「光を感じる細胞」の居場所は無くなるし、あったとしても熱にヤラレルことは間違いない。眼とは元来光を取り「入れる器官」であって、「出す器官」ではないのだ。
出すとすれば… 誰がどう考えても「血」か「涙」か「目ヤニ」くらいのもので、これではとうてい敵を倒すことは叶うまい。あ、眼から血を出して敵を撃退するトカゲが現実に存在するけど、まあせいぜいそんなものだ。
同様に口からも炎やらガスみたいのやら何とか光線が出て来る例もやたらと多い。元来口から出るのは唾液と呼気、そして反吐であって、その変化形なら現実味のある武器にはなるだろう。可燃物を食って、それを吐き出しながら点火することができれば火炎放射器のような武器はできるかも知れないし、石炭の粉、小麦粉といった粉塵なら爆発性まで付いてくるが、原油やその類似「炭化水素」以外のものでは濃度や湿度などのコントロールがなかなか難しそうだ。
数ある生物のなかでは、アルパカの「反吐」とか、そしてヘビなどの唾液腺が変化した「毒腺」という具体例も散見できる。
セイウチは、下向きの強大な2本の牙が特徴的な海獣で、北の海に浮かぶ島の浜辺などに群れて暮らしているが、そこをシロクマ(ホッキョクグマ)が襲うことがある。このときセイウチはシロクマ目掛けて「くさい息」、つまり「呼気」を出すのだという。そんなもの、腹減ったクマに通用するんか??? と思うが、まあ相当に臭いらしい。シロクマがセイウチの居る辺りを走り回ると、パニックになったセイウチが我先にと逃げ回り海中に飛び込むが、このとき仲間のセイウチに押しつぶされたりケガをした子供などが陸地に取り残されることになり… あとはもう、おわかりだろう。
つまり… たぶん「臭い息」は役に立っていない。美味いと知っていれば人間だって「ブルーチーズ」も「くさや」も「シュールストレミング」も喜んで食するではないか…
いわんや腹ペリのシロクマをや…
掌や指先、二の腕の領域からもビームなどが出て来るが、この辺から出そうなものは血か汗か爪、それに角質に皮脂に水蒸気くらいのもので、言うには及ばない。
おっと、タランチュラの体毛攻撃をわすれていたぞ…
逆に出て来るモノがあるのに滅多に登場しないのが尿と便と屁だ。理由は単純に見栄えが悪いからだろう…な。イタチやスカンクなどの化学的な兵器、いや屁器? は強烈なはずだ。しかしお笑い的要素でたまに使われるくらいで実にもったいない。カメムシなんて自分の出した臭いで気絶するんだぜ…
似てはいるけど全くと言ってよいほど扱いが違うのは性器からの分泌物で、精液や愛液などは忍術小説では頻出と言って良いくらいに登場する。「俗に言う立川流」=「彼の法」などの性的儀式を信奉する教団ではもうものすごいことになっている。なんせ後醍醐天皇まで信者だったというからなぁ…
まず選りすぐりの素性の明らかな髑髏を調達し、これを祭壇に備えて毎夜真言を唱えつつ香を焚きながら【僧侶】と相方の素性確かな【女性】が交合して男女の分泌液を髑髏に塗り続けて8年、二人が解脱して悟りを開く一方で髑髏本尊も完成する。この髑髏は望みをかなえたり、将来を予言すると言われてはいるものの… さて、いかがなものか…
モノがモノであるだけになんか臭い噺だと思うのはサティだけだろうか。でも後醍醐天皇だって… もしかしてただ交合したかった言い訳なんじゃないのか?
それに途中で「飽きた」とか「心変わり」したらどうすんだ?
いわんや、月経の血液などは一例も無いのでは… 調べたワケではないが、まあ世の中の女性の反応を考えるとボツにされて当然だろうが… ただし、あのなかには”血液凝固”を妨げる物質が入っているそうで、生理学的には興味を惹かれるものだが… 確かにあの血を付けたままだと妙に痒くなるもんね。
あとは… 音波と放射線あたりかな。
音波はヒトにとっての可聴域は16~2万Hzで、これは普通の音。この辺のデカい音は武器になり得るが自分も無事ではいられまい。気の狂いそうな音は無いワケではないけれど、あくまでも表現の世界の話であって「気が狂う音」はない。
ヘルツは1秒間に音波が振動する数で、数字が小さいと低い音、大きいと高い音になる。高すぎる音は聞こえないだけに「超音波」という名が付いている。もっとも聞こえるとか聞こえないとかすべて人間本位のもので、イルカ、ネズミやフクロウなどは超音波の一部を聞くことができる。コウモリの多くは超音波を発し、その反射してきた音から障害物の存在を知って暗闇でも飛行するという「エコーロケーション」を実用している。
ちなみにネズミ撃退用の「超音波発生器」を、いくら近くで聞いてみても… 何も聞こえはしない。そもそも聞こえる音は「超音波ではない」のだから、武器にはなるワケがない。これなら普通の「音」の方がよほど気が散るし、投降勧告などの武器として有用だと思う。
逆に振動の周期の少ない音は低周波と呼ばれ… じつは聞こえはしないが健康被害が報告されている。
今は改善されたようだが、数十年前には新幹線の橋梁(橋梁)や高架の近くではそうした波動があって、気分が悪くなる方がいたそうだ。自然界ではゾウが低周波で仲間と交信するし、ザトウクジラも数百キロ離れた仲間と会話することが知られている。
放射線は見えず聞こえず、しかも現実にありそうなだけにもっとも不気味なものだといえるだろう。アメリカによる水爆実験の結果生まれてしまった「ゴジラ」では前面に出てきたものの、その後の扱いはまるでわざと忘れているかのようにそういう設定がされなくなっている感がある。あたかも電力会社からの圧力があったかのようで、サティとしてはそっちの方がよほど恐ろしい。
他に残された手段があるだろうか?
ある…
セイラや周囲がふと気付いたときには、既にそれが舞い降りてきていた。




