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アーツ・ホルダー  作者: 字理 四宵 
第十章 黒馬事件
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10-10

手持ちの武器はない。子供を抱えて逃げても、追いつかれる。かといって、一人で逃げるわけにはいかない。僕の脳裏に、弟の顔が浮かぶ。

黒馬がここにきたということは、ジュリアさんは無事だろうか。一瞬だけそう思ったが、目の前の脅威に集中しなくてはいけない。

今までの戦闘で、この黒馬の行動パターンがわかってきた。背後か横にいれば、後ろ足の蹴り。正面にいれば、頭突きか噛みつき。下にいれば、踏みつけ。全て、普通の馬と変わりない。

一番威力が高いのは後ろ足の蹴りだが、他のどれもが、人間が食らえば戦闘不能になってしまう。味方の援護で今までなんとかかわしてきた僕だったが、ついにコボル隊の最後の一人になってしまった。

だが、大黒猿の時もそうだったように、僕には最後のインスピレーションが灯っていた。一か八かの、命を賭けた作戦。

黒馬は、きっと忘れている。

・・・首に刺さったままぶら下がっている、ララベルさんの槍のことを。


僕は右腕を横に出し、目線を誘導する。噛みつきやすい位置に噛みつくものがあれば、黒馬は抗えないだろう。


向かってくる黒馬から避けることもできずに、その腕を咥えられ、高く持ち上げられた後に地面に叩きつけられ、絶命する・・・そんなビジョンが頭に浮かんだ。

かぶりを振って、目前に集中する。


僕は、何があっても即座に動けるようにマナを足に蓄積する。囮に差し出した腕にも防御のためにマナを使いたかったが、足のマナが第一優先で、そんな余裕はなかった。

ララベルさんの槍は、黒馬の首の右側に刺さったままだ。黒馬が巨大すぎるために、長物が刺さっているようには見えないが、抜けないところを見ると、刃の部分が深く刺さっているのだろう。ララベルさんの一撃は確実に爪痕を残している。

痛みがあるのを耐えているのか、怒りでマヒしているのか。うかがい知れないが、物をつかむことのできない黒馬は、首の槍を抜くことができなかったのだ。

黒馬が歯をむき出しにする。僕の狙い通り、噛みつきを考えているようだ。みるみるうちに距離がなくなっていく。僕は腕を差し出したまま、右足だけで左側に飛ぶ。それを見た黒馬の口は、僕を追う。僕は足残るマナを全て使って、真後ろに倒れながら飛ぶ。さらに僕の腕を追う黒馬の首は、より低く沈み、黒馬に刺さったララベルさんの槍は、石畳に当たって黒馬自身の力でさらに押し込まれた。

目を見開いた黒馬は、絶叫とも表現できる咆哮をあげて、後ろ足で一度大きく立ち上がった。

絶命には至らなかったのか。僕は、子供をかばうように抱きかかえる。

だが、地面について体を支えるはずの前足は、力なく崩れた。白目を向いた瞼が、痙攣をしている。

多量の砂埃と地響きが、僕たちコボル隊の辛勝を告げた。


「黒馬自身の力で槍を・・・今のは、狙ってやったのか」


ジュリアさんの驚いた声が、黒馬の背後から聞こえてきた。僕は、頷く。


「これしかなかったです。・・・思った通りに動いてくれて、運がよかった」


後、数センチで届く。そんな距離でかわしたからこそ、黒馬は思わず追ってきたのだろう。


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