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間もなく、僕は攻撃の精度が落ちるのを自分で感じはじめた。防御一辺倒の時より、攻撃をしてかわされるほうが、息が上がるのが早い。
肩で息をするようになると、余計に攻撃が当たる気がしない。一方の剣精は、涼しい顔をしている。
「剣精は・・・」
「ん?」
「全くミスをしていない気がします」
自分でも子供っぽいと思い、ずるいという言葉は飲み込んだ。
僕の言葉を聞くと、剣精は意外という顔で考え込む。
「うーん、そうか? 自分では、数手前はああ動けばよかった、とかいつも考えているんだが・・・」
「ええ・・・でも、僕との手合わせで挽回不可能な状況には、なったことがないですよね」
「それはそうだ」
当然、という顔でうなずく。
「動き・・・というか、行動に揺らぎがなく、ミスにならないところを、見習いたいんですけど・・・」
「うむ、難しいことを言うな。それを教えられれば、苦労はないのだ」
「やっぱり、そうですよね」
妙に納得をしてしまう僕だったが、剣精は話を終わらせなかった。
「レイルは、チャンスだと思って攻撃をする瞬間、頭が真っ白になっていないか」
「えっ? まぁ、そういわれると・・・」
心当たりはある。戦闘の経験が少ないからか、隙を見つけたらすぐに攻撃に移ってしまいがちなのは、自分でも気づいていた。そして、その行動が剣精の反撃の餌食になりがちだということも。
「かわされた後のことを考えて、二手三手後の行動をイメージするだけで、隙ができにくくなる」
「二手三手、ですか・・・」
剣精は軽く言うが、実際は判断と想像の繰り返しだ。なかなか思考が付いていかない。
「大丈夫だ。お前なら、できる。賢い子だろう」
「はい・・・」
理由は明確ではなかったが、深く突っ込んでもみっともない気がして、僕はそれで納得することにした。
「訓練中も、頭を使って戦う癖と、相手の動きを思い出す癖をつけておくんだ。そうすれば、いずれずっと勘で戦うやつとは大きな差ができる。相手のアーツや技を破るきっかけにもなる」
「技を破る・・・」
「今は、引き出しをたくさん身に着ける時期だ。そのためにも、私を含めて色々な動きをよく観察するんだ。いつか、それが次のアーツに結びつくかもしれないぞ」
「アーツ・・・そういえば・・・」
僕は、常々疑問に思っていたことを口に出す。
「剣精は、アーツを持っているんですか」
「ん? その質問は・・・あまり、よくないな」
剣精は、自分の唇に人差し指を当てる。
「アーツを持つということは、危険に晒されることでもあるからな。アピールしたり、組織に属していたりしなければ、秘匿にしておく人も多い。うかつに聞くものじゃないぞ。デリケートな話題だと思ってくれ」
「・・・わかりました」
「そして、答えはイエスだ! 私はもちろん、とびっきりのアーツを保持している」
「えっ、この流れで答えるんですか」
「私に一体なんの危険がある。暴きたければ、かかってこいという感じだな」
「うーん、確かに、剣精に襲い掛かってくる人は少なそうですね」
「うむ、寂しい限りだ」
そう言って、剣精は木剣をぶらぶらとさせる。こちらを、何度かチラチラとみて、何かを気にしているようだ。
「・・・」
「どんなアーツなのかは、聞かないのか」
「どうせ、答えてくれないでしょう。それこそ、デリケートな話題ですからね」
にやっと笑って、僕の髪をぐしゃぐしゃにする。
「他のデリケートなことなら、答えてやってもいいぞ、ほら、言ってみろ! 男子なら色々あるだろう」
「え、いや、急に言われても・・・」




