表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アーツ・ホルダー  作者: 字理 四宵 
第九章 剣精の修行 その二
85/200

9-4

「ええと、アーツ・ホルダーが、複数のアーツを持つことはあるんですか」


僕は、頭の手をどうにかしたくて、無理やりにでも質問をだす。


「ある。が、複数のアーツを登録するメリットは、それほど多くないな」


剣精は答えるが、僕の頭から手を離そうとしない。


「そうなんですか?」

「アーツ・ホルダーになって、国から補助が出るようになれば、それで金銭的には暮らしていけるからな。複数のアーツを所有して狙われる確率があるデメリットを考えると、微妙なところだ。私としては、残念な話だが」

「アーツ・ホルダーの資格を取らない人もいれば、資格を取ったら次のアーツを隠す人もいる・・・」

「うむ。レイルは、新しいアーツができたら、ちゃんと見せに来るんだぞ」

「はい。・・・できれば。でも、僕がアーツを作れたのは、偶然に負うところが大きいので、ちょっと自信がないです」

「なに、そういう人間は多い。長年剣の修行と研究をしていた人間が、死線を超えて、特殊な状況におかれて初めて技を作る機会に会う・・・とかな。何がきっかけになるかは、わからないものさ」

「そうですか・・・。でも、もうあんな状況は嫌だな」


両腕を骨折し、それでもナイフ一本で戦わなければいけない状況は、一度体験すれば十分だ。

剣精の手が頭から離れ、僕の背中をとん、と叩く。


「大変だったな。治ったからよかったものの、剣を握れなくなったら大変だ」


こちらをニコニコと見ている。こんな時でも、剣精は剣のことを考えるのかと思うと、少し呆れてしまう。が、そんな人間でなければ、剣精にはなれないのかもしれない。


「よし、菓子でもつまむか」

「え、お菓子?」

「あぁ。そこにあるぞ。気づいていなかったのか」


僕は部屋の端に寄せてある机に、小皿が置いてあるのを見つけた。蓋を取ると、確かにお菓子が置いてある。

剣精は、部屋に入った時に見つけていたのだろう。


「はい。・・・食べていいですか?」

「皿に乗ってるんだから、いいんだろう」


剣精も、一つ手に取って口に入れる。


「剣精は、食事をとるんですね」

「本来は必要ないな。だが、剣精という存在は、他の精霊と違って生身があるから、食事することはできる。ただ、必要がないと、どうしても忘れてしまいがちになるな」


サクサクと焼き菓子をほおばる仕草は、久しぶりにものを食べるとは思えない。


「む、この焼き菓子はうまいぞ。一つ食べてみろ」


そういうと、僕の口に押し込む。なすがままなのは悔しいが、首の動きを先読みされて、口の位置を先回りして菓子を入れられる。はたから見ると、素直に口に入れているように見えるのだろう。

仕方なく、咀嚼する。確かに、使われているジャムは新鮮で上質なものだ。作られて時間が経っているにも関わらず、食感も保たれている。

ついこの間までは、山で質素な暮らしをしていたのに、今では王宮の菓子をつまんでいるのが、自分でも不思議だった。

弟にも・・・こんな上質なものを食べさせたかった。

つい、そんなことを考えてしまう。

ふと、剣精の視線に気づく。いつの間にか、菓子を食べ終えて、額に手を当てて僕の方を見ていた。


「・・・なんですか、じろじろ見ないでください」

「ふふっ、一丁前に。・・・よし、食べ終わったら、続きをするか」


僕は頷いて、急いで残りの菓子を口に入れる。

剣精は、剣を持つ。僕は鞘からナイフを抜いて後に続く。

その後も、攻撃を交えた訓練は続いた。剣精は、僕にダメなところがあれば、全く同じ動きをゆっくりと再現してくれる。

上達しているのかはわからなかったが、体を動かす経験と、理屈が一つ一つ、僕に組み込まれていくのは楽しかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ