9-2
「よし、座学は飽きるだろう? 実際にやってみようか」
剣精は、太ももを叩いて気合いを入れると、木刀を振りだした。
「いいですけど・・・僕は剣精の座学好きですよ」
「そうか? 変わったやつだな。まぁ、私も嫌いじゃないが・・・」
「知らないことがわかるのも楽しいですし、理屈が結びつくのが楽しいです」
「そうか・・・」
感慨深げに頷いた剣精は、剣を構える。
「なぁ、レイル」
「はい」
僕もナイフを両手で持ち、剣精の動きに備える。
「お前は頭がいい。アーツホルダーやSSLもいいが、きっと学者や研究家という道もあるぞ」
「・・・どういう意味ですか?」
「どんな意味もないさ。言葉のままだ。戦士は・・・すぐ死ぬからな」
「・・・」
「戦士たちの中で、寿命を全うできる人間なんて、ごくわずかだ。それどころか、寿命よりも早くに、戦って死にたいと思うような奴らばかりだ」
「剣精・・・」
「お前なら・・・色々な道があるぞ。そう言いたかった」
僕は、ナイフを構えたまま、首を振る。
「そんなこといって、剣精ばかり、ずるいですよ」
「えっ・・・? ずるい?」
「剣技って、これからが楽しいんじゃないんですか? 僕にも、もう少し楽しませてください」
「そうか、確かにな・・・。私だけは、ずるいか」
剣精は、額に手を当てて苦笑をする。
「では、こい。本当に面白くなるのは、まだまだ先のことだ」
片手に剣を構え、もう片方の手で手招きをする。
僕は、それを見てたまらず飛び込んでいく。
僕のナイフが、空を引き裂いて剣精に向かっていく。その一撃一撃が、木刀で叩き落とされる。
「う・・・」
僕が引くと、すかさず突きが襲ってくる。僕はなるべく剣精の教え通り、サイドステップでよける。
剣精の攻撃は、僕が避けることだけに専念していた時よりも遅くなっている。隙を見つけて打て、ということなのだろう。
「シッ!」
剣精が上段から振った剣をかわすと、その軌跡が七割を過ぎたあたりで、僕はわき腹を目指して突きを繰り出す。経験上、剣を振るときはこのタイミングが一番体の軌道を変えづらいはずだ。
「むっ、いやらしいことを覚えたな」
体勢をひねりつつ肘で進路をずらされ、必中のはずの突きは、剣精の背中の後ろを飛んでいく。
「変な言い方は・・・やめてください!」
腕を払われた勢いを加速させ、僕は逆の手で剣精の胸元目指してナイフを突き立てる。が、それもステップでかわされる。
「そうたやすく背中を見せるな」
膝の裏を軽く蹴られて、僕は地面に手をついてしまう。
改めて思うのは、動きの精度が驚異的だということだ。剣精と手合わせをしていて、彼女がミスをしたことは一度もない。いくら実力差があるとはいえ、戦闘という刹那の判断が連続で求められる状況下で、ここまでミスなく動けるものなのか。
いや、細かいミスに僕が気づかないだけなのか・・・そんな想像をして、嫌になる。




