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第七話 幽霊として成長しました

 全速力で飛んでいっても疲れない。だから走るような速さで駆け続け、すでに馬車が2,30メートル先にある距離まで詰めていた。


 干渉技能は発動させていない。だから見えないはずだ。だけど相手は知性ある存在、人間だ。もし発見でもされたら面倒なことになる。遠目からそうっとうかがった。


 ……大丈夫そうだ。しかし、用心に越したことはない。護衛の兵士たちにちょっとチョッカイをだすことに。最後尾の護衛はいかにも戦士といった格好だ。鎧を身にまとい、背に剣を背負っていた。


王都が目の前のせいか、すでに自分の仕事は終わったと完全に油断している。他の護衛たちも同じようなものだった。


 こそーっと後ろに近づき手をだす。頭をぺしぺしっとはたく。ただし、非干渉状態だ。そのためぼくの手は戦士の頭を通り抜けた。これでまず自分が干渉状態になっていないのを確かめて、戦士の前に移動し直した。


 気づいていない。よしっ、これで好きなだけ荷物をあされるぞ。そうとなれば善は急げだ、王都に入る前においしいものを探さないと! 


 最後尾の馬車から探してみることにする。一車目はだめだった。いや正確にはお酒と思われるボトルが箱詰めで置かれている。あまりお酒は飲めるほうじゃない。ん? でも、幽霊になった今ならどうなのだろう? 気にはなったけれど、それを確かめるのは最後にしよう。


 二車目、ビンゴ! 木の箱いっぱいに、リンゴが入っている! 幽体のまま箱の中に顔だけ突っ込んでいる状態だけれど、このまま干渉状態を行ってみる。顔だけ干渉可能にして、直接リンゴをむしゃむしゃ食べよう、という計画だ。


 うまくいかない。スカッ、と空を切るばかりだった。何十と試す。ダメ! 手は出来て顔は無理なんだろうか? それとも体が箱という物理的な存在を貫通しているままで一部分を干渉状態にしようとしているからだろうからか? 理由は分からない。とにかくうまくいかなかった。


 馬車から顔をのぞかせて外を見る。都にはまだ距離がある。まだまだ挑戦できる、と思い直し再度試してみた。


 そうやって十数分過ぎただろうか、ポーン、という音が聞こえた。これは! と驚きとともに、期待感が膨らんだ。


技能向上

干渉Lv.2


能力が向上しました。


 あのポップアップがまた現れた! 干渉の技能が向上したのなら、と体は箱を貫通しつつあらためて顔だけ干渉状態にしてリンゴを食べようとしてみる。


 ムシャリ 


 できた! こうなったらこっちのもんだ。顔を使って手当たり次第にほおばっていった。味は、最高だ! どうしてこんなにおいしいんだろう! 馬車は粗末ではないものの、高級な感じはしない。


 護衛もいるけれど、魔王がいる世界のはずだ。それくらいつけるだろう(以前のぼくの世界でも、中世ではそうしただろうし)。彼らはそんなに切れ者っぽくは見えない。この世界でも手ごろの、そこそこの戦士たちにすぎないのでは、と思える。


 つまり、このリンゴは特別この世界で高級品じゃなさそうなんだ。じゃあ、どうしてこんなにおいしいのだろう? あのキイチゴだってそうだ、ただの野生のくだもので、そんなに上等なんだろうか?


 もしかしてぼくが幽体になったから? そこでもともとの能力の“六道無体”の能力説明の文言が思い出されてきた。


 ポップアップが出てきたら、念じたら消せる。なら逆も出来る。目の前にステータスよ現れろ、と念ずると以前出現したものが現れた。そして“六道無体”の欄を再度確認してみることに。


この能力は身体と魂を分離して、その魂魄だけで活動できる能力です。直接魔力を吸収することで効率的に自身のエネルギーを補給することが可能であり……


 直接魔力を吸収して、効率的に、というのが気になる。もしかしてこのために食べ物がみずみずしく、味わい深く感じているのだろうか?


 ただそれ以上は分からない。システムはただ表示するだけで、疑問に直接答えてはくれなかった。ステータスを消し、あらためてリンゴを食べてみる。うまい。


 とにかく、食べ物が異常においしいのは確かだった。原因はともかく害はない。ぐずぐずしていると馬車が都についてしまい点検でもされて面倒なことになるだろう。


 その前までに食べれるだけ食べとこ。

 田舎ものなので、野生のキイチゴを食べたことがあるのです。そこそこおいしいんですよ。でも手にめっちゃ果実の汁の色がつきます。

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