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2話  世界の……命運?

「へ~、地球改革法案? 凄い事業なのね~」


「うむ、そうなのだ。まあ妥協案なのだがな? 我としてはどうでも良いことばかりで言わば退屈凌ぎではあるのだが……」



 リビングで幸恵ゆきえの出した湯飲みに頭を突っ込みお茶を啜る波旬はじゅん

 いきなり秘密を家族にバラされたので仕方なく状況を説明していた。



「たっだいま~ん! ママ! じゃ引きこもるからオヤツよろしく~」


「あらあら、待ちなさい。お話だけでも聞いてあげなさいって」



 叶恵かなえは波旬を母に押し付け、ゲームを買いに行っていた。

 そして帰宅したにも関わらず、そのまま二階の自室に向かおうとしたところを引き止められたのだ。



「え~、面倒ね……。昨夜見た夢が夢じゃなかったって話でしょ? ぶっちゃけよく覚えてないんだけど……」


「お前が我を選んだのだろうが……。まあ良い、説明するからこちらに来るのだ」



 凄まじく面倒だけど覚えてないままなのも気持ち悪いので、黒蛇の話に付き合う事にした叶恵。

 まずは黒蛇の情報を知る事からだ。


 心理の神 波旬

 目的 労働禁止

 授与魔法具 悦楽刀



「バカなの? ねぇバカなの? いくら私でもこんな目的達成したら世界滅ぶって分かるよ?」


「楽しいかと思ったのだがな……。まあ最終的に勝ち残ったコンビが協議して決める事だ。我は話を合わせただけだから何でも良いぞ? 例えば一年の休みを一日増やすだけなら問題あるまい」



 またしても飛び出したふざけた目的にツッコミを入れる叶恵。

 しかし、波旬ことハーくんが言うには以外とアバウトな内容らしいと軽く補完する。


 なんでも我が物顔で地球を汚す人間に業を煮やした一体の神様が居て、いきなり地上に破壊神を投入しようとしたらしい。

 それを慌てて止めた六体の神様達が話し合い、とりあえず文明の発展になることを一つ潰して様子を見るということで納得させたようだ。

 そして遊び心満載の神々がここぞとばかりに意見を出し合った結果。

 こうして不毛な争いが起こったわけである。



「ふ~ん。そんないい加減で良いんだ……。で、私はどーすれば良いの?」


「お前の他に居る五名の候補者と争って勝てば良い。一応そのあとにその面倒なヤツに話を付けにいかねばならぬが……。それは我らがすることだ」


「争うってまさかさっきの刀で斬るとか? 無理無理無理無理!! 無理よ! 犯罪よ? ちょーえきよ!?」



 緩く考えていた叶恵に波旬から物騒な事実が明かされる。

 凄く簡単に世界の行く末を決めてしまうように聞こえるが、そんなことより殺し合いをさせようと言う方が叶恵にとっては問題なのである。



「心配せずとも悦楽刀で人は殺せぬ。これは……、人心の理を断つ刃だからな」


「え……、どう見ても切れそうだけど? それはそれで怖そうね……」



 頭を上に向けてフリフリ揺れ始めた波旬は口から刀を出してきた。

 もう少し視覚的に可愛い出し方を検討してもらいたいと願う叶恵。

 叶恵は刀を手に持ち、おっかなびっくり刀身を眺めていた。



「あ!? ……、ふ、ぐ……」


「ママ!?」



 いきなり幸恵が指先を掴み、嗚咽を漏らし始める。

 叶恵がほんの一瞬よそ見をした隙に刀の刃に触れていたようだ。



「あ……、あん! ……ふ……うん……」


「ママ! ねぇママ! 大丈夫!」



 床に倒れビクビクと痙攣する幸恵。

 身体を揺すり心配する叶恵に波旬が語りかける。



「心配するな。この刀は切った箇所から快楽をねじ込み、思考、及び行動を抑制することが出来る。ようするに興奮してるだけだ」


「とんでもねーもん渡されたわ!?」



 つまり切ったところが超敏感な性感帯と化すのである。

 母は苦しんでいるのではなかったのだ。

 叶恵にしても、正直目の前で頬を染めた母親が床に転がり喘いでるところを見るのはキツいものがあった。



「えらいめにあったわね……」


「好奇心で動くのやめてよねママ……」



 程なくして回復した母に呆れながら苦言を漏らす叶恵。

 この母の辞書には反省というものはないので、刀の管理はしっかりしなければならない。



「ところでハーくん。これは変身とかないの? 魔法少女と言えば変身よね?」


「ああ、そうだな。忘れていた、変身用の呪文があった」



 叶恵は適当ぶっこいただけなのだが、本当にあるようだ。

 どうしよう。高校生にもなってあんまりにも明るくてフリフリな衣装はさすがに恥ずかしい。

 でもまあ、やってみなければ始まらないので、言われた通りに呪文を唱えてみた叶恵。



魔装転衣まそうてんい!」



 刀から吹き出した黒い煙霧が叶恵を覆い尽くし、煙霧が晴れた叶恵の身体は黒い着物を着用していた。

 荘厳にして神秘的。まさしく世の調律者として相応しい厳かな衣装。



「一種の防具だな。これを着ている事で他の候補者の使う魔法の威力を緩和する事が出来る」


「へぇ~、良かった。思ったよりカッコいいわね! どうママ、似合う?」



 波旬の話では基本的にこれを着て戦うようだ。

 叶恵は普通にカッコ良い衣装に内心安堵していた。



「却下ね……。可愛くないわ。まず袴の裾が長い。真っ黒で縁起が悪い。アクセントがない。やり直しよ」



 主婦の冷たい裁きで即時却下を食らう神の装衣。

 幸恵の怒涛の苦情でリテイクすること数十回……

 叫ぶ叶恵の声は掠れて来ている。



「魔装転衣ぃ!」



 そして黒を基調とした着物には違いないが、所々に散りばめられた桜の花弁、帯は赤く草履はピンク。

 袴の裾もミニスカと呼べるほど短め、夜桜をイメージした可愛らしい衣装に様変わりした。



「もう少しキャピルン仕様にしたいところだけど……。良いわ、合格よ。やれば出来るじゃないハーくん」


「叫び疲れた……」



 なんとか幸恵の合格ラインに達した変身コスチューム。

 可愛いけどこれ以上キャピルン(死語)されたら叶恵は着れない。

 妥協してもらえて良かったと心から安堵の溜め息をつく。



「ああ、それとな。お前の報酬に関してだが……」


「そう、そこ重要ね。ゲームでないなら是非教えてもらわないと」



 このタイミングで報酬の話をする波旬。

 それは最初に言うべき事柄。こんな恐ろしい戦いに参加させられるのなら、それなりの見返りが必要だわと叶恵は意気込む。



「お前がこの世界の害にならない事が前提だが、我々に叶えられる範囲の願いならなんでも叶えるぞ」



 波旬の言葉に叶恵は目尻が下がる。

 出た出た、一番困る報酬。という事だ。

 何を頼んでも後で後悔するパターン。いっそ新作ゲーム何本とか決めてくれる方が叶恵にとっては楽なのである。



「曖昧過ぎるのよねぇ……。例えば不老不死になって一生ゲーム三昧で過ごすとか出来るの?」


「不老不死は文句が出そうだな。寿命300年延長とかなら問題ないだろう。ちなみに参加を取り止めたいのならそれでも構わん。本人の意志が最重要と言っていたからな」



 適当な願いを口にする叶恵に意外と細かく修正を入れる波旬。

 最近の魔法少女事情も考慮している。これには叶恵も好感を持ち警戒を緩めた。



「くーりんぐおふも可能なんだ。 そんな簡単で良いの?」


「ただ人員の補充などはされないからな。その場合残りの五名で争うことになる」



 一応念を押して見たが、どうやら叶恵が抜けても問題はないようだ。

 そういう事なら参加しても良いと思案する叶恵。



「ろくな目的なかったと思うけど本当にそんな適当で良いの? 参加人数も少ないし……」


「事情があって急遽行われた事だからな……。候補者には特別な素養も求められた。これで乗り切るしかないのだ」



 叶恵は再度確認するも、神である波旬にとっても煩わしい案件である模様。

 特別な素養との言葉に悪い気はしないと思いつつ、多分面倒臭くて適当に選んだのだろうと叶恵は邪推する。

 少なくとも、これまでの情報ではろくな神様はいなかったのだ。



「とりあえず……、今は時間あるの? 私ゲームしたいんだけど?」


「我が言うのもなんだが緊張感皆無だな。まあ良い……。今朝の段階でまだ二名しか決まってないようだし急がずとも良かろう。悦楽刀の効果や戦い方など……、覚える事は山程……」



 そわそわし始めた叶恵に今後の予定を伝えようとした波旬は目を丸くした。

 階段を昇る音と共に叶恵は姿を消したのだ。

 そんな波旬に幸恵はそっとお茶のお代わりを差し出す。



「ねぇハーくん。悦楽刀って名前……可愛くないんだけど……」


「ではハートブレイカーにするか……」



 魔法具の命名について、幸恵と波旬は熱く議論を交わし合うことになった。

どこまでの表現が許されるのか……

難しいところですね……

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