1/5
非情な世界
重い足を上げ、上る。上る。
今、階段を上る。ほの暗い石の螺旋階段。明かりは松明のみ。後も先も見えない階段を上る。
にわかには信じ難い、感情が追いつかない。
壁伝いに階段を上がる。触る石の感触、伝う水。
微かに聞こえる風の音に心臓の音が早くなる。
石階段を上りようやく開放的な場所に出た。空一面に広がる夜空はまるで異世界だった。
甲冑に身を包んだ兵士に連れられ、歩み出す。一歩一歩躊躇いもなく、踏み外すこともなく、寿命を削っていく。
木の板はギシギシと不気味な音をたて、遂に、遂に、
遂に、断頭台に首をかける。
心做しか血の匂いがしたが、やはり気のせいだろう。
そこには満天の星々が何知らぬ顔で輝いていた。
なんでこうなった?
鋭い刃が振り下ろされる瞬間、死が直前に迫ってくる感覚が体を蝕んだ。
「俺は、死にたくなんかないっ」
絶対死ぬものか。生きて、生きて、生きて、生き抜いてやる。
次の瞬間、小早川春人の視界は黒に遮られた。