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5 絶交

 

 リナリアの目には、フリージアとカーネリアンが特別親しく見えていた。

 二人の関係は、理想に近いような気がして、ますます妬ましく思う。

 自分が除け者のような状態が、彼女に余裕を無くさせていく。


 フリージアのことが嫌いだ。明確に。


 フリージアに対するあたりが 強くなるのは必然だった。





 教会に集まると、フリージアが能天気な顔をして、リナリアに近づく。

 カーネリアンが声をかける前に、リナリアがフリージアに牽制するのが常だ。


「またカーネリアンの邪魔をしに来たの?」


 邪魔者はお前だ、という目でフリージアを射貫くが、全く応えていない。

 何が楽しいのか、リナリアには分からなかったが、話しかけると、フリージアは大抵上機嫌だった。


「邪魔なんてしないわ。リナリアに会いに来たの。私も混ぜてよ」





 事実、フリージアはリナリアと一緒に過ごしたいのであって、リナリアが居るところにカーネリアンが居るだけなのだ。

 その事は、リナリアにはもちろん、周りにも正しく認識されていない。

 どちらかといえば、リナリアのお気に入りであるカーネリアンに、フリージアが干渉して、機嫌を損なっているように思われていた。





「白々しいわね。カーネリアンに会いに来んでしょう。私が優先なの。邪魔だって分からないの?」


「皆で過ごしたほうが楽しいわ! カーネリアンもそう思わない?」


 フリージアの、暗にリナリアと一緒に居たいから居座るぞという気持ちを、カーネリアンは正確に読み取る。

 聡いカーネリアンはしかし、女心には疎かった。

 リナリアの態度が、砕けた気安いものだと誤解していた。

 最近、少女二人は急激に仲を深めているので、一緒にいさせたほうが、リナリアも喜ぶだろうと思ったのだ。

 好きな子と二人きりではなくなることに思うことも無いわけでは無いが、彼は妙な所で気をきかせた。


「別に邪魔じゃないよ」


「だって! ね? リナリア!」


 リナリアを喜ばせたいカーネリアン。

 リナリアと一緒に過ごしたいフリージア。

 良い所は本人に何も伝わっておらず、拗れるばかりである。





 夜になり、リナリアは母と床に入ったが、目は冴えていた。

 昼間の光景を思い出しては、何度も体の向きを変え、頭から追い払おうとする。早く眠りに落ちたいのに、嫌な感情はなかなか消えそうに無い。


「もういや!!!」


 思い悩んで寝付けないリナリアは、夜中にこっそり抜け出した。


「神様に愛されているのに……神様は私の味方なのに!」


 布団から出て、部屋を移動する。小さい家だ、少し離れたくらいでは音が響いてしまう。母を起こさないように、小声で不満を口にした。


「なんで、カーネリアンは……」


 フリージアが嫌いだ。

 彼女が居なければ、

 カーネリアンは今頃……


(私のこと、好きになってくれたかも……)


 そして恋する少女は恐ろしいことを連想してしまう。


(カーネリアンが、フリージアのことを好きだったらどうしよう)





 眠れなかった翌日、リナリアはフリージアを呼び出した。

 フリージアの家は知っていたので、家までわざわざ迎えに行き、二人で教会に向かう。



 リナリアは無言だ。

 空気の読めないフリージアでも、リナリアの雰囲気が喜ばしいものではないことに気づいていた。



 教会の敷地に入り、建物には入らず、奥の林へ進む。

 林の中央へ向かっていくと、ひらけた場所に出た。小さな公園のような場所だ。


 リナリアが一方的に話すのを、フリージアはただ聞いていた。

 話しているうちに感情が高ぶっていたリナリアは、持てる限りの言葉で、フリージアを罵る。

 お互い、暴力は振るっていない。

 ただ、リナリアは、この時の記憶が曖昧だった。

 詳細を覚えてはいなかったが、邪魔だとか、嫌いだとか、言動が気に食わないとか、顔を見ると気分が悪いだとか、酷いことを色々と言ったのは確かだ。

 最後に言ったことを、リナリアは明確に覚えている。


「フリージア、貴女とは一生、友人になりたくないわ」


 フリージアがいくら打たれ強いとはいえ、傷付かないはずかない。

 振り返らずに帰ったため分からなかったが、フリージアは多分、泣いていただろうとリナリアは思った。

 珍しく、カーネリアンに会う気分ではなかった。


 さらに翌日、リナリアの体に異変が起きることになる。



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