10-7
「体毛かぁ・・・ララベルはどう?」
「どうって、何が」
「体毛、濃いほうがいい?」
「あんた、こんなときにそんなことばっかり!」
「へっへっへ。ちなみに、私は濃い方が好きだよ」
緊張感のないジュリアさんに、僕は戸惑う。命にかかわる戦いをしている最中とは、とても思えない。これが彼女の戦い方なのだろうか。
「あ、あのー。ちなみに、目を狙ってもかわされるっぽいです。反応は、かなりいいです」
「レイル君って、ふざけた話の時に真面目な話するよね」
「えぇ・・・」
「逆だから! それが正しいから!」
「・・・」
今までの人生で、会ったことのないタイプの人に、僕は困惑する。
「そんな顔すんなよー。もっといじめたくなるだろ。まぁ、でも、どうしたものか・・・」
そういうと、ジュリアさんは棍を降ろして、わざと隙を作った。すかさず、そこに黒馬が頭を叩きつけに来る。
「おっとっと」
ジュリアさんは棍を軸にして、それを難なくかわす。ジャヴさんとは違い、動きを読み切ったような余裕がある。
「早い・・・確かに、やりづらいね」
槍の切っ先で黒馬を追いながら、ララベル隊長代理がつぶやく。
「どうするの、作戦はあるの」
ジュリアさんが、ララベル隊長代理を見る。確かに、役職から考えると指示をするのはララベル隊長代理の仕事だ。僕も、ララベル隊長代理の方を見て、指示を仰ぐ。
「この動きじゃ、目は厳しそうね。喉を狙う」
「どうやるんですか」
「レイル君、屋根まであがって、あいつの注意を引いて。その時に上を向いたら、私が喉を突きます。ジュリアは、レイル君を屋根まであげて、その後は私のフォローを」
「了解」
「わかりました」
「レイル君、危険そうだったら、すぐに逃げてね」
「・・・はい。ララベル隊長代理も、気を付けて」
「あ、ララベルさんでいいよ。隊長代理ってのも、なんだかパッとしないし」
「・・・わかりました、ララベルさん」
「うん」
僕が頷き、ララベルさんもにっこり笑う。
「はいはい、イチャイチャは後でゆっくり見せてね。レイル君、覚悟はいいかい」
「大丈夫です」
そう言って、僕はジュリアさんの差し出す手に乗って、屋根に飛びつく。ジャヴさんの時とは違って、高さと跳躍が足りないので、雨樋につかまってよじ登る。
それを見て、黒馬が突進をしてきた。
「・・・!」
両手がふさがって無防備なところを、巨大な臼歯が襲い掛かる。口からあふれる涎の量が、攻撃ではなく食欲を持ってきているようで、恐ろしい。
それを、地面からの槍と棍が雨のような連撃で、ひるませる。
ララベルさんもジュリアさんも、巨大な相手に一歩も引かない。致命傷は与えられないが、黒馬は、再び後ずさりをして、立往生する。僕は、手にマナを集中させ、一気に体を引いて屋根によじ登った。
「レイル! 登ったか!」
ジュリアさんの声が下から聞こえる。
「はい! いけます!」




